愛して欲しいと言えたなら

zonbitan

文字の大きさ
上 下
349 / 386
愛せない感情

愛せない感情・・・その9

しおりを挟む
「あんた、何を、そんなに驚いてるのよ?」

「だって、あの雪子さんですよ?」

「何、言ってるのよ?それを言ったら、裕子の立場はどうなるのよ?」

「えっ・・・?裕子さんも、何かあるんですか?」

「裕子は、あたしと2回目に会った時に、あたしの恋人になったのよ?」

「へっ?・・・ホントですか?」

「本当よ。っていうか、これ、京子も知らないはずだわね?」

「う~ん・・・信じられないというか、夏樹さんは、いったい、どんな口説き方をしていたんですか?」

「どんなって、いたって普通によ」

「普通じゃないですよ!」

「そんな事を言ったって、あたしはいつもそんな感じだったわよ?」

「いつもって・・・。そういえば、京子が言っていたんですけど、夏樹さんは、女性をとっかえひっかえだったって。もしかして、それってホントだったんですか?」

「さあね・・・忘れたわ、そんな太古の出来事なんて」

「太古って、ふふっ、それじゃ恐竜さんの恋人も居たりして」

でも、やっぱり、京子の言ってた通り、夏樹さんってモテてたんだわ。
だって、まるで、その辺の石ころでも拾うみたいに言うんだもの。

「でもね、京子は、そんな女性たちの中で、雪子だけは、特別に感じていたのかもしれないわね」

「私もそう思いました。京子は、なぜか、雪子さんに対してだけは・・・う~ん、何ていうか・・・」

「妙に変な気遣いしているような感じなんでしょ?」

「あっ、はい。そんな感じです。だから、いつもなんか変だなって?思っていたんです。」

「なんか変・・・?」

「ええ・・・。だって普通は恋敵っていうか何ていうか、ライバル心みたいな感じに思うものだと思うんですよね」

「馬鹿な子よね、京子って」

「夏樹さんは、何か知ってるんですね?」

「愛されたいと願うだけで、自分の感情を止めておけばよかったのに。愛されたいと望み、そして愛されたいと求めてしまうから、愛せない感情に苦しめられていくの」

「愛せない感情・・・?」

「あら?ちょっと悩んじゃったかしら?でも、それほど難しい話じゃないのよ」

「そうは言われましても・・・」

夏樹さんって、時々、とんでもない表現の仕方をするけど・・・
いったい、どこをどうすればそういう言葉の表現にたどり着くのかしら?

「愛ってね、良い時なんてほんの10%もないのよ。残りの90%くらいは憎しみや怒り、偽善に疑念ばかりなの」

「そうなのかな?」

「愛すると好きになるとは全然違うの。まったくの別な感情なのよ」

「でも、良い時がたったの10%くらいっていうのは」

「だから、ドラマでもアニメでも、愛だの信じるだのって事がテーマになるし、それをどこでどのように表現するかで見ている人たちに感動を与えたり憧れを思い描かせたり出来るんじゃないかしら?」

「それは、ほとんどの人には手に入らないから・・・に、なるんですか?」

「誰にでも簡単に経験出来るなら、誰がドラマやアニメで感動なんてすると思う?」

う~ん・・・確かに、言われてみればそんな気もするけど・・・
なんか、夏樹さんの愛って、哲学が少し混じってるみたいに聞こえてきちゃう。
となると、私みたいな凡人には、理解不能なのではないでしょうか?

「なんか難しいですね。私なんて、好きになるのに理屈はいらない派だから・・・へへへ」

「何、言ってるのよ。別に難しくも何でもないわよ。とってもシンプルで簡単な事じゃない?」

「どこがですか?」

「ようするに、自分が愛していると思うその相手を、どれだけ信じているか?って、だけなのよ」

「それは、みんな、それなりに信じていると思・・・思・・・」

「分かったみたいね。あたしが言いたい事が」

夏樹さんの言ってる意味が何となく分かった気がする。
相手を好きになるという想いの延長が、相手を愛するという未来だと思っていたけど、違うんだわ。
好きの延長線上には、愛は、初めから存在なんてしていないんだわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ちぃちゃんと僕

みやぢ
恋愛
けんごはアルバイト先で出会った小学生ちとせと友達になった。 ちとせと二人で過ごした日々の記憶

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

М女と三人の少年

浅野浩二
恋愛
SМ的恋愛小説。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...