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消えていく未来
消えていく未来・・・その3
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「誰も傷つかない終わらせ方・・・。雪子は、夏樹さんの写真を見た時に、それに気がついたのでしょうか?」
「いえ、違うと思います。その時に、雪子様が感じたのは、一つは、夏樹様の不安定な心模様、そして、もう一つが、夏樹様は雪子様を求めている。ではないかと思うのです」
「でも、それじゃ、雪子に会えたのなら夏樹さんの不安定な気持ちも落ち着いたのでは?」
「ですが、夏樹様とは別に、雪子様の方は、逆に、夏樹様に会いに行ったがゆえに、後戻りが出来なくなってしまったのではないでしょうか?」
「後戻りが出来なくなってしまった?それは、雪子の中にあった夏樹さんに対する感情が、ふたたび湧き上がってしまったという事なのでしょうか?」
「いえ、もし、そうだったなら、雪子様のその後の行動も今とは違っていたと思います」
「それじゃ、雪子は、いったい・・・」
「おそらく、雪子様に再会された夏樹様にとって、もはや、この世に思い残す何ものもなくなってしまった。それまでの夏樹様は、無気力な心のままで日々を過ごしていたのではないかと思うのです。これも推測ですが、夏樹様は、雪子様と別れてからの年月の中、心のどこかで、無意識の中で、雪子様を求める想いがずっとあったのではないでしょうか?」
「たぶん、私も、そうだと思います。それは夏樹さんに限らず、雪子の方も、夏樹さんに会いたいと思っていたと思います。とはいっても、私が、そんな雪子の想いを知ったのは、つい一年ほど前だったんですけど。でも、それなら、お互いの願いが叶ったのだから・・・」
「きっと、夏樹様は、ご自分の存在が、この先、必ず、雪子様を苦しめてしまう。そう、思われたのだと思います」
「それじゃ、まるで、雪子が夏樹さんに会いに行った事が、かえって夏樹さんを追い詰めるような結果になってしまったみたいで、雪子が・・・」
「はい、そうかもしれません」
「そんな・・・」
「雪子様が消息不明の今、私が、このような言い方をするのは少し不謹慎かもしれませんが、今の、雪子様の心は、穏やかな幸せを感じているのではないかと思えるのです」
「雪子が・・・」
「雪子様とは、雪子様がこの街に引っ越してきて、この喫茶店を見つけて頂いてからのお付き合いになりますから、もう、約30年近くになります。雪子様が、初めて、そこのドアから入ってきた時のお姿は、今でも、鮮明に覚えているんですよ。その日から、週に必ず一度か二度、この喫茶店に来られて、一番奥の席で、いつも、ミルクティをご注文なさりながら、好きな小説を読んでおられました」
「30年・・・もう、そんなになるんですね」
「時の経つのは早いもので、今では、私もすっかり白髪になってしまいました。その長い年月の間、ずっと、雪子様を見てきました。だからなのかもしれませんが、今の雪子様の気持ちが何となく分かるんです」
「う~ん・・・私には、相変わらず雪子の考えがよく分からないというか」
「それは、雪子様と、とても近い距離におられたからだと思います」
「でも、夏樹さんは、私よりも雪子とは近い距離だったと思うのですが、どうして私だけが分からないのでしょうか?」
「ははは・・・それは、友達と恋人では初めから見る視点が違いますし、お互いが求める物も友達のそれとはまるで違いますから」
「う~ん・・・ちょっと、悔しいような」
「そんな事はありません。今も、昔も、雪子様のお力になれるは裕子様だけなのですから。私などは、いくら雪子様のお気持ちが理解出来たとしても、何のお力にもなれないんです。ただ、遠くで見守ってあげるくらいしか出来ないのですから」
「そんな事はないですよ。今も、こうしてマスターには相談に乗って頂いているのですから。もし、マスターがいなかったら、私一人では、雪子の気持や想いとか何も分からないまま、ただ、迷子みたいになっていたと思うんです。なので、いつも、マスターには感謝しているんですよ」
「有難う御座います。そう言って頂けると、とても嬉しく思います」
「そう言えば、先程、マスターが言っていました夢の途中というのは?」
「その事ですが、何と説明したらいいのか。おそらくは、雪子様は、まだ、夏樹様と再会する前のままの世界にいるのではないかと」
「夏樹さんと再会する前?」
「はい、これも、推測になりますが、夏樹様と再会した後の現実と、再会する前の雪子様だけの空想の中の甘い世界、それが、夏樹様と再会した事によって、より強く空想の世界に入り込んでしまわれたのではないかと思います」
「いえ、違うと思います。その時に、雪子様が感じたのは、一つは、夏樹様の不安定な心模様、そして、もう一つが、夏樹様は雪子様を求めている。ではないかと思うのです」
「でも、それじゃ、雪子に会えたのなら夏樹さんの不安定な気持ちも落ち着いたのでは?」
「ですが、夏樹様とは別に、雪子様の方は、逆に、夏樹様に会いに行ったがゆえに、後戻りが出来なくなってしまったのではないでしょうか?」
「後戻りが出来なくなってしまった?それは、雪子の中にあった夏樹さんに対する感情が、ふたたび湧き上がってしまったという事なのでしょうか?」
「いえ、もし、そうだったなら、雪子様のその後の行動も今とは違っていたと思います」
「それじゃ、雪子は、いったい・・・」
「おそらく、雪子様に再会された夏樹様にとって、もはや、この世に思い残す何ものもなくなってしまった。それまでの夏樹様は、無気力な心のままで日々を過ごしていたのではないかと思うのです。これも推測ですが、夏樹様は、雪子様と別れてからの年月の中、心のどこかで、無意識の中で、雪子様を求める想いがずっとあったのではないでしょうか?」
「たぶん、私も、そうだと思います。それは夏樹さんに限らず、雪子の方も、夏樹さんに会いたいと思っていたと思います。とはいっても、私が、そんな雪子の想いを知ったのは、つい一年ほど前だったんですけど。でも、それなら、お互いの願いが叶ったのだから・・・」
「きっと、夏樹様は、ご自分の存在が、この先、必ず、雪子様を苦しめてしまう。そう、思われたのだと思います」
「それじゃ、まるで、雪子が夏樹さんに会いに行った事が、かえって夏樹さんを追い詰めるような結果になってしまったみたいで、雪子が・・・」
「はい、そうかもしれません」
「そんな・・・」
「雪子様が消息不明の今、私が、このような言い方をするのは少し不謹慎かもしれませんが、今の、雪子様の心は、穏やかな幸せを感じているのではないかと思えるのです」
「雪子が・・・」
「雪子様とは、雪子様がこの街に引っ越してきて、この喫茶店を見つけて頂いてからのお付き合いになりますから、もう、約30年近くになります。雪子様が、初めて、そこのドアから入ってきた時のお姿は、今でも、鮮明に覚えているんですよ。その日から、週に必ず一度か二度、この喫茶店に来られて、一番奥の席で、いつも、ミルクティをご注文なさりながら、好きな小説を読んでおられました」
「30年・・・もう、そんなになるんですね」
「時の経つのは早いもので、今では、私もすっかり白髪になってしまいました。その長い年月の間、ずっと、雪子様を見てきました。だからなのかもしれませんが、今の雪子様の気持ちが何となく分かるんです」
「う~ん・・・私には、相変わらず雪子の考えがよく分からないというか」
「それは、雪子様と、とても近い距離におられたからだと思います」
「でも、夏樹さんは、私よりも雪子とは近い距離だったと思うのですが、どうして私だけが分からないのでしょうか?」
「ははは・・・それは、友達と恋人では初めから見る視点が違いますし、お互いが求める物も友達のそれとはまるで違いますから」
「う~ん・・・ちょっと、悔しいような」
「そんな事はありません。今も、昔も、雪子様のお力になれるは裕子様だけなのですから。私などは、いくら雪子様のお気持ちが理解出来たとしても、何のお力にもなれないんです。ただ、遠くで見守ってあげるくらいしか出来ないのですから」
「そんな事はないですよ。今も、こうしてマスターには相談に乗って頂いているのですから。もし、マスターがいなかったら、私一人では、雪子の気持や想いとか何も分からないまま、ただ、迷子みたいになっていたと思うんです。なので、いつも、マスターには感謝しているんですよ」
「有難う御座います。そう言って頂けると、とても嬉しく思います」
「そう言えば、先程、マスターが言っていました夢の途中というのは?」
「その事ですが、何と説明したらいいのか。おそらくは、雪子様は、まだ、夏樹様と再会する前のままの世界にいるのではないかと」
「夏樹さんと再会する前?」
「はい、これも、推測になりますが、夏樹様と再会した後の現実と、再会する前の雪子様だけの空想の中の甘い世界、それが、夏樹様と再会した事によって、より強く空想の世界に入り込んでしまわれたのではないかと思います」
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