愛して欲しいと言えたなら

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消えていく未来

消えていく未来・・・その9

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その頃、夏樹との電話を終えた直美は、京子が入院している病室に来ていた。

「省吾君が心配してたわよ?」

「省吾に会ったの?」

「さっきね、京子が元気がないからって」

「そう・・・他に、何か言ってた?」

「他にって言われても、別に、これといって」

「商売をしたいとかって言ってなかった?」

「あれ?京子も知ってたの?」

「まあね。なんか、この間からそんな話ばかりしてるから」

「それで、京子はどう思ってるの?」

「省吾が商売をしたいって言ってた事?」

「うん、そう・・・」

「私は反対よ。商売なんて、少しも良い事なんてなかったし。それに、商売ってなれば借金をしないとも限らないし、そういうのは、もう、懲り懲りだわ」

「でも、省吾君だって、この先も、ずっとバイト生活ってわけにもいかないんじゃないの?」

「だから、高校くらい出てればよかったのよ」

「まあ、確かにそれはそうだけど、今、それを言っても仕方がないんじゃないの」

「まったく、省吾にしても亜晃にしても、高校に行かなかったのを、あの人のせいにてあげたまではよかったけど、口ばっかりでさっぱりだし。ほんと、この先、どうするつもりなんだか」

あちゃー!そんな堂々と言わなくても。
って、京子、さりげなく夏樹さんを悪者にしてな~い?

「京子は、どうして欲しいと思ってるの?」

「どうって言われても、とりあえず、どこかに就職でもしてくれればいいんだけど」

「やっぱり、難しいのかしら?」

「みたいよ。それに、今は昔と違って非正規雇用とかってあるみたいでしょ?昔は、バイトか社員かって単純だったんだけど、今は、色々あるみたいだし」

「もしさ、もし、夏樹さんが省吾君を応援してくれるとしたら、京子はどう思う?」

「何、それ?」

「何って、もしよ、もしの話よ?」

「いいんじゃない?」

「いいの?」

「それより、どうして、そんな事を訊くの?もしかして、省吾が、あの人に相談とかしてるの?」

「してない、してない。だって、省吾君は、夏樹さんの引っ越し先とか知らないんだもん」

「それなら、教えてあげたらいいんじゃない?直美は知ってるんでしょ、あの人の引っ越し先とかって?」

「知ってるけど、でも、省吾君の意思が、まだ、そこまではっきりしてないみたいだし」

「ふ~ん・・・そう」

「何よ?ふ~ん、なんて」

「別に・・・」

「なんか、気が乗らないみたいね?」

「そういうわけじゃないけど、ただ、なんかね~。私って、何なんだろうって」

「ん?どういう事?」

「もし、省吾があの人に会えば、そのうち、亜晃もあの人に会いに行くんだろうし」

「別にいいじゃないの?親子なんだしさ」

「別にいいんだけど・・・。そうやって、あの人は、私から何もかも奪っていくのよね」

「奪うって・・・別に、会いに行くくらいで、どうしてそうなるの?」

「今の直美は、どうよ?」

「どうって言われても・・・」

「同じよ、今の直美と・・・。省吾だって、一度でもあの人に会えば、そのうち、何度も会いに行くようになるわ。それは、亜晃も同じ。まあ、別に元々親子なんだし、会わないよりも会ってる方が普通なんだろうし」

「なんか、夏樹さんに会われるのが、困るような言い方みたいだけど?」

「別にそういうわけじゃないわ。ただ、何となくそう思っただけよ」

そう言えば、ちょっと不思議よね?
省吾君は、どうして、夏樹さんがお金を持ってるって分かったのかしら?

「ねえ、京子?夏樹さんの今って、省吾君は知ってるの?」

「どうして・・・?」

「実はね、省吾君とお話をしていた時にあれ?って思ったのよ。どうして、私なんかに商売を考えているみたいな事を言うのかなって?もしかして、私に、京子を説得して欲しいって事なのかしら?」

「そんなわけないでしょ」

「うわっ!即答なんだ!」

「何言ってるのよ。省吾は知ってるからでしょ?直美が、あの人の連絡先を知ってるのを。だからじゃないの?」

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