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愛せない感情
愛せない感情・・・その8
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「人は、いつか死ぬものよ」
「確かにそうですけど・・・」
「京子も、いつか死ぬの。そして、子供たちもね。だけどね、問題はそこじゃないのよ」
「そこじゃないっていうのは?」
「猫の生き方、犬の生き方、そしてあたしの生き方。猫も犬のそれ以外の生き物たちもね、みんな生き続けるの、自分の体の中にある心臓が鼓動を続ける限り、何があっても何が起きても、どんなに辛い人生でもどんなに悲しい生き方でも、命の鼓動が続く限り生き続けるの。命が鼓動が止まるその瞬間まで生きる事を決して止めようとはしないのよ」
「でも、前に・・・」
「人間って困った生き物よね。やたら知能があり過ぎるものだから、あれもこれもって欲しがってしまうのよね。そんでもってついつい調子に乗り過ぎて自分の死までも欲しがろうとしてしまう。この世界には生きたくても生きれない人たちが沢山いるっていうのに。そして、誰かの生きる覚悟のために自らの命さえも差し出してしまう。そんなものなんて、ただの自己満足に過ぎないって分かっているのにね。そして、そんな死が美しいものだと、ありもしない幻想に取り憑かれていく」
夏樹さんは誰の事を言ってるの?
雪子さん?京子?それとも、夏樹さん自身?
「京子が許せないのは、あたしでも、雪子でもないの・・・。京子が許せないのは、時間なの」
「時間・・・?」
「そう、京子が、あたしと過ごした時間。そして、あたしと雪子が過ごした時間」
「あの、夏樹さんが雪子さんと過ごした時間って、夏樹さんが雪子さんと恋人同士だった時間の事ですよね?」
「そうよ・・・」
「でも、そんな事を言っても、別に、その時は京子は夏樹さんとは何でもなかったんだし、京子がその時間を許せないっていうのは、ちょっと違うような・・・」
「そうかしら・・・?」
「はい、そう思いますよ。それに、京子が夏樹さんと過ごした時間が許せないっていうのも、ちょっと意味が分からないっていうか・・・」
「ふふっ。あんた、ちょっと見ないうちに随分とおしゃべりが出来るようになったみたいね」
「いや~・・・はははっ」
「前にもちょっと言ったけど、京子があたしと知り合ってから離婚するまでの期間って何年くらいだったかしら?」
「確か、京子がまだ小学6年生くらいの頃でしたよね?なので、12歳の頃からだから、う~んと、たぶん38年か39年くらいですか?」
「そうね、約39年くらいになるわね」
「でも、その時間が、どうして、京子が許せない時間になるんですか?」
「んで、雪子と恋人だったのって、11か月と半分くらい」
「えっ?・・・うっそ?」
「本当よ。雪子の誕生日を迎える前に別れちゃったんだから」
「え===っ?でも、雪子さんと知り合ってからの期間もあるんですよね?」
「ほとんどないんじゃないかしら?」
「ないって・・・あの・・・」
「雪子とは、初めてのドライブで海に行ってから間もなくだから、たぶん3日くらいかしら?」
「え===っ?うそみたい?」
「あたしって強引でしょ?」
「強引というか何というか・・・。でも、それじゃ、夏樹さんの方から?」
「そうよ。あたしが雪子を口説いたのよ。しかも、かなり強引に、というより、ほとんど強制だったかもね」
うわぁ、そうだったんだ・・・。
でも、初めて聞いたわ・・・ってか、聞いちゃったわ!
夏樹さんが、雪子さんを口説いたんだろうな~ってのは、何となく分かるけど、
ほとんど強制って、いったい、どんな口説き方をしたのかしら?
そういえば、京子から、そんな話を聞いた記憶がないような・・・。
京子が、夏樹さんに口説かれたなんて話とかって記憶ないし、
どっちかっていうと、京子の方が、一方的に夏樹さんに好意を持っていたって感じだったような気がする。
それにしても、夏樹さんが口説くのは分かるけど、
それまでは、雪子さんとは知り合いでも何でもなかったのよね?
その雪子さんが、見ず知らずだった夏樹さんに口説かれて、すぐに承諾しちゃうって・・・う~ん。
だってさ、あんなにも物静かで大人しくて、んでもって、どっちかっていうと、すぐに陰に隠れちゃう感じの雪子さんが・・・う~ん。
「確かにそうですけど・・・」
「京子も、いつか死ぬの。そして、子供たちもね。だけどね、問題はそこじゃないのよ」
「そこじゃないっていうのは?」
「猫の生き方、犬の生き方、そしてあたしの生き方。猫も犬のそれ以外の生き物たちもね、みんな生き続けるの、自分の体の中にある心臓が鼓動を続ける限り、何があっても何が起きても、どんなに辛い人生でもどんなに悲しい生き方でも、命の鼓動が続く限り生き続けるの。命が鼓動が止まるその瞬間まで生きる事を決して止めようとはしないのよ」
「でも、前に・・・」
「人間って困った生き物よね。やたら知能があり過ぎるものだから、あれもこれもって欲しがってしまうのよね。そんでもってついつい調子に乗り過ぎて自分の死までも欲しがろうとしてしまう。この世界には生きたくても生きれない人たちが沢山いるっていうのに。そして、誰かの生きる覚悟のために自らの命さえも差し出してしまう。そんなものなんて、ただの自己満足に過ぎないって分かっているのにね。そして、そんな死が美しいものだと、ありもしない幻想に取り憑かれていく」
夏樹さんは誰の事を言ってるの?
雪子さん?京子?それとも、夏樹さん自身?
「京子が許せないのは、あたしでも、雪子でもないの・・・。京子が許せないのは、時間なの」
「時間・・・?」
「そう、京子が、あたしと過ごした時間。そして、あたしと雪子が過ごした時間」
「あの、夏樹さんが雪子さんと過ごした時間って、夏樹さんが雪子さんと恋人同士だった時間の事ですよね?」
「そうよ・・・」
「でも、そんな事を言っても、別に、その時は京子は夏樹さんとは何でもなかったんだし、京子がその時間を許せないっていうのは、ちょっと違うような・・・」
「そうかしら・・・?」
「はい、そう思いますよ。それに、京子が夏樹さんと過ごした時間が許せないっていうのも、ちょっと意味が分からないっていうか・・・」
「ふふっ。あんた、ちょっと見ないうちに随分とおしゃべりが出来るようになったみたいね」
「いや~・・・はははっ」
「前にもちょっと言ったけど、京子があたしと知り合ってから離婚するまでの期間って何年くらいだったかしら?」
「確か、京子がまだ小学6年生くらいの頃でしたよね?なので、12歳の頃からだから、う~んと、たぶん38年か39年くらいですか?」
「そうね、約39年くらいになるわね」
「でも、その時間が、どうして、京子が許せない時間になるんですか?」
「んで、雪子と恋人だったのって、11か月と半分くらい」
「えっ?・・・うっそ?」
「本当よ。雪子の誕生日を迎える前に別れちゃったんだから」
「え===っ?でも、雪子さんと知り合ってからの期間もあるんですよね?」
「ほとんどないんじゃないかしら?」
「ないって・・・あの・・・」
「雪子とは、初めてのドライブで海に行ってから間もなくだから、たぶん3日くらいかしら?」
「え===っ?うそみたい?」
「あたしって強引でしょ?」
「強引というか何というか・・・。でも、それじゃ、夏樹さんの方から?」
「そうよ。あたしが雪子を口説いたのよ。しかも、かなり強引に、というより、ほとんど強制だったかもね」
うわぁ、そうだったんだ・・・。
でも、初めて聞いたわ・・・ってか、聞いちゃったわ!
夏樹さんが、雪子さんを口説いたんだろうな~ってのは、何となく分かるけど、
ほとんど強制って、いったい、どんな口説き方をしたのかしら?
そういえば、京子から、そんな話を聞いた記憶がないような・・・。
京子が、夏樹さんに口説かれたなんて話とかって記憶ないし、
どっちかっていうと、京子の方が、一方的に夏樹さんに好意を持っていたって感じだったような気がする。
それにしても、夏樹さんが口説くのは分かるけど、
それまでは、雪子さんとは知り合いでも何でもなかったのよね?
その雪子さんが、見ず知らずだった夏樹さんに口説かれて、すぐに承諾しちゃうって・・・う~ん。
だってさ、あんなにも物静かで大人しくて、んでもって、どっちかっていうと、すぐに陰に隠れちゃう感じの雪子さんが・・・う~ん。
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