愛して欲しいと言えたなら

zonbitan

文字の大きさ
上 下
296 / 386
伝わらない想い

伝わらない想い・・・その16

しおりを挟む
「あやつが選んだ行為はね、少なくても一人の人間の人生を台無しにしていまうような行為なの」

「お父さん・・・?」

「そうよ・・・。だからね、決して許されるような行為じゃないの」

「でも、その事は、お父さんも薄々は分かっていたみたいです」

「うすうす・・・ちょっと、懐かしいわね」

すると、夏樹の、その言葉に裕子がクスッと笑った。
でも、愛奈には裕子の笑いが理解出来ないらしく、二人を交互に見ながら(?)の瞳である。

「自分が、誰かの代わりかもしれないって?」

「どうして分かるんですか?」

ところが、夏樹の言葉に、裕子は、また、クスッと笑ってしまう。

「ちょっと、裕子?」

「だって、何もなかったみたいに真面目に話すんですもの」

(?)(?)・・・愛奈の瞳に、またまた(?)が点灯したらしく、
キョトンとした顔で、夏樹の方を見つめている。

「あら?愛奈ちゃんって意外と奥手なのね?」

「えっ・・・?」

「愛奈ちゃんは、いくつになったの?」

「今年、20歳になりました」

「そう・・・。ほんと!あやつに似なくて良かったわ。もし、そこまであやつに似てたら、あたしとしては思いっきりショックだったかもね」

「・・・?どうして夏樹さんがショック?というか、いったい何のお話なんですか?」

「何、言ってるのよ。んなの、どこの父親だって最上級の落ち込みの嵐に見舞われちゃうわよ!」

「えっ・・・?」

「あはは・・・!まあ、それはあとで裕子に訊いてみるといいわ」

「はあ・・・」

「ほら?あの子が、みかんちゃん」

そう言うと、夏樹は、窓のところの台の上に、外を見ているようにウサギのぬいぐるみと並んで座っている白いクマのぬいぐるみを見ながら愛奈に教えた。

「えっ・・・?」

さっきもそうだったのだが、何度も同じような事が起きるので、愛奈は真面目に驚いていた。

「いつもの事だから、そんなに真面目に驚かなくてもいいわよ」

「でも・・・だって、今さっきまでピョンちゃんは夏樹さんの腕に」

「あそこの白いクマがみかんちゃん。さっきのクマの妹なのよ」

「妹・・・ですか?」

「まあね、最初の頃のピョンちゃんは、なかなか心を開かなくてね」

「はあ・・・」

「みかんちゃんってね、とっても優しい子でね、気がつくと、いつもピョンちゃんに寄り添ってるの。きっと、ピョンちゃんが寂しくならないように。なのかもしれないわね」

「そう・・・なの・・・ですか?」

「でもね、最初に、そんなピョンちゃんの心を開いたのが、さっきのクマなのよ・・・意外でしょ?」

「さっきのって、お庭にいる?」

「そうなのよ!あのクマって、おバカなんだけど、そういう不思議なところがあるのよね」

「はあ・・・」

知らない人が聞いたら、どこか頭がおかしいのでは?と思うような事を、
当たり前のように話す夏樹を、愛奈が、普通に受け入れている。
といえば、それは、正直言って無理があるのは明白なのでもあるのだが・・・。

それでも、優しい表情で、ぬいぐるみの様子を話す夏樹の言葉を聞いているうちに、
もし夏樹が言ってるように、本当に、ここのぬいぐるみたちが動いているのなら、
どんなに素敵な世界なのだろう・・・そんな風に愛奈は思っていた。

「愛奈ちゃん、この先、きっと、いつか愛奈ちゃんがあやつを恨む時が来ると思うの。その時は、あやつではなくあたしを恨むのよ・・・忘れないでね!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...