340 / 386
消えていく未来
消えていく未来・・・その20
しおりを挟む
天然で鈍感でおバカな私でさえ、夏樹さんに会わなければという選択肢を選んで、
今、こうして、ここにいるんだから。
1年前までは夏樹さんという人の事なんて、京子から聞かされていただけの京子の旦那さん、
そして、今は、元旦那さん。
ただ、それだけしか知らない間柄だった。
もちろん、会った事もなければ、お話をした事だってなかったはず。
なのに、今では、そんな間柄だった過去が、まるでなかったかのように、
気がつくと夏樹さんと親しく話せる間柄になってしまっているなんて自分でも信じられないし。
しかも、それが京子と一緒に?ではないのだから、余計に信じられないっていうか。
夏樹さんに会う事を京子には知らせないで・・・そして、それは、一度だけじゃなかった。
なぜなのか私自身も分からないけど、会う時は、京子には知られないように会いに行き、
そして、交わした会話も、大切なところは、京子に教えようとはしなかった。
どこかで京子に後ろめたい気持ちになりながらも夏樹さんに会いに行っていた私がそこにはいた。
これが、いつか、京子が言っていた、夏樹さんの時間の中・・・なのかな?
「ねぇ?どうして分かったの?」
「やっぱり?そうなのね・・・」
「やっぱり?って・・・どういう事よ?」
「何となくね、そんな気がしたから」
「いや、そうじゃないでしょ?」
「何が、そうじゃないの?」
「うんとね、どうして、私が夏樹さんに会いに行くって分かったのかなって?しかも、昨日の今日によ?」
「あの人のところに・・・ううん、違うわね。直美が、あの人に会いに行くって本当は分からなかったわ」
「えっ?だって、さっき?」
「ちょっとカマかけてみただけよ」
「えっ?えええ===っ?」
「ふふっ、何をそんなに驚いているのよ?」
「だってさ!だって、だって・・・」
少しの間をおいて、京子が、言葉を続ける。
「正直、言うとね。あの人に会いに行ってくれたらって・・・そんな事を思ってね」
「夏樹さんに会いにって・・・それって、どういう意味よ?」
「もう会ったの?あの人に?」
「ううん、まだだよ、これから会いに行くところなんだけど。今は、ちょっと手前のコンビニ」
「コンビニ・・・?」
「そう、コンビニの駐車場の中」
「な~に?もしかして、緊張とかって?」
「そういうわけじゃないけど。ここまでノンストップで走ってきたから、ちょっと休んでから行こうかな?って、思って」
「なに?もしかして、一度も、迷わないで?」
「へへっ・・・そうみたい」
「信じられない、あの直美が一度も迷わないなんて、まるで奇跡ね!」
「私も、そう思ってたりして」
「そして38円コーヒー?」
「あれ?なんで分かるかな?」
「やっぱりね、直美らしいわね」
京子との会話に、いや、いつもと同じような、京子との何気ない会話のはずなのに、
直美は何か引っ掛かるというか、何かいつもと違うというか、そんな微かな違和感を感じていた。
本来なら、訊くべき当たり前の会話を、どこか避けている自分に感じる違和感なのだろうか?
いや、そうではない。直美が感じたのは間違ってはいないのだが、
京子との会話の時間の中で、その違和感を見つけないといけないような気がしてならなかった。
いったい、なんだろう・・・?
この、変な感じというか、何かが、どこかが違うように思えてしまうのはなぜなんだろう?
「そういえば、直美が遠出するなんて、久しぶりなんじゃない?」
「久しぶりっていうか、ほとんど初めてというか、こんなに遠くまで一人で運転した事なんて、今までなかったかも?」
「そうよね、直美は天然の方向音痴だもんね」
京子、なぜ、訊かないの?
今、こんなに遠くまでって言ったのに・・・なぜ、訊かないの?
今、こうして、ここにいるんだから。
1年前までは夏樹さんという人の事なんて、京子から聞かされていただけの京子の旦那さん、
そして、今は、元旦那さん。
ただ、それだけしか知らない間柄だった。
もちろん、会った事もなければ、お話をした事だってなかったはず。
なのに、今では、そんな間柄だった過去が、まるでなかったかのように、
気がつくと夏樹さんと親しく話せる間柄になってしまっているなんて自分でも信じられないし。
しかも、それが京子と一緒に?ではないのだから、余計に信じられないっていうか。
夏樹さんに会う事を京子には知らせないで・・・そして、それは、一度だけじゃなかった。
なぜなのか私自身も分からないけど、会う時は、京子には知られないように会いに行き、
そして、交わした会話も、大切なところは、京子に教えようとはしなかった。
どこかで京子に後ろめたい気持ちになりながらも夏樹さんに会いに行っていた私がそこにはいた。
これが、いつか、京子が言っていた、夏樹さんの時間の中・・・なのかな?
「ねぇ?どうして分かったの?」
「やっぱり?そうなのね・・・」
「やっぱり?って・・・どういう事よ?」
「何となくね、そんな気がしたから」
「いや、そうじゃないでしょ?」
「何が、そうじゃないの?」
「うんとね、どうして、私が夏樹さんに会いに行くって分かったのかなって?しかも、昨日の今日によ?」
「あの人のところに・・・ううん、違うわね。直美が、あの人に会いに行くって本当は分からなかったわ」
「えっ?だって、さっき?」
「ちょっとカマかけてみただけよ」
「えっ?えええ===っ?」
「ふふっ、何をそんなに驚いているのよ?」
「だってさ!だって、だって・・・」
少しの間をおいて、京子が、言葉を続ける。
「正直、言うとね。あの人に会いに行ってくれたらって・・・そんな事を思ってね」
「夏樹さんに会いにって・・・それって、どういう意味よ?」
「もう会ったの?あの人に?」
「ううん、まだだよ、これから会いに行くところなんだけど。今は、ちょっと手前のコンビニ」
「コンビニ・・・?」
「そう、コンビニの駐車場の中」
「な~に?もしかして、緊張とかって?」
「そういうわけじゃないけど。ここまでノンストップで走ってきたから、ちょっと休んでから行こうかな?って、思って」
「なに?もしかして、一度も、迷わないで?」
「へへっ・・・そうみたい」
「信じられない、あの直美が一度も迷わないなんて、まるで奇跡ね!」
「私も、そう思ってたりして」
「そして38円コーヒー?」
「あれ?なんで分かるかな?」
「やっぱりね、直美らしいわね」
京子との会話に、いや、いつもと同じような、京子との何気ない会話のはずなのに、
直美は何か引っ掛かるというか、何かいつもと違うというか、そんな微かな違和感を感じていた。
本来なら、訊くべき当たり前の会話を、どこか避けている自分に感じる違和感なのだろうか?
いや、そうではない。直美が感じたのは間違ってはいないのだが、
京子との会話の時間の中で、その違和感を見つけないといけないような気がしてならなかった。
いったい、なんだろう・・・?
この、変な感じというか、何かが、どこかが違うように思えてしまうのはなぜなんだろう?
「そういえば、直美が遠出するなんて、久しぶりなんじゃない?」
「久しぶりっていうか、ほとんど初めてというか、こんなに遠くまで一人で運転した事なんて、今までなかったかも?」
「そうよね、直美は天然の方向音痴だもんね」
京子、なぜ、訊かないの?
今、こんなに遠くまでって言ったのに・・・なぜ、訊かないの?
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。



【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。
音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。
格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。
正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。
だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。
「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる