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消えていく未来
消えていく未来・・・その6
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「でも、夏樹さんも、雪子も、お互い会ってもいないんだし、連絡とかも取っていないのに分かるものなのでしょうか?」
「お互いの考えている事がでしょうか?」
「ええ。せめて連絡だけでも取りあっているのなら、そういうお互いの考えも分かるかもしれませんが」
「幾年月、どれだけの月日を離れていたとしても、もし、お互いが赤い糸で結ばれているのなら、一日たりとも、いえ、一分一秒、お互いを忘れた日も、そして、お互いを想い合わない瞬間さえもなかったのかもしれません」
「う~ん、私としては、ちょっとショックがきつめかも・・・。でも、だからといって、いくらなんでも、そこまで分かるものなのでしょうか?」
「人とは、摩訶不思議な生き物ですから、何とも・・・。きっと、夏樹様は、見え隠れする針の穴ほどの刹那に、雪子様の姿を捕えようとしているのかもしれません。それゆえに、夏樹様の心情は、計り知れないほどの挫折と痛みを繰り返しているのではないかと思います」
「そんな回りくどい事をしないで、パッと、会ってしまえばいいと思うんですけど」
「ははは・・・それは、確かに、そうかもしれませんね」
「ですよね・・・」
「それでも、お互いの想いが強ければ強いほど、ほんの数ミリの距離でさえ、数万キロも離れているように感じられてしまうのではないでしょうか」
「何となく、オカルトかカオスですね?」
「ははは・・・。天才はカオスを好みますから」
「まったくです。こっちは、もう準備万端だというのに」
「準備万端・・・ですか?」
「ええ、まあ・・・。何て言いますか・・・」
「残された家族の皆様の事ですね」
「そうなんですけど。こっちは、もう、話がついているというか、無理やり黙らせたといいますか、まあ、そんな感じなんですけど。なので、あとは雪子だけなんです。もし、雪子に連絡が出来れば、旦那さんたちの事はもう心配いらないからと言ってあげれるんですけど、私としては、人の気も知らないで、まったく、もう・・・。という感じなんですよ」
「いやいや、黙らせたというのは、ちょっと、穏やかではないですね」
「はは・・・でも、あんまりにもグズグズ言うもんだから、(あんたは、自分の幸せと雪子の幸せと、どっちの幸せが大事なのって・・・)ちょっと、きつめに・・・というか、なんていうか、まあ、若気の至りがここにきて役に立ったとでもいいましょうか・・・。まあ、そんな感じで」
「いやいや、そんな事はありません。でも、残された家族の無慈悲な現実を思うと、嵐が過ぎ去った後の悲劇のようで言葉もありません。裕子様は、大変なお役目をお引き受けなされたのではないですか?」
「いえ、それでも、私は嬉しいんですよ。それに、きっと、これが私の愛し方なのかなと、最近になって思うようになってきたんです」
「それは、夏樹様に対してのでしょうか?」
「ええ、夏樹さんの幸せが私の幸せ・・・。今は、それが、私の愛し方なのかもしれないと思えるんです」
「夏樹様は、とても幸せな人ですね」
「いえいえ、ただの変態ですよ、ふふっ・・・。そういえば、先程、言っていましたゲームというのは、もし、雪子が最悪の選択肢を選んだとしたら」
「もちろん、夏樹様が、雪子様を一人になさるような事はないかと思いますが、もし、この世に残らなければならないご事情があったとしても、生きて死人の日々になるのだと思います」
「やっぱり、そうなるのでしょうか?」
「それゆえの命がけのゲーム・・・。動くに動けない夏樹様が一番辛いのではないでしょうか?」
「でも、どうして、そこまでして・・・」
「動けば全てが水泡に帰してしまう。きっと、夏樹様は、そうお考えなのだと思います・・・でも」
「何か・・・?」
「はい、もしかしましたら、夏樹様は、雪子様の口から何かを言わせたいのでは?と、ふと、思いまして」
「雪子の口から・・・?」
「おそらくは、雪子様の本当の願い、もしくは真実の想い。もし、そうなのでしたら、夏樹様が、雪子様をお探しにならない全てのつじつまが合うと思いませんか?」
「あっ、それなら簡単です」
「えっ・・・?」
「きっと、そうだわ。うん、間違いないわ。数か月前になるんですが、いつも泊まりに行く旅館でなのですが、お酒の力も相まって、雪子が、ポロっと口を滑らせた事があったんです」
「雪子様が・・・それで、その言葉というのは?」
「はい、その時に、雪子が少し寂しそうな笑みを浮かべながらこう言ったんです・・・。愛して欲しいって言えたらいいのにね!って」
「お互いの考えている事がでしょうか?」
「ええ。せめて連絡だけでも取りあっているのなら、そういうお互いの考えも分かるかもしれませんが」
「幾年月、どれだけの月日を離れていたとしても、もし、お互いが赤い糸で結ばれているのなら、一日たりとも、いえ、一分一秒、お互いを忘れた日も、そして、お互いを想い合わない瞬間さえもなかったのかもしれません」
「う~ん、私としては、ちょっとショックがきつめかも・・・。でも、だからといって、いくらなんでも、そこまで分かるものなのでしょうか?」
「人とは、摩訶不思議な生き物ですから、何とも・・・。きっと、夏樹様は、見え隠れする針の穴ほどの刹那に、雪子様の姿を捕えようとしているのかもしれません。それゆえに、夏樹様の心情は、計り知れないほどの挫折と痛みを繰り返しているのではないかと思います」
「そんな回りくどい事をしないで、パッと、会ってしまえばいいと思うんですけど」
「ははは・・・それは、確かに、そうかもしれませんね」
「ですよね・・・」
「それでも、お互いの想いが強ければ強いほど、ほんの数ミリの距離でさえ、数万キロも離れているように感じられてしまうのではないでしょうか」
「何となく、オカルトかカオスですね?」
「ははは・・・。天才はカオスを好みますから」
「まったくです。こっちは、もう準備万端だというのに」
「準備万端・・・ですか?」
「ええ、まあ・・・。何て言いますか・・・」
「残された家族の皆様の事ですね」
「そうなんですけど。こっちは、もう、話がついているというか、無理やり黙らせたといいますか、まあ、そんな感じなんですけど。なので、あとは雪子だけなんです。もし、雪子に連絡が出来れば、旦那さんたちの事はもう心配いらないからと言ってあげれるんですけど、私としては、人の気も知らないで、まったく、もう・・・。という感じなんですよ」
「いやいや、黙らせたというのは、ちょっと、穏やかではないですね」
「はは・・・でも、あんまりにもグズグズ言うもんだから、(あんたは、自分の幸せと雪子の幸せと、どっちの幸せが大事なのって・・・)ちょっと、きつめに・・・というか、なんていうか、まあ、若気の至りがここにきて役に立ったとでもいいましょうか・・・。まあ、そんな感じで」
「いやいや、そんな事はありません。でも、残された家族の無慈悲な現実を思うと、嵐が過ぎ去った後の悲劇のようで言葉もありません。裕子様は、大変なお役目をお引き受けなされたのではないですか?」
「いえ、それでも、私は嬉しいんですよ。それに、きっと、これが私の愛し方なのかなと、最近になって思うようになってきたんです」
「それは、夏樹様に対してのでしょうか?」
「ええ、夏樹さんの幸せが私の幸せ・・・。今は、それが、私の愛し方なのかもしれないと思えるんです」
「夏樹様は、とても幸せな人ですね」
「いえいえ、ただの変態ですよ、ふふっ・・・。そういえば、先程、言っていましたゲームというのは、もし、雪子が最悪の選択肢を選んだとしたら」
「もちろん、夏樹様が、雪子様を一人になさるような事はないかと思いますが、もし、この世に残らなければならないご事情があったとしても、生きて死人の日々になるのだと思います」
「やっぱり、そうなるのでしょうか?」
「それゆえの命がけのゲーム・・・。動くに動けない夏樹様が一番辛いのではないでしょうか?」
「でも、どうして、そこまでして・・・」
「動けば全てが水泡に帰してしまう。きっと、夏樹様は、そうお考えなのだと思います・・・でも」
「何か・・・?」
「はい、もしかしましたら、夏樹様は、雪子様の口から何かを言わせたいのでは?と、ふと、思いまして」
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「えっ・・・?」
「きっと、そうだわ。うん、間違いないわ。数か月前になるんですが、いつも泊まりに行く旅館でなのですが、お酒の力も相まって、雪子が、ポロっと口を滑らせた事があったんです」
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