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繋がる刹那
繋がる刹那・・・その18
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まあ、疑っているとしても、夏樹さんに会うまでだし。
それに、あえて、今、ここで私が言わなくても、夏樹さんが教えてくれるだろうから。
「愛奈ちゃんの知りたい事は、もうすぐ、夏樹さんが教えてくれると思うから、それまで我慢しててね」
「ということは、裕子さんは、知っているという事になるわけで・・・」
「愛奈ちゃんは、美味しいものは、最初に食べちゃう方かしら?」
「はいです。誰かに取られちゃったら大変なので、最初に食べちゃいます」
ふふっ、なるほどね。それじゃ、これはどう答えるのかしら?
「ねえ、愛奈ちゃん。それじゃ、ひとつ質問ね」
「質問・・・?」
「ええ、丸いテーブルに6人が腰かけています。そして、テーブルの上には、5個の美味しそうなケーキが可愛いお皿に乗って置かれています。さて、愛奈ちゃんはどうしますか?」
「パクッて!食べちゃいます!」
「あははっ・・・夏樹さんと同じ答えね。特に、何個と言わないところなんか特にそっくりかも?」
「へっ・・・?」
夏樹と答えが同じだと言われて、一人喜んでいる愛奈を乗せた車が、夏樹の暮らす街へと走り出した頃、
直美は、京子と最近になって、よく二人で行く病院近くのレストランに来ていた。
季節のいたずらなのか、それとも、人の想いがそうさせるのか・・・。
見えない何かに繋がれている、別々の生きる意思が、絡み合いながら時間を加速させていく。
「昨日、省吾君に会って、少し、お話をしてみたわよ」
「そうなの?省吾は何も言ってなかったけど」
「何も言わなかったんじゃなくて、何も言えなかったんじゃないの?」
「どうして・・・?」
「まだ、分からない?」
「まだって、そんなの急に訊かれたって。いったい、どういう意味よ?」
「まあ、私にとっては、所詮は他人事なんだけど」
「それって、どういう意味?」
「そんなの京子の方がよく知ってるんじゃないの?」
「私が・・・?」
「そうよ。でもね、そういう考え方が正しい考え方だって、京子自身が思っている限り、私のする事なす事その全てが、所詮は他人の余計なお節介になっちゃうのよね」
「何が言いたいのか、よく分かんないんだけど。いったい、省吾と何を話したの?」
「省吾君は関係ないわ・・・。京子、変わったね。それとも、今になって、ほころびが見え始めてきたって事かしら?ちなみに、ボロが出始めたとも言う・・・なはははっ!」
「やっぱり、ちょっと変よ?省吾が変な事でも言ったんでしょ?」
「言ったわよ、と~っても変な事を」
「どんな事・・・?」
「むふふ、それがね、もし?夏樹さんと私が一緒になっていたら、きっと上手くいってたと思うって」
「なに、それ?」
「今度は、雪子さんの代わりに、私を、敵視でもしてみる?」
「直美、さっきから、いったい、何が言いたいの?」
「夏樹さんを憎むのも嫌うのも、許せないと恨むのも、京子の勝手だけどさ。でもね、京子、もう会えないのよ・・・分かってるの?それが、どういう事なのかって、京子は本当に分かってるの?」
「何よ?・・・急に・・・」
「いい・・・?この先、京子が生きていく人生の中で、夏樹さんという人とは、もう二度と会えないの。会えないかもしれないではなくて、もう二度と会えなくなるのよ?」
「そんなの分かってるわよ。こっちとしては、知らないところへ引っ越してくれて、かえって清々するわ」
「それ、本気で言ってるの?」
「そんなの当たり前でしょ!誰のせいで、こんな人生になったと思ってるのよ」
「でもさ、それって、夏樹さんにも同じ事が言えるんじゃないかな?」
「そんなわけないでしょ?私の方が被害者なんだから。私の人生を滅茶苦茶にしておいて、被害者面されたんじゃたまったもんじゃないわ!」
「京子って、いつも同じところに落ち着くのね?」
「なにが・・・?」
「それでさ、それを、いつまで続けるつもりなの?」
「さっきから、なんなのいったい?」
「少しは、省吾君の気持ちも考えてあげなきゃ。いつか、省吾君まで京子から離れて行っちゃうわよ」
それに、あえて、今、ここで私が言わなくても、夏樹さんが教えてくれるだろうから。
「愛奈ちゃんの知りたい事は、もうすぐ、夏樹さんが教えてくれると思うから、それまで我慢しててね」
「ということは、裕子さんは、知っているという事になるわけで・・・」
「愛奈ちゃんは、美味しいものは、最初に食べちゃう方かしら?」
「はいです。誰かに取られちゃったら大変なので、最初に食べちゃいます」
ふふっ、なるほどね。それじゃ、これはどう答えるのかしら?
「ねえ、愛奈ちゃん。それじゃ、ひとつ質問ね」
「質問・・・?」
「ええ、丸いテーブルに6人が腰かけています。そして、テーブルの上には、5個の美味しそうなケーキが可愛いお皿に乗って置かれています。さて、愛奈ちゃんはどうしますか?」
「パクッて!食べちゃいます!」
「あははっ・・・夏樹さんと同じ答えね。特に、何個と言わないところなんか特にそっくりかも?」
「へっ・・・?」
夏樹と答えが同じだと言われて、一人喜んでいる愛奈を乗せた車が、夏樹の暮らす街へと走り出した頃、
直美は、京子と最近になって、よく二人で行く病院近くのレストランに来ていた。
季節のいたずらなのか、それとも、人の想いがそうさせるのか・・・。
見えない何かに繋がれている、別々の生きる意思が、絡み合いながら時間を加速させていく。
「昨日、省吾君に会って、少し、お話をしてみたわよ」
「そうなの?省吾は何も言ってなかったけど」
「何も言わなかったんじゃなくて、何も言えなかったんじゃないの?」
「どうして・・・?」
「まだ、分からない?」
「まだって、そんなの急に訊かれたって。いったい、どういう意味よ?」
「まあ、私にとっては、所詮は他人事なんだけど」
「それって、どういう意味?」
「そんなの京子の方がよく知ってるんじゃないの?」
「私が・・・?」
「そうよ。でもね、そういう考え方が正しい考え方だって、京子自身が思っている限り、私のする事なす事その全てが、所詮は他人の余計なお節介になっちゃうのよね」
「何が言いたいのか、よく分かんないんだけど。いったい、省吾と何を話したの?」
「省吾君は関係ないわ・・・。京子、変わったね。それとも、今になって、ほころびが見え始めてきたって事かしら?ちなみに、ボロが出始めたとも言う・・・なはははっ!」
「やっぱり、ちょっと変よ?省吾が変な事でも言ったんでしょ?」
「言ったわよ、と~っても変な事を」
「どんな事・・・?」
「むふふ、それがね、もし?夏樹さんと私が一緒になっていたら、きっと上手くいってたと思うって」
「なに、それ?」
「今度は、雪子さんの代わりに、私を、敵視でもしてみる?」
「直美、さっきから、いったい、何が言いたいの?」
「夏樹さんを憎むのも嫌うのも、許せないと恨むのも、京子の勝手だけどさ。でもね、京子、もう会えないのよ・・・分かってるの?それが、どういう事なのかって、京子は本当に分かってるの?」
「何よ?・・・急に・・・」
「いい・・・?この先、京子が生きていく人生の中で、夏樹さんという人とは、もう二度と会えないの。会えないかもしれないではなくて、もう二度と会えなくなるのよ?」
「そんなの分かってるわよ。こっちとしては、知らないところへ引っ越してくれて、かえって清々するわ」
「それ、本気で言ってるの?」
「そんなの当たり前でしょ!誰のせいで、こんな人生になったと思ってるのよ」
「でもさ、それって、夏樹さんにも同じ事が言えるんじゃないかな?」
「そんなわけないでしょ?私の方が被害者なんだから。私の人生を滅茶苦茶にしておいて、被害者面されたんじゃたまったもんじゃないわ!」
「京子って、いつも同じところに落ち着くのね?」
「なにが・・・?」
「それでさ、それを、いつまで続けるつもりなの?」
「さっきから、なんなのいったい?」
「少しは、省吾君の気持ちも考えてあげなきゃ。いつか、省吾君まで京子から離れて行っちゃうわよ」
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