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愛せない感情
愛せない感情・・・その11
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「残された者は不幸という世界を彷徨い歩くの、そして生きる強さを身に着けていくの。生きる意味ではなく生きる強さをね」
「生きる意味ではなくて生きる強さですか?」
「よく耳にするのは、生きる意味の方よね?」
「はい、映画でもドラマやアニメでも、残された者はそこに生きる意味を探すとか見つけるとかって」
「そんなのは、後から付けた飾りのような物よ」
「飾り・・・ですか?」
「そうよ。人間って何でもかんでもすぐに意味を見つけたがるわ。きっと、何かにしがみついていないと不安で仕方がないのかもしれないわね」
「何となく分かるような・・・」
「背徳の罪・・・大切な人を失っても、尚、生き続けている自分への軽蔑の悲しみ。それから逃れたくて、そこに何かしらの意味を盾にそんな自分を守ろうとする無力な過去の記憶」
何本目かの煙草に火をつけながら、白い巻紙の赤く染まる先端を見つめながら、ため息の笑みを浮かべる夏樹。
「あたしもそうだったのよ」
「夏樹さんも・・・?」
「ただ、恨めしかった。ただ、許せなかった。あの頃のあたしには、何もなかったかのように進んでいく時間だけが、ただただ許せなかった」
夏樹さんにそんな過去があったんだ?
しかも、夏樹さんをそこまで追い詰める程の人の死っていったい・・・。
「あら?意外だったかしら?」
「あっ、はい。意外というか何というか・・・です。それに、京子からは何も言ってなかったから、ちょっとっていうか、とってもっていうか・・・」
「驚いちゃった?」
「はい・・・」
「そこに意味が無くても人は生きてるの。そして、そんな悲しい姿の自分を見つけた時に人は強くなれるのよ」
「う~ん・・・」
「生きる意味よりも大切なものを見つけるから。生きようとする意思をね」
「意味ではなくて意思・・・?」
「それなのに、あたしには京子にそれを伝えたくても伝える術が分からなくてね」
「へっ・・・?」
「何が・・へっ?なのよ?」
「いんにゃ~・・・まさか、そこから京子に戻ってくるとは思っていなかったもので・・・」
「何、言ってるのよ、京子の事でここに来たんじゃなかったのかしら?」
「それはそうなんですけど・・・」
「他にも知りたい事が出来ちゃった?」
「ええ・・・まあ・・・」
「そのうち教えてあげるわよ。また、きっと、あたしに会いに来ると思うから」
「えっ?そうなんですか?」
私が、また夏樹さんに会いに来る?
それって、いったい、どういう意味なのだろう?
もし、また私が夏樹さんに会いに来るとしたら、それは京子の事での相談しか思い浮かばないけど。
ちょっと待って?それって、この先の京子が、私の手に負えなくなるって事なんじゃないかしら?
「あの・・・それって、この先、京子に何かあるって事なのですか?」
「だから言ったじゃない?あの子、死ぬわよって」
「あっ、はい。って、いうか・・・えっ?ホントに?」
「な~に?あんた、さっき言った言葉を信じていなかったの?」
「いえ、あの・・・そういうわけじゃ・・・」
「どうやら、あんたの頭の中には、京子がどうして死ぬの?ではなくて、どうしたら、京子が生きようとしてくれるの?っていう考え方になってるみたいね」
「へっ?・・・そうなんですか?」
「あははっ・・・。自分の頭の中って自分が一番分からないから。でも、そんなあんたの前向きな考え方って好きよ!」
「いんにゃ~・・・はははっ・・・。へっ?」
「京子から子供たちを奪ったら、その先の京子には、もう何も残ってないのよ」
唐突に話を戻す夏樹の言葉に少し驚きながらも、直美は以前に京子が言っていた言葉を思い出していた。
「生きる意味ではなくて生きる強さですか?」
「よく耳にするのは、生きる意味の方よね?」
「はい、映画でもドラマやアニメでも、残された者はそこに生きる意味を探すとか見つけるとかって」
「そんなのは、後から付けた飾りのような物よ」
「飾り・・・ですか?」
「そうよ。人間って何でもかんでもすぐに意味を見つけたがるわ。きっと、何かにしがみついていないと不安で仕方がないのかもしれないわね」
「何となく分かるような・・・」
「背徳の罪・・・大切な人を失っても、尚、生き続けている自分への軽蔑の悲しみ。それから逃れたくて、そこに何かしらの意味を盾にそんな自分を守ろうとする無力な過去の記憶」
何本目かの煙草に火をつけながら、白い巻紙の赤く染まる先端を見つめながら、ため息の笑みを浮かべる夏樹。
「あたしもそうだったのよ」
「夏樹さんも・・・?」
「ただ、恨めしかった。ただ、許せなかった。あの頃のあたしには、何もなかったかのように進んでいく時間だけが、ただただ許せなかった」
夏樹さんにそんな過去があったんだ?
しかも、夏樹さんをそこまで追い詰める程の人の死っていったい・・・。
「あら?意外だったかしら?」
「あっ、はい。意外というか何というか・・・です。それに、京子からは何も言ってなかったから、ちょっとっていうか、とってもっていうか・・・」
「驚いちゃった?」
「はい・・・」
「そこに意味が無くても人は生きてるの。そして、そんな悲しい姿の自分を見つけた時に人は強くなれるのよ」
「う~ん・・・」
「生きる意味よりも大切なものを見つけるから。生きようとする意思をね」
「意味ではなくて意思・・・?」
「それなのに、あたしには京子にそれを伝えたくても伝える術が分からなくてね」
「へっ・・・?」
「何が・・へっ?なのよ?」
「いんにゃ~・・・まさか、そこから京子に戻ってくるとは思っていなかったもので・・・」
「何、言ってるのよ、京子の事でここに来たんじゃなかったのかしら?」
「それはそうなんですけど・・・」
「他にも知りたい事が出来ちゃった?」
「ええ・・・まあ・・・」
「そのうち教えてあげるわよ。また、きっと、あたしに会いに来ると思うから」
「えっ?そうなんですか?」
私が、また夏樹さんに会いに来る?
それって、いったい、どういう意味なのだろう?
もし、また私が夏樹さんに会いに来るとしたら、それは京子の事での相談しか思い浮かばないけど。
ちょっと待って?それって、この先の京子が、私の手に負えなくなるって事なんじゃないかしら?
「あの・・・それって、この先、京子に何かあるって事なのですか?」
「だから言ったじゃない?あの子、死ぬわよって」
「あっ、はい。って、いうか・・・えっ?ホントに?」
「な~に?あんた、さっき言った言葉を信じていなかったの?」
「いえ、あの・・・そういうわけじゃ・・・」
「どうやら、あんたの頭の中には、京子がどうして死ぬの?ではなくて、どうしたら、京子が生きようとしてくれるの?っていう考え方になってるみたいね」
「へっ?・・・そうなんですか?」
「あははっ・・・。自分の頭の中って自分が一番分からないから。でも、そんなあんたの前向きな考え方って好きよ!」
「いんにゃ~・・・はははっ・・・。へっ?」
「京子から子供たちを奪ったら、その先の京子には、もう何も残ってないのよ」
唐突に話を戻す夏樹の言葉に少し驚きながらも、直美は以前に京子が言っていた言葉を思い出していた。
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