愛して欲しいと言えたなら

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愛せない感情

愛せない感情・・・その3

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いえ、あの・・・その前に、どこをどう迷えば、そういう会話にたどり着くのよ?
それに、なんか、さっきから京子の言動っていうか、言葉の並びっていうか、
う~ん、こういう場合は、何て言うんだろう?

とにかく、さっきから京子の話す会話が所々飛んでるっていうか、
会話と会話の間に入るはずの言葉が省略されているっていうか・・・う~ん・・・とにかく、変!

「う~ん・・・私にはよく分からないけど、もういいんじゃないかな、そういうのって?だってさ、どっちがどうのとか、どっちが良いとか悪いとかって言っても何が変わるわけでもないしさ」

「直美も、同じ事を言うのね」

「えっ・・・?」

「私は、もう、とっくに歩き出せていたと思っていた。きっと、あの人の事だから、いつまでも昔の事を持ち出してはウジウジしているんだろうなって・・・そう思ってた。でも、逆だったみたい、いつまでも、あの人を恨んでは悪口ばかり、それも飽きもせずに同じ毎日を繰り返して」

「京子・・・」

「頭では分かっているんだけどダメなのよね・・・」

う~ん・・・なんか、変?

「でも、そんなのって、みんな同じなんじゃないかな?」

「みんな同じって、それじゃ直美も?」

「まあね、私だっていまだに昔の旦那の悪口とかって気がついたら言っていたりするしさ」

「そうなの・・・それじゃ私だけじゃないのね、そういうのって」

「そうよ、夏樹さんがちょっと変わってるだけで、みんなはそんなもんだと思うわよ」

「あの人だけ・・・そう、やっぱり、あの人、私の悪口とか言ってなかったのね」

「えっ?」

「ううん、ちょっと疑ってて」

「疑っててって、もしかして、私?」

「ちょっとね、でも、直美が、あの人の事をちょっと変わってるだけって、本当に言ってなかったんだなって」

「そうなのよね。だから、夏樹さんって変わった人だなって思ってね。それに、夏樹さんの場合ってさ、たぶんだけど・・・」

「たぶんって?」

「うん、たぶんだけどね、そこは勘違いしないでね!」

「分かったから言ってみて?」

「たぶん、夏樹さん本人は悪口のつもりなんだと思うのね。ただ、聞いてる私からすると悪口に聞こえないっていうか何ていうかさ、あ~いうのって、きっと、歯がゆいって言うのかなって?」

「私の事で・・・?」

「うん、そう。でも、あくまでも私が感じたって事なんだけどね。きっと夏樹さん、京子の事をとっても心配しているんだと思うの。でも、今の自分には何も出来ないっていうか、京子に何もしてあげられないっていうか、きっと何も出来ない自分が歯がゆいのかなって?そんな風に聞こえてきちゃうの」

「子供たちの事とかも?」

「ううん、亜晃君や省吾君には悪いけど、きっと、夏樹さんには京子しか見えていないみたい」

そう言った時、直美の脳裏に夏樹の言葉が横切っていくのを感じた。

「相手を想っての想いと自分のための想い」・・・確か、そんな感じの事を言ってたような。

あっ!もしかして、これじゃないかしら?
雪子さんが言っていた、雪子さんと京子の違いって?

きっと、そうよ!そうだわ!
うん、間違ってないと私は思う私は正しい・・・な~んて違ってたりして。

「ねぇ、前にも少し言ったと思うけど、亜晃と省吾の事なんだけど」

「うん・・・」

「直美、あの子たちをあの人に会わせてあげて欲しいの」

いつもと変わらない声でいつもの口調で聞こえてきた京子の言葉のはずなのに、
携帯越しに聞こえてきた京子の声に、ほんの一瞬、背筋に冷たいものが通り過ぎていくのを感じた直美は返す言葉を忘れてしまった。
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