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愛せない感情
愛せない感情・・・その7
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直美は少しドキッとした。
それは夏樹の言葉にではなく、その視線の先に映った夏樹に仕草にだった。
はじめて見たわ!
夏樹さんの煙草に火をつける仕草・・・。
いえ、前にも何度か、それにさっきも見たけど、それとは全然違う・・・
なんていうか、上手く言えないけど、きっと、これが、素のままの本当の夏樹さんの姿なのかな?
「あら?あたしのお顔に何か付いているのかしら?」
「いえ・・・あっ・・・へへへっ」
「そういえばさ、あんた、さっきからあたしの言葉には驚いていないみたいだけど、あんたの欲しいのは、その先?それとも、そこに行きつくまでの過去かしら?」
うぁ~そこを訊いてくるんですか?
う~ん・・・ちょっと予想していなかったというか。
では、こちらも突然の草陰からの奇襲攻撃でひとつ!
「あの、もし亜晃君や省吾君が夏樹さんに会いたいって言ったら会って頂けますか?」
むふふ・・・確か、夏樹さんは今まで一度も子供たちの名前を言ってない。
ということは、おそらく一番訊かれたくない問題なのではないかとずっと思っていたのよね。
「会わないわよ」
えっ?えええ===っ?
そんな、あっさりと。・・・しかも、即答で・・・。
「会わないって、どうして会わないんですか?」
「あら?あんたの思慮深さも、意外と浅かったのね」
「えっ?・・・う~ん」
「あははっ、そんなに考え込まなくてもいいわよ」
「でも・・・う~ん、なんか、ちょっと悔しいですね」
「そんな事はないわよ。初めて会った頃のあんたに比べたらとっても成長していると思うわよ」
「そうかな~?でも、そう言ってもらえるとちょっと嬉しいかも。というか、私って、そんなにおバカだったんですか?」
「あんたさ、編み物とか縫い物とかってするの?」
「ええ・・・まあ、一応は」
「それと同じよ。編み物も人の思考回路も。編み物にも色んな編み方があるでしょ?そのどれも最初は笑えるほどの初心者、でも、編んでいるうちにだんだん分かるようになっていく、人のそれも同じようなもの」
「なるほど・・・とっても、分かりやすいですね」
「あたしだって最初はおバカ、みんな最初はおバカから始まるもんなのよ」
直美は、ふとカウンターの方へ視線を移すと、冴子が、何やら冷蔵庫の引き出しに
可愛い頭をパクっとされている光景が見えて少し可笑しくなった。
「ふふっ、可愛いでしょ?冴ちゃん!」
「あっ、はい。」
「もしかしたら、冴ちゃんなのかもしれないわね。あたしの意思を受け継いでくれるのって」
「意思をっていうのは?」
「何て説明したらいいかしら?そうね~・・・あたしの生きていた時間かしらね」
「夏樹さんの生きていた時間?」
「時々ね、夢で見るのよ。あたしが居なくなったこの世界で、冴ちゃんがこの子たちと過ごしている日々をね」
夏樹の言葉に直美は意味も無く急に悲しくなってしまった。
さっきまで聞こえてきた幾つかの京子の悲しい未来の言葉には、
悲しみも寂しさも感じなかった直美だったのだが・・・。
今の夏樹の言葉には、なぜか言いようのない寂しさが、突然現れた霧のように押し寄せてくるのである。
それは夏樹の言葉にではなく、その視線の先に映った夏樹に仕草にだった。
はじめて見たわ!
夏樹さんの煙草に火をつける仕草・・・。
いえ、前にも何度か、それにさっきも見たけど、それとは全然違う・・・
なんていうか、上手く言えないけど、きっと、これが、素のままの本当の夏樹さんの姿なのかな?
「あら?あたしのお顔に何か付いているのかしら?」
「いえ・・・あっ・・・へへへっ」
「そういえばさ、あんた、さっきからあたしの言葉には驚いていないみたいだけど、あんたの欲しいのは、その先?それとも、そこに行きつくまでの過去かしら?」
うぁ~そこを訊いてくるんですか?
う~ん・・・ちょっと予想していなかったというか。
では、こちらも突然の草陰からの奇襲攻撃でひとつ!
「あの、もし亜晃君や省吾君が夏樹さんに会いたいって言ったら会って頂けますか?」
むふふ・・・確か、夏樹さんは今まで一度も子供たちの名前を言ってない。
ということは、おそらく一番訊かれたくない問題なのではないかとずっと思っていたのよね。
「会わないわよ」
えっ?えええ===っ?
そんな、あっさりと。・・・しかも、即答で・・・。
「会わないって、どうして会わないんですか?」
「あら?あんたの思慮深さも、意外と浅かったのね」
「えっ?・・・う~ん」
「あははっ、そんなに考え込まなくてもいいわよ」
「でも・・・う~ん、なんか、ちょっと悔しいですね」
「そんな事はないわよ。初めて会った頃のあんたに比べたらとっても成長していると思うわよ」
「そうかな~?でも、そう言ってもらえるとちょっと嬉しいかも。というか、私って、そんなにおバカだったんですか?」
「あんたさ、編み物とか縫い物とかってするの?」
「ええ・・・まあ、一応は」
「それと同じよ。編み物も人の思考回路も。編み物にも色んな編み方があるでしょ?そのどれも最初は笑えるほどの初心者、でも、編んでいるうちにだんだん分かるようになっていく、人のそれも同じようなもの」
「なるほど・・・とっても、分かりやすいですね」
「あたしだって最初はおバカ、みんな最初はおバカから始まるもんなのよ」
直美は、ふとカウンターの方へ視線を移すと、冴子が、何やら冷蔵庫の引き出しに
可愛い頭をパクっとされている光景が見えて少し可笑しくなった。
「ふふっ、可愛いでしょ?冴ちゃん!」
「あっ、はい。」
「もしかしたら、冴ちゃんなのかもしれないわね。あたしの意思を受け継いでくれるのって」
「意思をっていうのは?」
「何て説明したらいいかしら?そうね~・・・あたしの生きていた時間かしらね」
「夏樹さんの生きていた時間?」
「時々ね、夢で見るのよ。あたしが居なくなったこの世界で、冴ちゃんがこの子たちと過ごしている日々をね」
夏樹の言葉に直美は意味も無く急に悲しくなってしまった。
さっきまで聞こえてきた幾つかの京子の悲しい未来の言葉には、
悲しみも寂しさも感じなかった直美だったのだが・・・。
今の夏樹の言葉には、なぜか言いようのない寂しさが、突然現れた霧のように押し寄せてくるのである。
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