353 / 386
愛せない感情
愛せない感情・・・その13
しおりを挟む
夏樹は何本目かの煙草に火をつけながら言葉を続ける。
「あたしに嫌われたくないから雪子を悪く言えない。あたしに嫌われたくないから、あたしの前では、居るはずのない雪子に・・・あたしの中に存在しているだけの雪子にさえ気遣いをしてしまう。京子自身が雪子の存在を勝手に大きく作り変えてしまう、そして、その虚像はいつしか京子自身を攻撃するようになっていったの」
「京子の中で雪子さんが・・・」
「だから京子は、いつしか、日々の生活の中にボーダーラインを引くようになっていったのよ」
「ボーダーライン?」
「あんたが口にする生活に対しての口癖と、京子の口癖の違いは分かるでしょ?」
「あっ、はい。確か前に教えられたような・・・」
「もともと京子は贅沢とかを望むような子じゃなかったのよ。あたしと一緒に居られるだけで満足してるような子だったの」
「それじゃ、お盆やお正月とかに夏樹さんを連れて挨拶回りとかっていうのは?」
「その噂が雪子に届くように・・・かしらね」
「それじゃ、京子が借金とかに対して異常な拒絶反応っていうのは?」
「それも同じ、あたしとの生活の中で借金とかがある事が雪子に知れたら?」
「中古住宅、中古住宅ってよく言ってたのは、もし新築の住宅だったなら購入する時の借り入れ金もある意味、自慢の種になるけど、それが中古の住宅を借り入れ借金での購入では・・・」
「そう、そんなのが、もし噂でも雪子の耳に入ったりしたら?」
「格好悪い・・・なんとなく言われてみれば、そうかも・・・です」
「だから、京子は、あたしの家族だけじゃなく、友人さえもあたしから遠ざけていったの」
「雪子さんに、夏樹さんの噂が届かないように・・・ですか」
「そうよ。だから、あたしと離婚した時に、あたしの悪口三昧で、京子自身が簡単にアリ地獄に落ちていったのよ」
「京子自身、いつの間にかそんな小細工が当たり前になっていたから・・・」
「今の京子を作った全ては、あたしの隣の席を雪子から奪った瞬間から始まったの」
「奪ったって・・・」
「京子はそう思っているんじゃないかしら?」
「ちょうど雪子さんが席を離れた時を見計らって京子がその席に着いた・・・だから京子はずっと雪子さんの存在が怖かった。いつ雪子さんが戻って来るかも分からないから。いえ、いつ京子が夏樹さんにその席を取られるかもしれないと思うから、だから夏樹さんの中にいる雪子さんに、あれほど気遣いをしていたんですね。」
「まあ、そんな感じかしらね」
「だから京子は、夏樹さんから色んな人たちを遠ざけるような行為をして、ここは自分の席なのだと、いるはずもない雪子さんに、その噂が届くように夏樹さんを連れ回していた・・・」
「なぜ、今の京子にとって、子供たちが我慢ならない存在なのかも、これで分かったかしら?」
「京子が子供たちを見る度に、今度は、そこに居るはずもない雪子さんの影を探してしまうんですね」
「そうなの。どうしても思い出してしまうの、雪子になくて京子にはあるものとしてね」
それなのに、夏樹さんの隣の席が、また、雪子さんの席になろうとしている。
だから京子はあんなに何度も何度も言っていたんだわ。私の存在っていったいなんだったのって。
夏樹の言葉の中で明かされていく、京子の心模様の儚さを直美は初めて知るのだった。
「あたしに嫌われたくないから雪子を悪く言えない。あたしに嫌われたくないから、あたしの前では、居るはずのない雪子に・・・あたしの中に存在しているだけの雪子にさえ気遣いをしてしまう。京子自身が雪子の存在を勝手に大きく作り変えてしまう、そして、その虚像はいつしか京子自身を攻撃するようになっていったの」
「京子の中で雪子さんが・・・」
「だから京子は、いつしか、日々の生活の中にボーダーラインを引くようになっていったのよ」
「ボーダーライン?」
「あんたが口にする生活に対しての口癖と、京子の口癖の違いは分かるでしょ?」
「あっ、はい。確か前に教えられたような・・・」
「もともと京子は贅沢とかを望むような子じゃなかったのよ。あたしと一緒に居られるだけで満足してるような子だったの」
「それじゃ、お盆やお正月とかに夏樹さんを連れて挨拶回りとかっていうのは?」
「その噂が雪子に届くように・・・かしらね」
「それじゃ、京子が借金とかに対して異常な拒絶反応っていうのは?」
「それも同じ、あたしとの生活の中で借金とかがある事が雪子に知れたら?」
「中古住宅、中古住宅ってよく言ってたのは、もし新築の住宅だったなら購入する時の借り入れ金もある意味、自慢の種になるけど、それが中古の住宅を借り入れ借金での購入では・・・」
「そう、そんなのが、もし噂でも雪子の耳に入ったりしたら?」
「格好悪い・・・なんとなく言われてみれば、そうかも・・・です」
「だから、京子は、あたしの家族だけじゃなく、友人さえもあたしから遠ざけていったの」
「雪子さんに、夏樹さんの噂が届かないように・・・ですか」
「そうよ。だから、あたしと離婚した時に、あたしの悪口三昧で、京子自身が簡単にアリ地獄に落ちていったのよ」
「京子自身、いつの間にかそんな小細工が当たり前になっていたから・・・」
「今の京子を作った全ては、あたしの隣の席を雪子から奪った瞬間から始まったの」
「奪ったって・・・」
「京子はそう思っているんじゃないかしら?」
「ちょうど雪子さんが席を離れた時を見計らって京子がその席に着いた・・・だから京子はずっと雪子さんの存在が怖かった。いつ雪子さんが戻って来るかも分からないから。いえ、いつ京子が夏樹さんにその席を取られるかもしれないと思うから、だから夏樹さんの中にいる雪子さんに、あれほど気遣いをしていたんですね。」
「まあ、そんな感じかしらね」
「だから京子は、夏樹さんから色んな人たちを遠ざけるような行為をして、ここは自分の席なのだと、いるはずもない雪子さんに、その噂が届くように夏樹さんを連れ回していた・・・」
「なぜ、今の京子にとって、子供たちが我慢ならない存在なのかも、これで分かったかしら?」
「京子が子供たちを見る度に、今度は、そこに居るはずもない雪子さんの影を探してしまうんですね」
「そうなの。どうしても思い出してしまうの、雪子になくて京子にはあるものとしてね」
それなのに、夏樹さんの隣の席が、また、雪子さんの席になろうとしている。
だから京子はあんなに何度も何度も言っていたんだわ。私の存在っていったいなんだったのって。
夏樹の言葉の中で明かされていく、京子の心模様の儚さを直美は初めて知るのだった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。



【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。
音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。
格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。
正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。
だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。
「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる