愛して欲しいと言えたなら

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消えていく未来

消えていく未来・・・その20

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天然で鈍感でおバカな私でさえ、夏樹さんに会わなければという選択肢を選んで、
今、こうして、ここにいるんだから。
1年前までは夏樹さんという人の事なんて、京子から聞かされていただけの京子の旦那さん、

そして、今は、元旦那さん。
ただ、それだけしか知らない間柄だった。
もちろん、会った事もなければ、お話をした事だってなかったはず。

なのに、今では、そんな間柄だった過去が、まるでなかったかのように、
気がつくと夏樹さんと親しく話せる間柄になってしまっているなんて自分でも信じられないし。

しかも、それが京子と一緒に?ではないのだから、余計に信じられないっていうか。
夏樹さんに会う事を京子には知らせないで・・・そして、それは、一度だけじゃなかった。

なぜなのか私自身も分からないけど、会う時は、京子には知られないように会いに行き、
そして、交わした会話も、大切なところは、京子に教えようとはしなかった。

どこかで京子に後ろめたい気持ちになりながらも夏樹さんに会いに行っていた私がそこにはいた。
これが、いつか、京子が言っていた、夏樹さんの時間の中・・・なのかな?

「ねぇ?どうして分かったの?」

「やっぱり?そうなのね・・・」

「やっぱり?って・・・どういう事よ?」

「何となくね、そんな気がしたから」

「いや、そうじゃないでしょ?」

「何が、そうじゃないの?」

「うんとね、どうして、私が夏樹さんに会いに行くって分かったのかなって?しかも、昨日の今日によ?」

「あの人のところに・・・ううん、違うわね。直美が、あの人に会いに行くって本当は分からなかったわ」

「えっ?だって、さっき?」

「ちょっとカマかけてみただけよ」

「えっ?えええ===っ?」

「ふふっ、何をそんなに驚いているのよ?」

「だってさ!だって、だって・・・」

少しの間をおいて、京子が、言葉を続ける。

「正直、言うとね。あの人に会いに行ってくれたらって・・・そんな事を思ってね」

「夏樹さんに会いにって・・・それって、どういう意味よ?」

「もう会ったの?あの人に?」

「ううん、まだだよ、これから会いに行くところなんだけど。今は、ちょっと手前のコンビニ」

「コンビニ・・・?」

「そう、コンビニの駐車場の中」

「な~に?もしかして、緊張とかって?」

「そういうわけじゃないけど。ここまでノンストップで走ってきたから、ちょっと休んでから行こうかな?って、思って」

「なに?もしかして、一度も、迷わないで?」

「へへっ・・・そうみたい」

「信じられない、あの直美が一度も迷わないなんて、まるで奇跡ね!」

「私も、そう思ってたりして」

「そして38円コーヒー?」

「あれ?なんで分かるかな?」

「やっぱりね、直美らしいわね」

京子との会話に、いや、いつもと同じような、京子との何気ない会話のはずなのに、
直美は何か引っ掛かるというか、何かいつもと違うというか、そんな微かな違和感を感じていた。
本来なら、訊くべき当たり前の会話を、どこか避けている自分に感じる違和感なのだろうか?

いや、そうではない。直美が感じたのは間違ってはいないのだが、
京子との会話の時間の中で、その違和感を見つけないといけないような気がしてならなかった。

いったい、なんだろう・・・?
この、変な感じというか、何かが、どこかが違うように思えてしまうのはなぜなんだろう?

「そういえば、直美が遠出するなんて、久しぶりなんじゃない?」

「久しぶりっていうか、ほとんど初めてというか、こんなに遠くまで一人で運転した事なんて、今までなかったかも?」

「そうよね、直美は天然の方向音痴だもんね」

京子、なぜ、訊かないの?
今、こんなに遠くまでって言ったのに・・・なぜ、訊かないの?

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