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繋がる刹那
繋がる刹那・・・その19
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直美は、正直、焦っていた・・・。もう、時間がそれほど残されていない。
雪子が夏樹と会ってしまえば、もはや、京子の入り込める余地はみじんも残されてはいない。
たとへ、どんな別れ方をしたとしても、恨みや憎しみで全てが終わってしまったなら・・・。
今まで生きてきた京子自身の人生を、京子自身が自ら否定してしまう事になってしまう。
それでは、あまりに寂しすぎる人生なのではないのだろうか・・・。
直美は、なんとか、もう一度だけ京子を夏樹に会わせたいと・・・いや、会わなければいけない。
それが、何を意味するのかは分からないが、それでも、そう思わずにはいられなかったのである。
「省吾が?って、どういう意味よ?」
「省吾君だけじゃないわ!亜晃君もそうなんじゃないかな?」
「亜晃もって、子供たちが、あの人に会いたがってるとでも言いたいの?」
「う~ん・・・そういう事じゃないんだけどな~」
「それじゃ、どういう意味よ?私にも分かるように説明してくれる?」
「分かるように説明って言われると、ちょっと困るんだけど。ようするに、どうして京子は不思議に思わないのかなって?」
「不思議にって、何が?」
「うん、だからね、どうして、亜晃君や、省吾君が、お父さんに会いに行かないんだろう?とかって」
「そんなの、私も知らないわよ」
「そうかしら?」
「そうかしらって、別に、私が止めているわけじゃないんだから、会いたければ勝手に会いに行けばいいだけでしょ?」
「その程度なの?」
「なにが・・・?」
「だから、京子が亜晃君たちを想う気持ちって、そんなもんなの?って」
「何、言ってるのよ?子供たちだって、もう大人なんだから、そんなの自分で決めればいいだけでしょ?」
「だから、決めてるんじゃないの?きっと、京子が嫌がるだろうからってさ」
「なに?それじゃ、私が、悪いって言いたいわけ?」
「良いとか悪いとかじゃなくてさ、どうして、京子は、そんな亜晃君たちの背中を押してあげないのかなって?」
「どうして、いちいち、そんな事まで、私が、しなきゃけないのよ」
「京子ってさ、昔から何かにカチンってくると、その後は、もう人の言葉が耳に入らないでしょ?」
「そんな事ないわよ」
「あ~る!中学からの付き合いの私が言うんだから、間違いなく、あ~るの!」
「ないわよ!」
「あ~る!あ~る!あ~るの!」
「ないってば!」
ある、ない、の言葉の応酬に、お互いにお互いの顔を見ながら思わず笑い出してしまった。
やはり、こういうところは長年の付き合いというか、気心が知れているというか。
二人だけにしか分からない会話のツボみたいなものなのかもしれない。
「ねえ、京子?」
「なに?」
「今みたいな顔を、夏樹さんに見せたのは、いつが最後だったの?」
「さあ、覚えていないわ。気が付いたら憎んでいたって感じだったから」
「すぐ手が届く距離に夏樹さんがいても、そんな夏樹さんの姿さえ見えないくらい、京子は一人ぼっちになってしまっていたのね」
「な~に?今さら、そんな昔話なんか持ち出して」
「ねえ、京子?今年初めに、夏樹さんに会った時にどうだった?」
「どうって?」
「嬉しかった?それとも、会わなきゃよかったって思った?」
「さあね、そんなの忘れたわ」
そんなの忘れたわ・・・
そう返す、京子の言葉に、直美は微かな笑みを隠して話を続けた。
「忘れたわって言わなきゃならないくらい好きなら、どうして夏樹さんの手を離したりしたの?」
「どうしたのよ、急に?」
「きっと、夏樹さんは、ずっと、京子の手を探していたんだと思うんだ」
「それなら、私に隠れてあんな借金なんかしなきゃよかったのよ!」
「そんなの、もういいじゃない?借金だの、浮気だのって、そんなの、あの世に持っていけるわけでもないんだし」
「なに?やっぱり、あの人は浮気してたの?」
「例え話よ、例え話。夏樹さんが、浮気なんかするような人じゃないの、京子が一番良く知ってるでしょ?」
「何、言ってるのよ、あの人は、メル友とかなんとかで、知らない女の人と知り合ってたのよ」
「ん、もう~。そんなのに焼きもちを焼くくらい好きなら、どうして別れたりしたのよ?まったくもう~」
「直美には分からないかもしれないけど、そんなに単純な問題じゃないのよ」
何、言ってるのよ、やっぱりあの人は浮気してたの?って、速攻で突っ込んできたくせに!
本当、素直じゃないんだな~京子は。まったくもう~。
雪子が夏樹と会ってしまえば、もはや、京子の入り込める余地はみじんも残されてはいない。
たとへ、どんな別れ方をしたとしても、恨みや憎しみで全てが終わってしまったなら・・・。
今まで生きてきた京子自身の人生を、京子自身が自ら否定してしまう事になってしまう。
それでは、あまりに寂しすぎる人生なのではないのだろうか・・・。
直美は、なんとか、もう一度だけ京子を夏樹に会わせたいと・・・いや、会わなければいけない。
それが、何を意味するのかは分からないが、それでも、そう思わずにはいられなかったのである。
「省吾が?って、どういう意味よ?」
「省吾君だけじゃないわ!亜晃君もそうなんじゃないかな?」
「亜晃もって、子供たちが、あの人に会いたがってるとでも言いたいの?」
「う~ん・・・そういう事じゃないんだけどな~」
「それじゃ、どういう意味よ?私にも分かるように説明してくれる?」
「分かるように説明って言われると、ちょっと困るんだけど。ようするに、どうして京子は不思議に思わないのかなって?」
「不思議にって、何が?」
「うん、だからね、どうして、亜晃君や、省吾君が、お父さんに会いに行かないんだろう?とかって」
「そんなの、私も知らないわよ」
「そうかしら?」
「そうかしらって、別に、私が止めているわけじゃないんだから、会いたければ勝手に会いに行けばいいだけでしょ?」
「その程度なの?」
「なにが・・・?」
「だから、京子が亜晃君たちを想う気持ちって、そんなもんなの?って」
「何、言ってるのよ?子供たちだって、もう大人なんだから、そんなの自分で決めればいいだけでしょ?」
「だから、決めてるんじゃないの?きっと、京子が嫌がるだろうからってさ」
「なに?それじゃ、私が、悪いって言いたいわけ?」
「良いとか悪いとかじゃなくてさ、どうして、京子は、そんな亜晃君たちの背中を押してあげないのかなって?」
「どうして、いちいち、そんな事まで、私が、しなきゃけないのよ」
「京子ってさ、昔から何かにカチンってくると、その後は、もう人の言葉が耳に入らないでしょ?」
「そんな事ないわよ」
「あ~る!中学からの付き合いの私が言うんだから、間違いなく、あ~るの!」
「ないわよ!」
「あ~る!あ~る!あ~るの!」
「ないってば!」
ある、ない、の言葉の応酬に、お互いにお互いの顔を見ながら思わず笑い出してしまった。
やはり、こういうところは長年の付き合いというか、気心が知れているというか。
二人だけにしか分からない会話のツボみたいなものなのかもしれない。
「ねえ、京子?」
「なに?」
「今みたいな顔を、夏樹さんに見せたのは、いつが最後だったの?」
「さあ、覚えていないわ。気が付いたら憎んでいたって感じだったから」
「すぐ手が届く距離に夏樹さんがいても、そんな夏樹さんの姿さえ見えないくらい、京子は一人ぼっちになってしまっていたのね」
「な~に?今さら、そんな昔話なんか持ち出して」
「ねえ、京子?今年初めに、夏樹さんに会った時にどうだった?」
「どうって?」
「嬉しかった?それとも、会わなきゃよかったって思った?」
「さあね、そんなの忘れたわ」
そんなの忘れたわ・・・
そう返す、京子の言葉に、直美は微かな笑みを隠して話を続けた。
「忘れたわって言わなきゃならないくらい好きなら、どうして夏樹さんの手を離したりしたの?」
「どうしたのよ、急に?」
「きっと、夏樹さんは、ずっと、京子の手を探していたんだと思うんだ」
「それなら、私に隠れてあんな借金なんかしなきゃよかったのよ!」
「そんなの、もういいじゃない?借金だの、浮気だのって、そんなの、あの世に持っていけるわけでもないんだし」
「なに?やっぱり、あの人は浮気してたの?」
「例え話よ、例え話。夏樹さんが、浮気なんかするような人じゃないの、京子が一番良く知ってるでしょ?」
「何、言ってるのよ、あの人は、メル友とかなんとかで、知らない女の人と知り合ってたのよ」
「ん、もう~。そんなのに焼きもちを焼くくらい好きなら、どうして別れたりしたのよ?まったくもう~」
「直美には分からないかもしれないけど、そんなに単純な問題じゃないのよ」
何、言ってるのよ、やっぱりあの人は浮気してたの?って、速攻で突っ込んできたくせに!
本当、素直じゃないんだな~京子は。まったくもう~。
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