愛して欲しいと言えたなら

zonbitan

文字の大きさ
上 下
329 / 386
消えていく未来

消えていく未来・・・その9

しおりを挟む
その頃、夏樹との電話を終えた直美は、京子が入院している病室に来ていた。

「省吾君が心配してたわよ?」

「省吾に会ったの?」

「さっきね、京子が元気がないからって」

「そう・・・他に、何か言ってた?」

「他にって言われても、別に、これといって」

「商売をしたいとかって言ってなかった?」

「あれ?京子も知ってたの?」

「まあね。なんか、この間からそんな話ばかりしてるから」

「それで、京子はどう思ってるの?」

「省吾が商売をしたいって言ってた事?」

「うん、そう・・・」

「私は反対よ。商売なんて、少しも良い事なんてなかったし。それに、商売ってなれば借金をしないとも限らないし、そういうのは、もう、懲り懲りだわ」

「でも、省吾君だって、この先も、ずっとバイト生活ってわけにもいかないんじゃないの?」

「だから、高校くらい出てればよかったのよ」

「まあ、確かにそれはそうだけど、今、それを言っても仕方がないんじゃないの」

「まったく、省吾にしても亜晃にしても、高校に行かなかったのを、あの人のせいにてあげたまではよかったけど、口ばっかりでさっぱりだし。ほんと、この先、どうするつもりなんだか」

あちゃー!そんな堂々と言わなくても。
って、京子、さりげなく夏樹さんを悪者にしてな~い?

「京子は、どうして欲しいと思ってるの?」

「どうって言われても、とりあえず、どこかに就職でもしてくれればいいんだけど」

「やっぱり、難しいのかしら?」

「みたいよ。それに、今は昔と違って非正規雇用とかってあるみたいでしょ?昔は、バイトか社員かって単純だったんだけど、今は、色々あるみたいだし」

「もしさ、もし、夏樹さんが省吾君を応援してくれるとしたら、京子はどう思う?」

「何、それ?」

「何って、もしよ、もしの話よ?」

「いいんじゃない?」

「いいの?」

「それより、どうして、そんな事を訊くの?もしかして、省吾が、あの人に相談とかしてるの?」

「してない、してない。だって、省吾君は、夏樹さんの引っ越し先とか知らないんだもん」

「それなら、教えてあげたらいいんじゃない?直美は知ってるんでしょ、あの人の引っ越し先とかって?」

「知ってるけど、でも、省吾君の意思が、まだ、そこまではっきりしてないみたいだし」

「ふ~ん・・・そう」

「何よ?ふ~ん、なんて」

「別に・・・」

「なんか、気が乗らないみたいね?」

「そういうわけじゃないけど、ただ、なんかね~。私って、何なんだろうって」

「ん?どういう事?」

「もし、省吾があの人に会えば、そのうち、亜晃もあの人に会いに行くんだろうし」

「別にいいじゃないの?親子なんだしさ」

「別にいいんだけど・・・。そうやって、あの人は、私から何もかも奪っていくのよね」

「奪うって・・・別に、会いに行くくらいで、どうしてそうなるの?」

「今の直美は、どうよ?」

「どうって言われても・・・」

「同じよ、今の直美と・・・。省吾だって、一度でもあの人に会えば、そのうち、何度も会いに行くようになるわ。それは、亜晃も同じ。まあ、別に元々親子なんだし、会わないよりも会ってる方が普通なんだろうし」

「なんか、夏樹さんに会われるのが、困るような言い方みたいだけど?」

「別にそういうわけじゃないわ。ただ、何となくそう思っただけよ」

そう言えば、ちょっと不思議よね?
省吾君は、どうして、夏樹さんがお金を持ってるって分かったのかしら?

「ねえ、京子?夏樹さんの今って、省吾君は知ってるの?」

「どうして・・・?」

「実はね、省吾君とお話をしていた時にあれ?って思ったのよ。どうして、私なんかに商売を考えているみたいな事を言うのかなって?もしかして、私に、京子を説得して欲しいって事なのかしら?」

「そんなわけないでしょ」

「うわっ!即答なんだ!」

「何言ってるのよ。省吾は知ってるからでしょ?直美が、あの人の連絡先を知ってるのを。だからじゃないの?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

城内別居中の国王夫妻の話

小野
恋愛
タイトル通りです。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...