愛して欲しいと言えたなら

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あなたの声が好き

あなたの声が好き・・・その1

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愛せない感情・・・それが、夏樹さんと雪子さんが別れを決めた本当の理由・・・。
そう言えば、さっきも京子に対して同じように言っていたけど、雪子さんの時とは違うのかしら?

「確か、さっきも京子に対して同じ言葉を聞いたように思うんですけど、雪子さんの時とは違うんですか?」

「京子はね、愛されたいと望み、自分だけの愛を求めようとしたの」

自分だけの愛を・・・京子が求めていたのは自分だけのために存在する愛?

「雪子は愛してあげたいと願い、移りゆく季節のように愛に寄り添おうとしたの」

雪子さんは、愛してあげたいと願い・・・

「あっ!それって、もしかして?」

「ん・・・?」

「あ、あの・・・それって、もしかして?私が分からなかったっていうか、知りたかったっていうか、雪子さんと京子のどこが違うの?っていう・・・あの・・・」

「あら・・・?な~に?雪子に会った時に訊いたんじゃなかったの?」

「いえ・・・あの・・・雪子さんに教えて頂いた事は教えて頂いたんですけど・・・その時は、夏樹さんに対しての気遣いの違いだとばかり思っていたんです・・・はい・・・です」

「ふふっ。まあ、そんなところだとは思ってたけどね」

そうだったんだ・・・。これが、雪子さんと京子の違いだったんだ!
愛されたいと望む京子・・・愛してあげたいと願う雪子さん・・・。
愛に包まれたいと望む京子・・・愛で包んであげたいと願う雪子さん・・・。

夏樹さんに愛されたいと望み、夏樹さんに愛されていた京子だったはずなのに・・・
愛されていたはずの愛の姿に、居るはずのない雪子さんの影を追いかけてしまった京子。

だから、いつも愛を探してばかり・・・春も、夏も、秋も、冬も、来る日も、来る日も・・・
あるはずの愛が見えない京子は、夏樹さんに愛されたくて、霞んでいく愛を探し続けていたんだわ。

でも・・・それじゃ、どうして夏樹さんと雪子さんは別れを選んだのかしら?
だって、雪子さんの性格っていうか、愛し方っていうか、どう考えても別れには繫がらないように思うんだけど。
そういえば、夏樹さんが前に、雪子さんとはしょっちゅうケンカをしていたって・・・。

「あの・・・今の私が描いている雪子さんは・・・」

「大人しいあやつ?物静かで優しいあやつ?」

あっ、雪子さんから、あやつに変わっちゃった!

「ええ・・・まあ。でも、確か以前に・・・」

「雪子ってね、季節の中で生きているような子なの」

「季節の中で・・・?」

「そうよ。普通の人は季節を覗いては大丈夫そうかな?って思うと季節に触れるんだけど。雪子の場合はちょっと違っていてね。いつも季節の中にいるの。春の暖かい風の中、夏の暑い日差しの中、秋の模様替えが始まる中、そして透き通るような空気の中の冬も。雪子ってね、いつも季節の中で踊ってるような子なのよ」

「はあ・・・あの・・・なんていうか・・・」

「雪子って可愛いでしょ?だからね、雪子は小さな身体を全部を使って愛してくるの」

「はあ・・・」

「なに、ため息ついてんのよ?」

「だって・・・と、言いますか・・・」

「だから、いつもケンカにもなっちゃうのよ。こんにゃろめ!こんにゃろめ!ってね!」

「とはいっても・・・なかなかに・・・」

「雪子はね、確かに、大人しくて物静かだけど、控えめじゃないのよ。言ったでしょ?あやつは季節の中で踊ってるような子だって!四季ってさ、過ごしやすい日ばかりじゃないでしょ?雨の日も風の日もあるし、台風だって来るし、大粒の雪だって降るし。自然ってさ、優しくて怖くて、それでもやっぱり優しくて・・・。じゃないかしら?」

「いや~、余計にこんがらがってくるといいますか・・・です」

どこか嬉しそうに話す夏樹の言葉の中に、大人しくて物静かな雪子が見え隠れしているみたいで
聞いている直美も、時折、笑みが浮かんでくるから、その片隅に追いやられてしまう京子の姿が
同情してはいけないと分かっていても、どこか不憫に思えてしまう視線が直美には寂しかった。

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