愛して欲しいと言えたなら

zonbitan

文字の大きさ
上 下
350 / 386
愛せない感情

愛せない感情・・・その10

しおりを挟む
「分かる?どこまで信じているかって意味が?」

「あっ、はい。何となくですけど・・・」

「裏切られたという感情はね、信じているから生まれて来る感情じゃないの。愛していない感情から生まれて来る産物なのよ」

「愛していない感情・・・?」

「そうよ。愛している感情の中には裏切りも疑念も予想しない結末も存在していないの。裏切られたと思う全ての感情は、愛したい、そして愛されたいという感情の中から生まれて来る感情なの。でもね・・・」

「でも・・・?」

「愛して欲しいと・愛してあげたい・いう感情には何も存在していないの」

「どうしてですか?」

「愛されたいという感情の右のポケットには損得勘定が入ってるの」

「損得勘定・・・それじゃ左のポケットには何が入ってるんですか?」

「別れの片道切符・・・」

「う~ん・・・」

「ふふふっ・・・。あんたには、どの愛も同じような愛に思えてしまうんでしょ?」

「ええ・・・まあ、そんな感じかと・・・・ははは。でも、どこまで信じているのかっていうのは分かる気がします」

「どこまで信じているのか。言い換えれば、どのあたりまで損得勘定を弾いているのかってなるわね」

「信じているのかを損得勘定に変換しちゃうんですか?」

「あははっ・・・。いいのよ!あたしは変態なんだから!きっと、考え方も変態なのよ!」

 う~ん・・・愛を信じるに変換して、そんでもって損得勘定に変換って何が何だか分からなくなってしまうんですけど・・・。

でも、ドラマとか映画とか、それにアニメもだけど、見る側の人が感動したり心にジーンときたりするのって、それを見ている人たちが納得出来る状況だから、というよりも、きっとこうなると良いなって思えるような状況になったり結末になったりするからなのよね?

そして、そんな状況や結末が、実際の世の中では滅多にあり得ないからであって、
もし、どこにでも転がっているような結末だったら感動なんてしないはず。

何気ない日常を描いた映画だって、そう。
そんな何気ない日常だって、考えてみれば、そうそうあるような日常じゃないような気がするし。
ましてや、会社が倒産して一家離散とか、相手が浮気していなくなっちゃったとかなんて結末だったら誰も感動なんてしない。

「何となく分かるような分からないような、でも、夏樹さんの言いたい事は何となくですけど分かる気がします」

「そんなに無理して分かろうとしなくてもいいのよ。これは、あたしの考え方ってだけで、人には人それぞれの考え方があって当たり前だし、人それぞれの思い描く愛の姿があって当たり前なんだから」

「そう言われると、余計にこんがらがってしまうような・・・ははは」

「あたしね、思うの。ありそうでないものだから、人はそれに惹かれてしまうんじゃないかなって?」

「あっ、そう言われると分かります。愛って、どこにでもありそうなんだけど、なかなか見つからないし、それに身近にあっても愛は見えないから、とっても儚いっていうか、掴めそうで掴めないっていうか」

「何気ない日常の家族にも見え隠れするし、飼っている猫や犬のようにペットにも、でしょ?」

「あっ、はい。そうです!」

「ふふっ、随分とお話が脱線しちゃったわね」

そう言いながら煙草に火をつける夏樹の姿から少し視線を移してみると
冴子がクマのぬいぐるみと何かお話をしている。
そんな冴子たちの姿に直美は少し笑みを浮かべてみる。

「あの・・・冴ちゃんはいつもあのクマさんのぬいぐるみさんと遊んでいるんですか?」

「ふふっ、遊んでいるというよりは、同じ時間を一緒に過ごしているって感じかしら」

「えっ?それじゃ冴ちゃんは夏樹さんと一緒に暮らしているんですか?」

「今は違うけど、近いうちに一緒に暮らそうと思ってるわ」

「一緒にって、あの・・・それじゃ冴ちゃんのご両親も一緒に?」

「冴ちゃんのご両親はどちらも早くに亡くなってしまったの。今はおばあちゃんと一緒に暮らしてるのよ」

冴ちゃんのご両親がどっちもって・・・それじゃ冴ちゃんは・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。 格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。 正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。 だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。 「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。

処理中です...