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霞んでいく記憶

霞んでいく記憶・・・その7

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12月も10日を過ぎて、そろそろ、大晦日へのカウントダウンが始まろうとしている。
窓の外から見える12月の季節は、雪もなく、冷たい風だけが遊び相手の雪を探しているみたいである。

直美は、省吾からの連絡で、何か相談があるらしく、
いつもの病院近くのレストランで待ち合わせをしていた。

でも、まさか、あの京子が事故るなんて、ちょっと信じられないわ?
まあ、それでも、人身事故とか、どっかのお店に突っ込んだとかじゃなかったのは不幸中の幸いかもね。

自爆っていえば自爆なんだろうけど、しかし、普通、あんな場所で事故るかな?
本人は、助手席の足元に落ちたバッグを取ろうとしたって言ってたけど、
そのまま、大きな木に正面衝突しちゃうなんて、まるでマンガみたいな事故だし。

しっかし、あの、京子がね~。
いくら、自宅から国道まで出る細い道だからとしても、シートベルトをしないままって。
とはいえ、もし、シートベルトをしていたらバッグは拾えなかったんだろうけど。
本人は、うっかりしてた、な~んて言ってたけど・・・でもね~、京子らしくないわ。

まあ、今回は、腕の骨折だけで、あとは、打ち身程度だったからよかったものの。
もし、あれが国道とかで対向車とか、歩行者とかにぶつかってたらって思うと、ちょっと怖いわ。

でも、2週間くらいの入院っだって言ってたから、なんとか年内中には退院出来るのかな?
それに、京子も元気そうだったし、まあ、一安心かな・・・なんか、変な一安心だけど。

ミルクティーに口につけながら、外の景色を眺めていると省吾がやってきたようである。
直美に軽く挨拶をしてから、着ていたコートをたたんで席に着いた隣の椅子に置いた。

「省吾君、今日はバイトは?」

「今日は、午後から早退してきました」

「そう・・・でも、何かと大変じゃない?ご飯とか、お洗濯とかって?」

「ええ、まあ、ちょっと・・・」

「それで、夕飯とかはどうしているの?自分たちで作ってるの?」

「コンビニで買ったりって感じです」

「そうなんだ。まあ、順調に回復していれば、年内中には退院出来ると思うから、もう少しの辛抱ね」

「ええ・・・まあ・・・」

「それで、私に話っていうのは?」

「はあ・・・実は、今回、ちょっと考えてしまったっていうか」

「考えてしまったって、なに?お母さんの事?」

「ええ、まあ・・・僕も兄さんもバイトっていうか、まあ、どこかに勤めていても同じなんだと思うんですけど・・・」

「自由が利かないって事?」

「ええ、まあ、そんなとこです・・・」

「でも、それは仕方がないんじゃないの?どこの家庭だって同じようなもんよ」

「まあ、それはそうなんですけど、何か自分で商売っていっても先立つものもないし」

「自分で商売って、省吾君は何かやってみたい商売とかってあるの?」

「はあ・・・まあ、ちょっとは」

「ふ~ん、あるんだ・・・で、どんな商売をしてみたいの?」

「商売っていうか、ネット販売みたいな感じなんですけど」

「ネットって?インターネット?」

「まあ・・・そんな感じ、とはいっても、そこから始めていきたいって感じで」

「ふ~ん・・・で、何を売るの?」

「とりあえずは自動車のパーツかな?」

「かな?って、なんか頼りないわね」

「はあ・・・実は、前に父さんが少しやっていたのを見てた事があって、それで、僕もなんというか興味があったっていうか・・・」

「ネット販売に?」

「いえ、自動車の方にですけど・・・でも、修理屋とかは、なんか許可とか難しいみたいだし、中古車販売はお金がかかるみたいだし」

「自動車のパーツとかはお金はかからないの?」

「まあ、最初は趣味みたいな感じからで、廃車の車を買ってきて、それをばらしてみたいな」

「ふ~ん・・・なんか難しい事は分からないけど・・・って、夏樹さんってパーツ販売とかってやってたの?」

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