283 / 386
伝わらない想い
伝わらない想い・・・その3
しおりを挟む
「早いわね~。今年も、もうすぐ終わっちゃうんだものね!」
窓の外を眺めながら呟く直美の姿が、京子には、何か、懐かしい風景のように思えた。
どこか寂しく感じるそれは、離婚を考えた時でも、離婚を決めた時でもない。
そして、悲しい事に、離婚をした後の自分自身の姿でもなかった。
京子が直美に見た姿は、忘れかけていたあの頃の、甘く切ない時間の中に生きていた自分自身。
夏樹との結婚を、あきらめなければならないのかもしれないと感じ始めていたあの頃。
そして、そんな自分の気持ちなど知らない夏樹には届かない、自分の中の気持ちを慰めていたあの夜。
やっぱり・・・もしかして、直美?
「京子・・・?」
「えっ・・・?なに・・・?」
「どうしたの?ビックリしたような声なんか出しちゃって!」
「あっ、いえ、別に、何でもないわよ」
「ふふっ・・・変な京子なんだ」
「そんな事よりも、直美は、本当に、あれから、あの人には会ってないの?」
「会ってないんだな~これが・・・というか、会う理由もなかったりして」
「そうなの・・・」
ミルクティーが少し残っているカップの中でスプーンを遊ばせながら
「もう、そんなに時間は残ってないよ。京子?」
「時間って?何の時間?」
「もうすぐ夏樹さんは、永遠に京子の手の届かない人になっちゃうんだよ?」
「別に・・・というか、それって、どういう意味よ?」
直美は、カップの中で遊ばせていたスプーンを取り出して、お皿の上にそっと置く。
「昨日ね、雪子さんに会ったの・・・。もちろん、偶然にだけど」
「ふ~ん・・・」
「素っ気なくしなくてもいいわよ。そんなの今更でしょ?」
「別に、そんなつもりじゃないけど」
「それでね、これがまた、少しだけお話も出来たの!」
「話って、雪子さんと?」
「そうよ・・・。でも、反則よね~、雪子さんの、あの可愛さは!とても、とても、私よりも年上だなんで思えないんだもの。やっぱ、反則よ!」
「そう・・・」
「とは言ってもね、私が、一方的にって感じだっだけど」
「こっちに帰って来てたのね」
「違うと思う・・・。雪子さんと会ったのは、夏樹さんが前に住んでいた家の近くの郵便局の前だったの」
「あの人が住んでいた家って・・・それじゃ、雪子さんはあの人に会いに来たの?」
「違うと思うよ。だって、雪子さんが夏樹さんの引っ越し先を知らないはずないと思うし」
「やっぱりね・・・」
「やっぱり?雪子さんと夏樹さんは付き合っていたって?それはないと思うわよ」
「どうだか・・・」
「どうだか・・・は、当たってると思うけど・・・」
「ほらね・・・」
「ほらね・・・は、どうでもいいけど。そう遠くないと思うの。夏樹さんと雪子さんがもう一度ってなるのって。もし、そうなったら、京子は、夏樹さんとは永遠に会えなくなってしまうのよ」
「別に、いいんじゃないの?それに、どうして、私が、あの人に会わなきゃいけないわけ?」
「本当はね、雪子さんに会った事を、京子には言わないでおこうって思ってたの。京子だって、雪子さんの事を聞けば良い気はしないだろうし・・・。でもね、京子と夏樹さんは他人じゃないの。たとへ離婚したとしても、決して、他人にはなれないの、結婚する前の二人には戻れないのよ」
「何、言ってるのよ、そんなわけないでしょ?」
「法律上は他人かもしれないけど、それじゃ、京子の心の中は?他人か他人じゃないかは、一枚の紙切れが決めるんじゃないと思うの」
「何、訳の分からない事を言ってるのよ!」
「京子だって分かってるでしょ?それなのに、どうして夏樹さんを苦しめるの?」
「何・・・?何の事?」
「京子は、どうして自分が愛した人を苦しめるの?」
「だから、何の事を言ってるのよ」
「京子は、どうして京子が愛した夏樹さんを、そんなにも苦しめる事が出来るの?」
「ちょっと、直美?」
「京子が、あれほど愛していた夏樹さんを、どうして許してあげられないの?」
窓の外を眺めながら呟く直美の姿が、京子には、何か、懐かしい風景のように思えた。
どこか寂しく感じるそれは、離婚を考えた時でも、離婚を決めた時でもない。
そして、悲しい事に、離婚をした後の自分自身の姿でもなかった。
京子が直美に見た姿は、忘れかけていたあの頃の、甘く切ない時間の中に生きていた自分自身。
夏樹との結婚を、あきらめなければならないのかもしれないと感じ始めていたあの頃。
そして、そんな自分の気持ちなど知らない夏樹には届かない、自分の中の気持ちを慰めていたあの夜。
やっぱり・・・もしかして、直美?
「京子・・・?」
「えっ・・・?なに・・・?」
「どうしたの?ビックリしたような声なんか出しちゃって!」
「あっ、いえ、別に、何でもないわよ」
「ふふっ・・・変な京子なんだ」
「そんな事よりも、直美は、本当に、あれから、あの人には会ってないの?」
「会ってないんだな~これが・・・というか、会う理由もなかったりして」
「そうなの・・・」
ミルクティーが少し残っているカップの中でスプーンを遊ばせながら
「もう、そんなに時間は残ってないよ。京子?」
「時間って?何の時間?」
「もうすぐ夏樹さんは、永遠に京子の手の届かない人になっちゃうんだよ?」
「別に・・・というか、それって、どういう意味よ?」
直美は、カップの中で遊ばせていたスプーンを取り出して、お皿の上にそっと置く。
「昨日ね、雪子さんに会ったの・・・。もちろん、偶然にだけど」
「ふ~ん・・・」
「素っ気なくしなくてもいいわよ。そんなの今更でしょ?」
「別に、そんなつもりじゃないけど」
「それでね、これがまた、少しだけお話も出来たの!」
「話って、雪子さんと?」
「そうよ・・・。でも、反則よね~、雪子さんの、あの可愛さは!とても、とても、私よりも年上だなんで思えないんだもの。やっぱ、反則よ!」
「そう・・・」
「とは言ってもね、私が、一方的にって感じだっだけど」
「こっちに帰って来てたのね」
「違うと思う・・・。雪子さんと会ったのは、夏樹さんが前に住んでいた家の近くの郵便局の前だったの」
「あの人が住んでいた家って・・・それじゃ、雪子さんはあの人に会いに来たの?」
「違うと思うよ。だって、雪子さんが夏樹さんの引っ越し先を知らないはずないと思うし」
「やっぱりね・・・」
「やっぱり?雪子さんと夏樹さんは付き合っていたって?それはないと思うわよ」
「どうだか・・・」
「どうだか・・・は、当たってると思うけど・・・」
「ほらね・・・」
「ほらね・・・は、どうでもいいけど。そう遠くないと思うの。夏樹さんと雪子さんがもう一度ってなるのって。もし、そうなったら、京子は、夏樹さんとは永遠に会えなくなってしまうのよ」
「別に、いいんじゃないの?それに、どうして、私が、あの人に会わなきゃいけないわけ?」
「本当はね、雪子さんに会った事を、京子には言わないでおこうって思ってたの。京子だって、雪子さんの事を聞けば良い気はしないだろうし・・・。でもね、京子と夏樹さんは他人じゃないの。たとへ離婚したとしても、決して、他人にはなれないの、結婚する前の二人には戻れないのよ」
「何、言ってるのよ、そんなわけないでしょ?」
「法律上は他人かもしれないけど、それじゃ、京子の心の中は?他人か他人じゃないかは、一枚の紙切れが決めるんじゃないと思うの」
「何、訳の分からない事を言ってるのよ!」
「京子だって分かってるでしょ?それなのに、どうして夏樹さんを苦しめるの?」
「何・・・?何の事?」
「京子は、どうして自分が愛した人を苦しめるの?」
「だから、何の事を言ってるのよ」
「京子は、どうして京子が愛した夏樹さんを、そんなにも苦しめる事が出来るの?」
「ちょっと、直美?」
「京子が、あれほど愛していた夏樹さんを、どうして許してあげられないの?」
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。


【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。
音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。
格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。
正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。
だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。
「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる