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消えていく未来
消えていく未来・・・その1
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「でも、お母さんは、そんな夏樹さんの気持ちが分かってるでしょうか?」
「どうして?」
「だって、夏樹さんのその想いを、お母さんに知らせてくれる人は誰もいないんですよ。せめて、裕子さんとだけでも連絡を取っていれば、とは思うんですけど、それもないみたいですし」
「それが、命の天秤なの」
「でも・・・」
「命の天秤には種あかしは存在しないの、それに、きっと、今の雪子には、あたし以外には誰も存在していないはずよ」
「・・・」
「命の天秤に自分の命を乗せたとしても、もう片方の天秤に乗るはずの命を持ってる人が、それに気がつかなければ、それは、ただの一人芝居になってしまうの、だから命の天秤。でもさあ、雪子の選んだ相手がほんとあたしでよかったわよね、そう思わない愛奈ちゃん?」
「んもう~すぐにそうやって・・・でも、今日、夏樹さんとお話が出来て少し気持ちが楽になりました」
「愛奈ちゃん?」
「はい?」
「誰かを好きになる時は、あたしみたいな人を好きになっちゃダメよ、雪子みたいになっちゃうから」
「いえ、私は、好きになるなら夏樹さんみたいな人をって・・・正直言ってお母さんが羨ましいです」
「おバカな事は言わないの、少し長電話になっちゃったわね。今度、また会いに来なさい」
「はい!」
「明日でも、いつでもいいから。それから、何か困った事があっても、すぐにあたしに連絡をしてね」
「はい!」
夏樹の、雪子の事は心配しなくても大丈夫よという言葉を聞いて、愛奈は通話を終えた。
スマホをバッグの中にしまうと、フロントガラス越しに見える景色を愛奈はぼんやりと見つめていた。
愛奈は、車の運転が苦手な雪子とは正反対で、高校を卒業と同時に自動車免許を取得すると、
雪子に頼み込んで自動車ローンの保証人になってもらい、中古の可愛い軽自動車を購入。
よほど車の運転が好きらしく、
会社が休みの日は、朝からドライブをするのが愛奈の休日の恒例の過ごし方になるほどである。
愛奈が夏樹と会話を終えた頃、裕子は、マスターから、夏樹が愛奈に何度も自分を恨むようにと言った言葉の、もう一つの意味を聞かされていた。
「雪子様は、自分が生まれてきた意味を知ったのに、なぜ?と、裕子様は疑問に思われたんですよね?」
「はい、普通なら、そのまま夏樹さんの胸に飛び込めばいいだけの話のように思うんですけど」
「その答えは、今の、私です」
「マスター・・・ですか?」
「はい、私は、まだ生きています。命の天秤は選ばれた側の人間には有無も言わせない。だから、私は今も生きているんです」
「それじゃ、雪子は、やっぱり・・・」
「それゆえに、夏樹様は、恨むなら自分をと、愛奈様に言われたのだと思います・・・ですが」
「・・・?」
「先程、裕子様は、冴ちゃんという娘さんは、雪子様にとっても天使かもしれないと、夏樹様が言っておられたと?」
「はい、確かに・・・。たぶん、雪子は、冴ちゃんには会っていないとは思うのですが、おそらくメールか電話で冴ちゃんの事を知ったのかな?と思いましたけど」
「もしかしたら、冴ちゃんという娘さんを雪子様が・・・。まあ、それは、まだ先の話としましても、きっと、冴ちゃんという娘さんの存在が、雪子様に、何かしらの影響を及ぼし始めているのかもしれません」
「えっ・・・?あの、それは?」
「まだ見ぬ未来・・・。そして、木漏れ日を暖めようとする微かな光を、雪子様に与えてくれるのかもしれません」
「まだ見ぬ未来・・・ですか?」
「夏樹様が、雪子様の行方を気にしていないというか、雪子様をお捜ししているという話を、裕子様からお聞きしませんでしたが・・・」
「そうなんです。そこも、私にはよく分からないんですよね。夏樹さんは、雪子がいつ会いに来るのかは分かっていても、その雪子が、どこに現れるのかが分からないとかって変な事を言っているんですよ」
「ははは・・・夏樹様は、面白い人ですね。でも、もしかしたら、まだ、私にも裕子様にも知らない雪子様の何かを、夏樹様は知っておられるんじゃないでしょうか?」
「私もマスターも知らない雪子の・・・それじゃ、雪子は、まだ何かを隠しているのでしょうか?」
「どうして?」
「だって、夏樹さんのその想いを、お母さんに知らせてくれる人は誰もいないんですよ。せめて、裕子さんとだけでも連絡を取っていれば、とは思うんですけど、それもないみたいですし」
「それが、命の天秤なの」
「でも・・・」
「命の天秤には種あかしは存在しないの、それに、きっと、今の雪子には、あたし以外には誰も存在していないはずよ」
「・・・」
「命の天秤に自分の命を乗せたとしても、もう片方の天秤に乗るはずの命を持ってる人が、それに気がつかなければ、それは、ただの一人芝居になってしまうの、だから命の天秤。でもさあ、雪子の選んだ相手がほんとあたしでよかったわよね、そう思わない愛奈ちゃん?」
「んもう~すぐにそうやって・・・でも、今日、夏樹さんとお話が出来て少し気持ちが楽になりました」
「愛奈ちゃん?」
「はい?」
「誰かを好きになる時は、あたしみたいな人を好きになっちゃダメよ、雪子みたいになっちゃうから」
「いえ、私は、好きになるなら夏樹さんみたいな人をって・・・正直言ってお母さんが羨ましいです」
「おバカな事は言わないの、少し長電話になっちゃったわね。今度、また会いに来なさい」
「はい!」
「明日でも、いつでもいいから。それから、何か困った事があっても、すぐにあたしに連絡をしてね」
「はい!」
夏樹の、雪子の事は心配しなくても大丈夫よという言葉を聞いて、愛奈は通話を終えた。
スマホをバッグの中にしまうと、フロントガラス越しに見える景色を愛奈はぼんやりと見つめていた。
愛奈は、車の運転が苦手な雪子とは正反対で、高校を卒業と同時に自動車免許を取得すると、
雪子に頼み込んで自動車ローンの保証人になってもらい、中古の可愛い軽自動車を購入。
よほど車の運転が好きらしく、
会社が休みの日は、朝からドライブをするのが愛奈の休日の恒例の過ごし方になるほどである。
愛奈が夏樹と会話を終えた頃、裕子は、マスターから、夏樹が愛奈に何度も自分を恨むようにと言った言葉の、もう一つの意味を聞かされていた。
「雪子様は、自分が生まれてきた意味を知ったのに、なぜ?と、裕子様は疑問に思われたんですよね?」
「はい、普通なら、そのまま夏樹さんの胸に飛び込めばいいだけの話のように思うんですけど」
「その答えは、今の、私です」
「マスター・・・ですか?」
「はい、私は、まだ生きています。命の天秤は選ばれた側の人間には有無も言わせない。だから、私は今も生きているんです」
「それじゃ、雪子は、やっぱり・・・」
「それゆえに、夏樹様は、恨むなら自分をと、愛奈様に言われたのだと思います・・・ですが」
「・・・?」
「先程、裕子様は、冴ちゃんという娘さんは、雪子様にとっても天使かもしれないと、夏樹様が言っておられたと?」
「はい、確かに・・・。たぶん、雪子は、冴ちゃんには会っていないとは思うのですが、おそらくメールか電話で冴ちゃんの事を知ったのかな?と思いましたけど」
「もしかしたら、冴ちゃんという娘さんを雪子様が・・・。まあ、それは、まだ先の話としましても、きっと、冴ちゃんという娘さんの存在が、雪子様に、何かしらの影響を及ぼし始めているのかもしれません」
「えっ・・・?あの、それは?」
「まだ見ぬ未来・・・。そして、木漏れ日を暖めようとする微かな光を、雪子様に与えてくれるのかもしれません」
「まだ見ぬ未来・・・ですか?」
「夏樹様が、雪子様の行方を気にしていないというか、雪子様をお捜ししているという話を、裕子様からお聞きしませんでしたが・・・」
「そうなんです。そこも、私にはよく分からないんですよね。夏樹さんは、雪子がいつ会いに来るのかは分かっていても、その雪子が、どこに現れるのかが分からないとかって変な事を言っているんですよ」
「ははは・・・夏樹様は、面白い人ですね。でも、もしかしたら、まだ、私にも裕子様にも知らない雪子様の何かを、夏樹様は知っておられるんじゃないでしょうか?」
「私もマスターも知らない雪子の・・・それじゃ、雪子は、まだ何かを隠しているのでしょうか?」
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