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消えていく未来
消えていく未来・・・その5
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少しの沈黙を過ぎて、裕子が言葉を声にする。
「その事を、夏樹さんは・・・?」
「おそらく、知っておられるものと思われます。それゆえに、雪子様をお捜しにはならないのかと」
「どうして、そうなるのですか?」
「夏樹様は、とぼけておられるようですが、おそらくは、雪子様の足取りについて、ある程度の予測はついているものと思います」
「そうなのでしょうか?」
「夏樹様の性格上、そうでなければ、お捜しに行かれてると思いませんか?」
「あっ・・・確かに、そう言われれば、そうかもしれません」
「それゆえに、冴ちゃんという娘さんなのです」
「冴ちゃん・・・ですか?」
「先程、裕子様から、冴ちゃんという娘さんは、雪子様にとっても天使かもしれないと、夏樹様が言っておられたと聞きまして少し考えてみたのです」
「考えてみたと、言いますのは?」
「はい。どうして、夏樹様は、冴ちゃんという娘さんを、雪子様にとっても天使かもしれないと言ったのかですが。その前に、夏樹様にとっても天使かもしれないと、夏樹様、そして雪子様、双方の天使かもしれないとは、いったい、どういう意味になるのだろうかと」
「ええ、確かに。私も、そこがちょっと理解が出来なかったんです」
「裕子様、コーヒーのお代わりはいかがでしょう?」
「あっ、はい・・・」
マスターが席を立って、カウンターの方へ歩いていくのを見ながら裕子は思った。
マスターって、いつも、いいところに差し掛かると、なぜか、ちょっと時間を空けちゃうのよね?
コーヒーを作って戻ってきたマスターが、裕子の前にコーヒーカップを置きながら
「いやいや、歳を取ると、どうしても、会話の途中に、ちょっとした休憩を入れてしまいがちになってしまいまして」
「いえいえ・・・」・・・ってか、マスターまで私の考えていた事が分かっちゃうんですか?
「はははっ・・・目を見ればそれとなく」
「えっ・・・?」・・・なぜに、分かるの?
「いやいや、私も、歳甲斐もなく妙にワクワクしてしまいまして・・・ははは」
「いえ、あの・・・えっ・・・?」
「夏樹様も、雪子様も、お互いが知恵比べを楽しんでおられると言いますか、ゲームを楽しんでおられると言いますか」
「ゲーム・・・ですか?」
「はい、ある意味、命がけのゲームを」
「命がけのゲームをって・・・あの」
「言い方がちょっとあれかもしれませんが、人が死を選ぶという事は、それほど難しい事ではないのです。むしろ難しいのは死を選ぶ事ではなく、生きるという選択肢、そして、何かを背負い日々を生きていくという選択肢の方なのだと思います」
「ええ、確かに、私も、そう思います。でも、それと、雪子とは?」
「おそらく、雪子様は冴ちゃんという娘さんと、これまでに何度となくメールや電話などで、お話をしていると思うのです」
「夏樹さんのところに行った時も、冴ちゃんが雪子おば様って言ってましたから、おそらくは」
「正直、言いまして、私は、夏樹様の思考回路が、とても愉快と言いますか、とても面白いと思いました」
「夏樹さんの思考回路・・・ですか?」
「はい。人は、そこまで精彩に、しかも、的確に、心の奥の奥まで光を差し伸べる事が出来るものなのだろうかと、私自身とても驚いているのです」
「それは、夏樹さんが雪子の・・・と、いう事でしょうか?」
「はい。夏樹様は、雪子様の感情の全てを拾い上げようとしておられる。そして、その思考回路は、恐ろしくもあり、羨ましくもある、夏樹様の最後の賭けなのかもしれません」
「最後の賭け・・・?」
「雪子様だけではなく、夏樹様も命がけなのでしょう」
「でも、どうして、そんな事を・・・?」
「次に会う時は、偽りの仮面を着けて会わないために。先程も、申し上げたように、もし、雪子様が夏樹様の心に疑心暗鬼を抱いているのだとしたら、そこには、真実の愛は存在しないのです」
「でも、それは、夏樹さんがきちんと説明をすれば、雪子だって、きっと、分かると思うんですけど」
「いえ、その逆で、夏樹様が説明をすればするほど、説得すればするほど、雪子様の心の疑心暗鬼は大きくなっていってしまうのではないでしょうか?」
「そんな・・・。それじゃ、いったい」
「夏樹様は、雪子様に伝えたいのかもしれません。愛は、テーブルに運ばれてくる、出来上がった料理ではないのだと。愛とは、完成した姿で、心の中に生まれてくるものではないのだと、そう、雪子様に伝えたいのではないでしょうか?」
マスターの言葉に裕子は、「夏樹さんならそういう思考回路もありかも?」と思いながら、
そこまで想われている雪子が少し羨ましく感じた。
「その事を、夏樹さんは・・・?」
「おそらく、知っておられるものと思われます。それゆえに、雪子様をお捜しにはならないのかと」
「どうして、そうなるのですか?」
「夏樹様は、とぼけておられるようですが、おそらくは、雪子様の足取りについて、ある程度の予測はついているものと思います」
「そうなのでしょうか?」
「夏樹様の性格上、そうでなければ、お捜しに行かれてると思いませんか?」
「あっ・・・確かに、そう言われれば、そうかもしれません」
「それゆえに、冴ちゃんという娘さんなのです」
「冴ちゃん・・・ですか?」
「先程、裕子様から、冴ちゃんという娘さんは、雪子様にとっても天使かもしれないと、夏樹様が言っておられたと聞きまして少し考えてみたのです」
「考えてみたと、言いますのは?」
「はい。どうして、夏樹様は、冴ちゃんという娘さんを、雪子様にとっても天使かもしれないと言ったのかですが。その前に、夏樹様にとっても天使かもしれないと、夏樹様、そして雪子様、双方の天使かもしれないとは、いったい、どういう意味になるのだろうかと」
「ええ、確かに。私も、そこがちょっと理解が出来なかったんです」
「裕子様、コーヒーのお代わりはいかがでしょう?」
「あっ、はい・・・」
マスターが席を立って、カウンターの方へ歩いていくのを見ながら裕子は思った。
マスターって、いつも、いいところに差し掛かると、なぜか、ちょっと時間を空けちゃうのよね?
コーヒーを作って戻ってきたマスターが、裕子の前にコーヒーカップを置きながら
「いやいや、歳を取ると、どうしても、会話の途中に、ちょっとした休憩を入れてしまいがちになってしまいまして」
「いえいえ・・・」・・・ってか、マスターまで私の考えていた事が分かっちゃうんですか?
「はははっ・・・目を見ればそれとなく」
「えっ・・・?」・・・なぜに、分かるの?
「いやいや、私も、歳甲斐もなく妙にワクワクしてしまいまして・・・ははは」
「いえ、あの・・・えっ・・・?」
「夏樹様も、雪子様も、お互いが知恵比べを楽しんでおられると言いますか、ゲームを楽しんでおられると言いますか」
「ゲーム・・・ですか?」
「はい、ある意味、命がけのゲームを」
「命がけのゲームをって・・・あの」
「言い方がちょっとあれかもしれませんが、人が死を選ぶという事は、それほど難しい事ではないのです。むしろ難しいのは死を選ぶ事ではなく、生きるという選択肢、そして、何かを背負い日々を生きていくという選択肢の方なのだと思います」
「ええ、確かに、私も、そう思います。でも、それと、雪子とは?」
「おそらく、雪子様は冴ちゃんという娘さんと、これまでに何度となくメールや電話などで、お話をしていると思うのです」
「夏樹さんのところに行った時も、冴ちゃんが雪子おば様って言ってましたから、おそらくは」
「正直、言いまして、私は、夏樹様の思考回路が、とても愉快と言いますか、とても面白いと思いました」
「夏樹さんの思考回路・・・ですか?」
「はい。人は、そこまで精彩に、しかも、的確に、心の奥の奥まで光を差し伸べる事が出来るものなのだろうかと、私自身とても驚いているのです」
「それは、夏樹さんが雪子の・・・と、いう事でしょうか?」
「はい。夏樹様は、雪子様の感情の全てを拾い上げようとしておられる。そして、その思考回路は、恐ろしくもあり、羨ましくもある、夏樹様の最後の賭けなのかもしれません」
「最後の賭け・・・?」
「雪子様だけではなく、夏樹様も命がけなのでしょう」
「でも、どうして、そんな事を・・・?」
「次に会う時は、偽りの仮面を着けて会わないために。先程も、申し上げたように、もし、雪子様が夏樹様の心に疑心暗鬼を抱いているのだとしたら、そこには、真実の愛は存在しないのです」
「でも、それは、夏樹さんがきちんと説明をすれば、雪子だって、きっと、分かると思うんですけど」
「いえ、その逆で、夏樹様が説明をすればするほど、説得すればするほど、雪子様の心の疑心暗鬼は大きくなっていってしまうのではないでしょうか?」
「そんな・・・。それじゃ、いったい」
「夏樹様は、雪子様に伝えたいのかもしれません。愛は、テーブルに運ばれてくる、出来上がった料理ではないのだと。愛とは、完成した姿で、心の中に生まれてくるものではないのだと、そう、雪子様に伝えたいのではないでしょうか?」
マスターの言葉に裕子は、「夏樹さんならそういう思考回路もありかも?」と思いながら、
そこまで想われている雪子が少し羨ましく感じた。
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