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伝わらない想い
伝わらない想い・・・その11
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そんな愛奈の視線に、少し、意地悪な瞳で笑みを浮かべる夏樹。
「今日はピンクよ!サイドは紐だけど」
「えっ・・・?」
「ほら?早く、おいで!」
「あっ、はい!」
あっけらかんと教えてくれる夏樹の笑顔に、初めて、笑顔で答える愛奈。
アトリエに入ると、お庭で、クマのぬいぐるみと一緒にプリンを食べようと、
冴子が、カウンターの奥の方にある冷蔵庫の中に、可愛いお顔を入れている姿が見える。
これが・・・夏樹さん。
今、私の目の前にいるこの人が、お母さんが愛した夏樹さん。
ううん、お母さんが、今も、ずっと愛し続けている、この世でただ一人の人。
アトリエに入った愛奈は、先程とは違う景色を見ているようだった。
アトリエの中に夏樹がいるだけで、こんなにも、感じる景色が変わってしまうものなのかと少し驚いていた。
まるで、このアトリエで暮らしているかのように飾られている、沢山のぬいぐるみたち。
そして、何の違和感もなく、その空間に溶け込むように映る夏樹の姿に、愛奈は・・・えっ?
いや・・・えっ?
じゃなくて・・・あの、さっき冴ちゃんが夏樹さんの事を、おじ様って?
だから・・・あの・・・おじ様って事は、もしかして・・・いえ、もしかしなくても・・・まじ?
で・・・あの・・・ピンクって?んでもって、サイドが紐って・・・えええ===っ?
「あら?女性の方がよかったかしら?」
「えっ?」・・・というか、何で分かったんですか?
愛奈は、夏樹に自分が考えてた事を言い当てられて驚いていた。
「んなの、愛奈ちゃんの視線の先で分かっちゃうわよ」
夏樹の言葉に、愛奈は、自分の視線が夏樹のスカートに向けられていた事に気がついて、
思わず赤くなってしまった。
次の言葉が見つからない愛奈に、助け舟を出すように裕子が夏樹に話しかけた。
「まだ、雪子から連絡とかはないの?」
「してこないわよ!きっと。あやつは、悪戯子猫だからね」
「まったく、もう~。雪子ったら」
「あんたが気に病んでどうすんのよ?」
「そんな事を言ったって、せめて、いつ頃、そっち行くからみたいな連絡くらいはあってもいいと思うんだけど」
「だから、悪戯子猫なのよ」
「そういえば夏樹さん?この前、言ってたけど、雪子がいつ来るとかって分かるの?」
「いつ来るかは分かるんだけど、問題は、その場所の方なのよね?」
「場所って・・・ここじゃないの?」
「あやつは昔から(なぞかけ)が、好きなのよね~。やだわん」
「やだわんって、もう~。それよりも、雪子ったら、悪戯子猫をやってる場合じゃないでしょ?突然、離婚届を残して逃亡しちゃったのよ!」
「だからこそなのよ」
「だからこそって、どういう意味なの?」
「裕子ってさ、ほんと、昔っから、そういうとこ可愛いわよね」
「えっ?いえ、あの、そう?」
「あははっ!そんな風に、急に照れちゃうとこなんかも、昔と同じ変わってないし」
「また、そんな・・・」
「ねぇ、裕子。コーヒーを作ってきてくれるかしら?」
「あっ、はい。そういえば、おばあちゃんはどこにいったのかしら?」
「お庭の長椅子で、冴ちゃんたちを見てるわよ」
「そうなの?でも、寒くないかしら?」
「そうね、それじゃ、そこにある薄茶のブランケットを届けてくれる?」
「それと、暖かいお茶か何かも一緒に届けるわね」
「コーヒーがいいわ、おばあちゃんコーヒーが好きだから」
「ええ、了解!」
「愛奈ちゃん、こっちにおいで」
入口のところで、夏樹と裕子の会話を不思議そうに聞いていた愛奈を、
窓際のテーブルの方へ呼んだ。
愛奈は、夏樹と窓際のテーブルに向かい合わせに座ると、照れくさそうな仕草を隠しながら、
椅子に座ってるウサギのぬいぐるみを手に取って膝の上に乗せてみる。
「その子は、ピョンちゃんっていうのよ」
「ピョンちゃん?初めまして愛奈です」
愛奈は、膝の上に乗せたウサギのぬいぐるみに優しく挨拶をした。
「あの・・・ひとつ訊いてもいいでしょうか?」
「何かしら?」
「こんな事を訊くのは、ちょっと変かもしれないんですけど」
「いいわよ。言ってみて?」
「あっ、はい。あの、私の愛奈っていう名前の由来なんですけど、何か、知っているかなって?」
「訊きたい?」・・・
夏樹は、あえて、(あたしに、その疑問を問いかけてみたいの?)と、聞き返した。
夏樹さん?・・・
夏樹の言葉に、カウンターでコーヒーを作っていた裕子の手が止まった。
「今日はピンクよ!サイドは紐だけど」
「えっ・・・?」
「ほら?早く、おいで!」
「あっ、はい!」
あっけらかんと教えてくれる夏樹の笑顔に、初めて、笑顔で答える愛奈。
アトリエに入ると、お庭で、クマのぬいぐるみと一緒にプリンを食べようと、
冴子が、カウンターの奥の方にある冷蔵庫の中に、可愛いお顔を入れている姿が見える。
これが・・・夏樹さん。
今、私の目の前にいるこの人が、お母さんが愛した夏樹さん。
ううん、お母さんが、今も、ずっと愛し続けている、この世でただ一人の人。
アトリエに入った愛奈は、先程とは違う景色を見ているようだった。
アトリエの中に夏樹がいるだけで、こんなにも、感じる景色が変わってしまうものなのかと少し驚いていた。
まるで、このアトリエで暮らしているかのように飾られている、沢山のぬいぐるみたち。
そして、何の違和感もなく、その空間に溶け込むように映る夏樹の姿に、愛奈は・・・えっ?
いや・・・えっ?
じゃなくて・・・あの、さっき冴ちゃんが夏樹さんの事を、おじ様って?
だから・・・あの・・・おじ様って事は、もしかして・・・いえ、もしかしなくても・・・まじ?
で・・・あの・・・ピンクって?んでもって、サイドが紐って・・・えええ===っ?
「あら?女性の方がよかったかしら?」
「えっ?」・・・というか、何で分かったんですか?
愛奈は、夏樹に自分が考えてた事を言い当てられて驚いていた。
「んなの、愛奈ちゃんの視線の先で分かっちゃうわよ」
夏樹の言葉に、愛奈は、自分の視線が夏樹のスカートに向けられていた事に気がついて、
思わず赤くなってしまった。
次の言葉が見つからない愛奈に、助け舟を出すように裕子が夏樹に話しかけた。
「まだ、雪子から連絡とかはないの?」
「してこないわよ!きっと。あやつは、悪戯子猫だからね」
「まったく、もう~。雪子ったら」
「あんたが気に病んでどうすんのよ?」
「そんな事を言ったって、せめて、いつ頃、そっち行くからみたいな連絡くらいはあってもいいと思うんだけど」
「だから、悪戯子猫なのよ」
「そういえば夏樹さん?この前、言ってたけど、雪子がいつ来るとかって分かるの?」
「いつ来るかは分かるんだけど、問題は、その場所の方なのよね?」
「場所って・・・ここじゃないの?」
「あやつは昔から(なぞかけ)が、好きなのよね~。やだわん」
「やだわんって、もう~。それよりも、雪子ったら、悪戯子猫をやってる場合じゃないでしょ?突然、離婚届を残して逃亡しちゃったのよ!」
「だからこそなのよ」
「だからこそって、どういう意味なの?」
「裕子ってさ、ほんと、昔っから、そういうとこ可愛いわよね」
「えっ?いえ、あの、そう?」
「あははっ!そんな風に、急に照れちゃうとこなんかも、昔と同じ変わってないし」
「また、そんな・・・」
「ねぇ、裕子。コーヒーを作ってきてくれるかしら?」
「あっ、はい。そういえば、おばあちゃんはどこにいったのかしら?」
「お庭の長椅子で、冴ちゃんたちを見てるわよ」
「そうなの?でも、寒くないかしら?」
「そうね、それじゃ、そこにある薄茶のブランケットを届けてくれる?」
「それと、暖かいお茶か何かも一緒に届けるわね」
「コーヒーがいいわ、おばあちゃんコーヒーが好きだから」
「ええ、了解!」
「愛奈ちゃん、こっちにおいで」
入口のところで、夏樹と裕子の会話を不思議そうに聞いていた愛奈を、
窓際のテーブルの方へ呼んだ。
愛奈は、夏樹と窓際のテーブルに向かい合わせに座ると、照れくさそうな仕草を隠しながら、
椅子に座ってるウサギのぬいぐるみを手に取って膝の上に乗せてみる。
「その子は、ピョンちゃんっていうのよ」
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「あの・・・ひとつ訊いてもいいでしょうか?」
「何かしら?」
「こんな事を訊くのは、ちょっと変かもしれないんですけど」
「いいわよ。言ってみて?」
「あっ、はい。あの、私の愛奈っていう名前の由来なんですけど、何か、知っているかなって?」
「訊きたい?」・・・
夏樹は、あえて、(あたしに、その疑問を問いかけてみたいの?)と、聞き返した。
夏樹さん?・・・
夏樹の言葉に、カウンターでコーヒーを作っていた裕子の手が止まった。
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