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消えていく未来
消えていく未来・・・その13
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次の言葉が見つからない京子を気遣って、直美が言葉を口にする。
「でも、今更よね。それに、もう終わった事なんだから、私が、また堀っくり返すのもなんだし」
「まだ、何も終わってないわ!」
「へっ・・・?」・・・あの・・・ですね?
「何も終わってないのよ。きっと、子供達も、あの人のところへ行ってしまうんだろうし」
「でも、それは・・・」
「ねえ、直美、もし、私が、あの人と離婚していなかったらどうなっていたと思う?」
「どうって、訊かれても・・・」
「もし、私があの人との離婚を選ばなかったとしたら、商売でも何でも、きっと、あの人の好きなように好きにしていいって私は言っていたと思うの。それに、あの人と生きていく方法って、それしか選択肢はなかったとも思うし。もし、私がそうしていたら、今頃はどうなっていたと思う?」
「どう思うって訊かれても、それは、ちょっとと言いますか何て言いますか・・・かな」
「ハッキリ言っていいわよ、別に、私は何を言われても気にしないから」
「いえ、あのですね?・・・京子の気にしないっていうのが一番怖いんですけど?」
そう言って、おどける直美を見て、笑みを浮かべる京子の表情は意外と暗いわけではなかった。
どちらかというと・・・あきらめ・・・なのだろうか?
「私さ、ここんとこ毎日そんな事ばかり考えているのよね・・・」
「そんな事って、もし、夏樹さんと離婚しなかったらって?」
「まあ、そんなとこ・・・」
「でも、京子は、やり直そうとかって言わなかったの?」
「言ったわよ、何度も何度もね。でも、その度に新しい借金が発覚して、最後には、家も抵当に入ってたって知った時には目の前が真っ暗になったわ!」
「まあ、確かにそうなるかも・・・」
「だから思ったの、もう、この人は信用出来ないって!」
「でも、それは・・・」
「分かってるわ!私の性格が原因なんでしょ?」
「それが分かってて、どうして・・・」
「その時は分からなかったからよ。それが分かったのは、ここに入院して何日か過ぎた頃・・」
「そっか・・・」
「私が離婚してから、省吾が、何年かあの人と一緒に暮らしていたでしょ?」
「ええ・・・」
「それで、省吾が、あの人の家を出て私のところに戻って来た時に、私、何を思ったと思う?」
「何って・・・?」
「勝った・・・あの人に勝ったって、そんな風に思いながら優越感みたいなものに浸ってたの」
「そんな、子供の取り合いで勝った負けたって・・・」
「今にしてみれば、そんな、くだらないような事でって分かるけど・・・私って、バカみたいよね?」
「そんな事はないと思うけど・・・」
「あの人の悪口を言って、あの人を悪者にして、子供たちがあの人を軽蔑するように仕向けて、私って、いったい、今まで何をしてたんだろうって・・・ほんと、バカよね、私ってさ」
京子、いったい、どうしたのかしら?
ついちょっと前までは、夏樹さんを極悪人みたいな扱い方だったのに。
そういえば、省吾君が、京子が少し弱気になってるって言ってたけど、本当だったみたい。
とはいっても、元気になれば、また、極悪人の夏樹さんが復活するんだろうけど。
「省吾の事だから、私が、少し弱気になってるとかって言ってたんでしょ?」
「へっ・・・?」・・・なんで分かるの京子さん?
「でもね、怪我をしたからってわけじゃないの。それに、別に、弱気になんかなってないし、そこは間違わないでよね?」
「了解です・・・。でも、怪我をしたからではないっていうのは?」
「本当はね、省吾が商売をしたいって言い出したあたりから、何となくって感じ」
「省吾君が・・・」
「省吾にしても亜晃にしても、別に、あの人の子供なんだから、みじめになり下がった父親を軽蔑して、今度は景気が良くなったみたいだからって、また親子に戻ったって別に何も問題はないんだし。誰もそれに対して、どうこう言う事もないと思うわよ。もともとが親子なんだから」
「でも、京子は・・・・」
「もし、あの時、あの人と離婚していなかったら、あの人の隣にいるのは雪子さんではなくて、今も、私のはずだったのに!なんてさ、考えたくもないのに気がつくとぼんやりとそんな事を考えてしまって。そんな変な事ばかり考えていると、だんだん、私っていったいなんなんだろうって、私なんてこの世に必要なかったんじゃないのかなとかって、本当、私ってバカよね!」
なんか今日の京子って変だけど・・・
でも、もしかして、夏樹さんが恐れている京子の未来って・・・。
「あの人は、私から全てを奪って、それでも、まだ私を苦しめ続けているって・・・逆じゃない?あの人が私から全てを奪ったんじゃなくて、全てを奪ったのは私の方だったのかもしれない。それなのに、今度は、また省吾たちを私から奪っていくとかって、一人で憤慨していたら勢い余って木に激突しちゃうしさ」
はい・・・?今の話って、そういうオチなの?
「でも、今更よね。それに、もう終わった事なんだから、私が、また堀っくり返すのもなんだし」
「まだ、何も終わってないわ!」
「へっ・・・?」・・・あの・・・ですね?
「何も終わってないのよ。きっと、子供達も、あの人のところへ行ってしまうんだろうし」
「でも、それは・・・」
「ねえ、直美、もし、私が、あの人と離婚していなかったらどうなっていたと思う?」
「どうって、訊かれても・・・」
「もし、私があの人との離婚を選ばなかったとしたら、商売でも何でも、きっと、あの人の好きなように好きにしていいって私は言っていたと思うの。それに、あの人と生きていく方法って、それしか選択肢はなかったとも思うし。もし、私がそうしていたら、今頃はどうなっていたと思う?」
「どう思うって訊かれても、それは、ちょっとと言いますか何て言いますか・・・かな」
「ハッキリ言っていいわよ、別に、私は何を言われても気にしないから」
「いえ、あのですね?・・・京子の気にしないっていうのが一番怖いんですけど?」
そう言って、おどける直美を見て、笑みを浮かべる京子の表情は意外と暗いわけではなかった。
どちらかというと・・・あきらめ・・・なのだろうか?
「私さ、ここんとこ毎日そんな事ばかり考えているのよね・・・」
「そんな事って、もし、夏樹さんと離婚しなかったらって?」
「まあ、そんなとこ・・・」
「でも、京子は、やり直そうとかって言わなかったの?」
「言ったわよ、何度も何度もね。でも、その度に新しい借金が発覚して、最後には、家も抵当に入ってたって知った時には目の前が真っ暗になったわ!」
「まあ、確かにそうなるかも・・・」
「だから思ったの、もう、この人は信用出来ないって!」
「でも、それは・・・」
「分かってるわ!私の性格が原因なんでしょ?」
「それが分かってて、どうして・・・」
「その時は分からなかったからよ。それが分かったのは、ここに入院して何日か過ぎた頃・・」
「そっか・・・」
「私が離婚してから、省吾が、何年かあの人と一緒に暮らしていたでしょ?」
「ええ・・・」
「それで、省吾が、あの人の家を出て私のところに戻って来た時に、私、何を思ったと思う?」
「何って・・・?」
「勝った・・・あの人に勝ったって、そんな風に思いながら優越感みたいなものに浸ってたの」
「そんな、子供の取り合いで勝った負けたって・・・」
「今にしてみれば、そんな、くだらないような事でって分かるけど・・・私って、バカみたいよね?」
「そんな事はないと思うけど・・・」
「あの人の悪口を言って、あの人を悪者にして、子供たちがあの人を軽蔑するように仕向けて、私って、いったい、今まで何をしてたんだろうって・・・ほんと、バカよね、私ってさ」
京子、いったい、どうしたのかしら?
ついちょっと前までは、夏樹さんを極悪人みたいな扱い方だったのに。
そういえば、省吾君が、京子が少し弱気になってるって言ってたけど、本当だったみたい。
とはいっても、元気になれば、また、極悪人の夏樹さんが復活するんだろうけど。
「省吾の事だから、私が、少し弱気になってるとかって言ってたんでしょ?」
「へっ・・・?」・・・なんで分かるの京子さん?
「でもね、怪我をしたからってわけじゃないの。それに、別に、弱気になんかなってないし、そこは間違わないでよね?」
「了解です・・・。でも、怪我をしたからではないっていうのは?」
「本当はね、省吾が商売をしたいって言い出したあたりから、何となくって感じ」
「省吾君が・・・」
「省吾にしても亜晃にしても、別に、あの人の子供なんだから、みじめになり下がった父親を軽蔑して、今度は景気が良くなったみたいだからって、また親子に戻ったって別に何も問題はないんだし。誰もそれに対して、どうこう言う事もないと思うわよ。もともとが親子なんだから」
「でも、京子は・・・・」
「もし、あの時、あの人と離婚していなかったら、あの人の隣にいるのは雪子さんではなくて、今も、私のはずだったのに!なんてさ、考えたくもないのに気がつくとぼんやりとそんな事を考えてしまって。そんな変な事ばかり考えていると、だんだん、私っていったいなんなんだろうって、私なんてこの世に必要なかったんじゃないのかなとかって、本当、私ってバカよね!」
なんか今日の京子って変だけど・・・
でも、もしかして、夏樹さんが恐れている京子の未来って・・・。
「あの人は、私から全てを奪って、それでも、まだ私を苦しめ続けているって・・・逆じゃない?あの人が私から全てを奪ったんじゃなくて、全てを奪ったのは私の方だったのかもしれない。それなのに、今度は、また省吾たちを私から奪っていくとかって、一人で憤慨していたら勢い余って木に激突しちゃうしさ」
はい・・・?今の話って、そういうオチなの?
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