愛して欲しいと言えたなら

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あなたの声が好き

あなたの声が好き・・・その9

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「あんたの知らない京子がいるみたいなんでしょ?」

「ええ・・・そんな感じですけど・・・」

「それって、別に京子に限った事じゃないのよね。あんた、そう思わない?」

「あっ・・・そう言えば、雪子さんも、それから裕子さんも・・・」

「そうなの・・・他は気にしないでね!」

「他は・・・?へっ・・・?」

「前にあんたに言ったでしょ?あたしは人を不幸にしてしまうって」

「あっ、はい。確か・・・」

「あたしと知り合ってそれなりに親しくなった人たちはみんな不幸になってしまうの」

「でも・・・それは・・・」

「これはね、別に女性に限った話じゃないのよ」

「他にも・・・いるんですか?」

夏樹はカウンターでクマのぬいぐるみと遊んでいる冴子の方を見ながら笑みを浮かべる。

「でも、不思議よね。冴ちゃんだけは違うのよね」

冴ちゃんだけは・・・?ってか、今のお話の続きはどうなったんでしょうか?

「あら?・・・父親よ。・・・あたしの父親」

「夏樹さんのお父さん・・・ですか?」

「そうよ。他の兄弟たちはそれなりに親子をエンジョイしているみたいだけどね」

「夏樹さんだけが・・・?」

「父親はね、あたしに自分の夢を追いかけたの。ほら?あたしの父親って商売やってるじゃない?」

「あっ、はい・・・。でも、どうして夏樹さんになんですか?」

「んなの、決まってるじゃない?ほら?あたしって天才だから!」

「はい・・・?」

「あははっ!まぁ、天才は置いといて。親ってね、何のかんの言っても自分を越えて欲しいものなの」

「それって、聞いた事があります」

「あるでしょ?特にあたしの父親みたいに商売とかをしている親だと、その思いが強いのよね」

「でも、それって逆に超えて欲しくないっていうか、そういう風には思わないものなのですか?」

「それって、正確には、超えて欲しくないではなくて越えられない?じゃないかしら?」

「あっ、はい。」

「これって、どっちも思うのよね。自分の子供に自分を越えて行って欲しいとも。それでも、やっぱり子供には親は越えられないともね」

「ええ、はい。両方ともよく耳にするんですが。それって、どういう意味なんですか?」

「ようは、その基盤となる原型を作ったのが親。もし、それ自体が無かったとしたら?もし、その親がサラリーマンだったら?もしくは一般の労働者だったとしたら?その子供は果たして商売の道を選ぶかしら?」

「たぶん・・・ほとんどは選ばないのでは・・・」

「そうね。そして、もし商売の道を選んだとしても、その成功率は限りなく低いわね」

「どうして、そうなるんですか?」

「ん?それは、商売のノウハウを知らないからよ。どんなに小さな会社でもお店でも、親がやっているのを小さい頃から見ていれば、基本的なノウハウって知らないうちに身に付いているもんなの」

「う~ん・・・何となく分かるような・・・」

「よくさ、時代の寵児って聞くじゃない?」

「あっ、はい。今ですとネット関係とかの業界などで話題になってたり・・・」

「そうね。でもね、それって時代が合わなかったらさ、ただの(ぼんくら)なのよ」

「ただの、ぼんくら・・・ですか?」

「だから、時代の寵児って、意外と常識を知らない人が多いでしょ?」

「あっ・・・それは何となく分かります」

「ただ、それとは別に、いつの時代にも、その時代その時代に左右されない者って生まれるのよね」

「時代に左右されない・・・?」

「その中の一人が・・・あたし・・・。あたしが若い頃に何て言われていたか知ってるでしょ?」

「あっ、はい・・・」

「それじゃ、あたしの父親の会社が、一度、潰れたも同然だったって知ってた?」

「えっ・・・?」

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