愛して欲しいと言えたなら

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伝わらない想い

伝わらない想い・・・その3

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「早いわね~。今年も、もうすぐ終わっちゃうんだものね!」

窓の外を眺めながら呟く直美の姿が、京子には、何か、懐かしい風景のように思えた。
どこか寂しく感じるそれは、離婚を考えた時でも、離婚を決めた時でもない。
そして、悲しい事に、離婚をした後の自分自身の姿でもなかった。

京子が直美に見た姿は、忘れかけていたあの頃の、甘く切ない時間の中に生きていた自分自身。
夏樹との結婚を、あきらめなければならないのかもしれないと感じ始めていたあの頃。
そして、そんな自分の気持ちなど知らない夏樹には届かない、自分の中の気持ちを慰めていたあの夜。

やっぱり・・・もしかして、直美?

「京子・・・?」

「えっ・・・?なに・・・?」

「どうしたの?ビックリしたような声なんか出しちゃって!」

「あっ、いえ、別に、何でもないわよ」

「ふふっ・・・変な京子なんだ」

「そんな事よりも、直美は、本当に、あれから、あの人には会ってないの?」

「会ってないんだな~これが・・・というか、会う理由もなかったりして」

「そうなの・・・」

ミルクティーが少し残っているカップの中でスプーンを遊ばせながら

「もう、そんなに時間は残ってないよ。京子?」

「時間って?何の時間?」

「もうすぐ夏樹さんは、永遠に京子の手の届かない人になっちゃうんだよ?」

「別に・・・というか、それって、どういう意味よ?」

直美は、カップの中で遊ばせていたスプーンを取り出して、お皿の上にそっと置く。

「昨日ね、雪子さんに会ったの・・・。もちろん、偶然にだけど」

「ふ~ん・・・」

「素っ気なくしなくてもいいわよ。そんなの今更でしょ?」

「別に、そんなつもりじゃないけど」

「それでね、これがまた、少しだけお話も出来たの!」

「話って、雪子さんと?」

「そうよ・・・。でも、反則よね~、雪子さんの、あの可愛さは!とても、とても、私よりも年上だなんで思えないんだもの。やっぱ、反則よ!」

「そう・・・」

「とは言ってもね、私が、一方的にって感じだっだけど」

「こっちに帰って来てたのね」

「違うと思う・・・。雪子さんと会ったのは、夏樹さんが前に住んでいた家の近くの郵便局の前だったの」

「あの人が住んでいた家って・・・それじゃ、雪子さんはあの人に会いに来たの?」

「違うと思うよ。だって、雪子さんが夏樹さんの引っ越し先を知らないはずないと思うし」

「やっぱりね・・・」

「やっぱり?雪子さんと夏樹さんは付き合っていたって?それはないと思うわよ」

「どうだか・・・」

「どうだか・・・は、当たってると思うけど・・・」

「ほらね・・・」

「ほらね・・・は、どうでもいいけど。そう遠くないと思うの。夏樹さんと雪子さんがもう一度ってなるのって。もし、そうなったら、京子は、夏樹さんとは永遠に会えなくなってしまうのよ」

「別に、いいんじゃないの?それに、どうして、私が、あの人に会わなきゃいけないわけ?」

「本当はね、雪子さんに会った事を、京子には言わないでおこうって思ってたの。京子だって、雪子さんの事を聞けば良い気はしないだろうし・・・。でもね、京子と夏樹さんは他人じゃないの。たとへ離婚したとしても、決して、他人にはなれないの、結婚する前の二人には戻れないのよ」

「何、言ってるのよ、そんなわけないでしょ?」

「法律上は他人かもしれないけど、それじゃ、京子の心の中は?他人か他人じゃないかは、一枚の紙切れが決めるんじゃないと思うの」

「何、訳の分からない事を言ってるのよ!」

「京子だって分かってるでしょ?それなのに、どうして夏樹さんを苦しめるの?」

「何・・・?何の事?」

「京子は、どうして自分が愛した人を苦しめるの?」

「だから、何の事を言ってるのよ」

「京子は、どうして京子が愛した夏樹さんを、そんなにも苦しめる事が出来るの?」

「ちょっと、直美?」

「京子が、あれほど愛していた夏樹さんを、どうして許してあげられないの?」

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