愛して欲しいと言えたなら

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あなたの声が好き

あなたの声が好き・・・その3

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「いつも誰かに同情されていた京子、誰にも同情される事がなかった裕子。あんたから見て、どっちが可哀想に見える?」

「どっちって・・・それは・・・」

「どっちも同じ・・・。同情される事に慣れてしまっている京子は終焉を受け入れる事が出来なくて、今も苦しんでいる。その逆で、同情されない事に慣れている裕子は、自らの意思で終焉を受け入れて、その辛さを良い想い出に変えていくの。前半と後半がお互い逆になっちゃうだけ!」

「それで、京子は、今でも夏樹さんを・・・」

「だから、裕子はあたしを愛し続ける事が出来るの。たとへ愛し方が変わっても、生まれた愛を見失わないから・・・。それは京子も同じ・・・。」

「京子も・・・?」

「ただ、愛し方が変わっただけ・・・もしかしたら、今の京子ってさ、ステルス・ストーカーって言うんじゃないかしら?あんた、そう思わない?」

「へっ・・・?いや~・・・ははは・・・言われてみればそうかも・・・」

ステルス・ストーカー?。夏樹さんらしい面白い例えだけど、あながち間違っていないかも?
夏樹さんに、京子が緑内障だって聞かさられなかったら、きっと分からなかったかもしれないけど。

なぜ、京子があれだけ必要に夏樹さんを憎むのか?
そのくせ、どうして夏樹さんに対して変な未練を引きずっているのか?
そして、なぜ、離婚した後の夏樹さんの生活や体調を全然心配しようとしなかったのか?

なによりも、京子が、なぜ?雪子さんだけを特別に見ていたのか?いえ、違うわね。
雪子さんに対して京子が抱えていた怯えが、今は、その姿を変えているんだわ。

それだけじゃないわ!
京子は、夏樹さんと雪子さんが再会する日が、いつか来る事も知っていたんだわ。
う~ん・・・知っていたというより、予感がしていたの方が正解かもだけど・・・。

でも、だから京子は驚かなかったんだわ!
夏樹さんが雪子さんと再会した事を、京子は驚くよりも来るべき日が来たと感じたんだわ。
う~ん・・・感じたというより、予感が当たったの方が正解かも・・・こちらも・・・はい。

そして、雪子さんの姿を見た瞬間、夏樹さんへのあきらめが憎悪に変わってしまったのかもしれない。
もしかしたら、たとへ可能性が低くても、目が見えなくなってしまうかもしれない
そんな京子の抱えていた未来への不安を、唯一支えていたのが夏樹さんの存在だったとしたら?

京子は夏樹さんの性格を知っているわけだし、それに夏樹さんの言葉も聞いているわけだから
もし、自分が目が見えなくなったとしても、それを知った夏樹さんが自分を放って置くはずがない。
だから、ずっと・・・離婚した後もずっと夏樹さんに届くように悪口を言い続けていたんだわ。
京子は夏樹さんに、自分を忘れて欲しくなかったから。見失わないでいて欲しかったから。

そして、子供たちを自分の手元に置いておきたかったのも、きっと、そうなんだわ。
子供たちに夏樹さんの悪口を言い続けていたのも、夏樹さんを忘れて欲しくなかったから。
ただ、唯一違ったのは、恋愛の場数を踏んでいない京子にとって、その方法が分からなかった。
一度もふられた事がない京子には夏樹さんの心を繋ぎ留めておく術を探せなかっただけなんだわ。

「そのお顔だと、あたしがあんたに伝えたかった何かが分かったみたいね?」

「ええ・・・はい。ただ、ちょっと意外だったというか・・・」

「そうお・?」

「ええ・・・。正直、京子が羨ましいなあって思いました」

夏樹は直美の言葉に優しく笑みを浮かべながら、コーヒーのお代わりはいかがかしら?と、
少しおどけるように席を立ってカウンターの方へ歩いていく。
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