愛して欲しいと言えたなら

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伝わらない想い

伝わらない想い・・・その5

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私も、好きって・・・。直美?

「私ね、今は、いつでも、夏樹さんに電話が出来るのよ。いつでも、私の好きな時に夏樹さんの声が聴けるの。昨日も、二回も夏樹さんと電話でお話をしたの・・・羨ましい?」

「別に・・・」

「少しは、焼きもちを焼いた?」

「好きにすればいいでしょ?」

「どうして、焼きもちを焼かないの?どうして、羨ましいって思わないの?」

「どうして、私が、焼きもちを焼かなきゃいけないのよ」

「その程度だったんだ。京子が、夏樹さんを想う気持ちって?」

「別に、離婚したんだし、今更、関係ないでしょ?それに・・・」

「それに、な~に?京子が、夏樹さんの事を、いつまでもネチネチ想っていたら、夏樹さんに迷惑だろうって?」

「その方が、あの人には、いいんじゃないの?」

「ふ~ん・・・」

「何よ・・・?」

「京子、初めて言ったわね。夏樹さんを気遣う言葉・・・。ふ~ん、なるほどね」

「何が、なるほどよ?」

「夏樹さんって、京子の、そういうところが好きだったのかなって、ちょっと思ったの?」

「何、それ・・・?」

「なるほど、なるほど・・・」

「ちょっと、直美、勘違いしないでよね」

「でも、京子?いいの?このまま、夏樹さんに会わないままの終わりで、本当にいいの?」

「もう、とっくに終わってるんだから、別にいいわよ」

「そっか・・・うん、わかった、それなら、もう、何も言わないわ」

そう言った直美が、少しは寂しそうな顔をするかな?と、思った京子だったが。

「お腹減ったわね、何か食べようよ」と、
急に、いつもの直美に戻って、テーブルの上にあるメニュー表を覗き込んでいた。

「やっと、いつもの直美に戻ったみたいね。でも、直美?省吾と、どんな話をしてたの?」

「どんなって、省吾君は、何も言っていなかったの?」

「さっきも言ったけど、何も言わないのよ。省吾だけじゃないわ、亜晃もなのよ」

「二人とも、京子が嫌がるような話は、したくないんじゃないかな?」

「私って、そんなに嫌な顔とかしてるのかしら?」

「きっと、あの子たちなりに気を使ってるのよ」

「そんなの、別に気を使ってもらわなくてもいいわよ」

「でもさ、亜晃君や、省吾君に、浮いた話とかってないの?」

「浮いた話?」

「誰か、付き合ってる彼女とか・・・」

「さあね、そういうのは、どっちも言わないから」

「でも、時々、連れてきたりとかってしているんでしょ?」

「連れてくるって、彼女とか?」

「そうそう・・・」

「全然・・・いったい、誰に似たのか」

「誰にって、夏樹さんも、そうだったの?」

「それが、まったく逆・・・。あの人は、とっかえひっかえみたいだったらしいから」

「とっかえひっかえって、京子は、知ってたの?」

「知らないけど、そういう話をよく聞いてたから。それに、知らない女性を車に乗せて走ってるのとかって、よく見かけたりしてたし」

「やっぱ、夏樹さんって、モテてたのね!」

「だから、大変だったのよ。あの人と付き合っていた頃なんて、街とかで、一緒に買い物とかしてると、見てる女性がいるのよ」

「見てるって、夏樹さんを?」

「そうなの。しかも、じーっとって感じで。だから、この女性とも?あの女性とも?って、その度に思ってたわよ!」

「うわ~っ!そんなにいたの?」

「知らないけど、いたんじゃないの?」

「おぬしも、悪よの~を、地で行ってたような人だったのね。京子が言ってた口が上手いって、まんざら嘘でもないみたい」

「だから言ったでしょ、あの人は、口が上手いんだからって」

「私も、引っ掛かってみたいな~、夏樹さんの、蜘蛛の糸に」

「なに、バカな事を言ってるのよ」

「あはは!冗談よ、冗談。ささ、食べよう、食べよう!」

運ばれてきた料理を、美味しそうに食べ始める直美を、
少し困った笑顔で見つめながら、京子も、お箸に手を付ける。
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