愛して欲しいと言えたなら

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繋がる刹那

繋がる刹那・・・その17

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「もしかして、裕子さんは、お母さんがした事に反対なんですか?」

予想していた言葉だからなのだろうか・・・
苦笑いとも、嬉し笑いともならない、かすかな笑みを浮かべる裕子。

「もし、雪子の選んだ選択肢に反対したら、きっと、反対した私を、誰よりも私自身が一番嫌いになるかもしれないわ」

「それじゃ・・・」

「雪子は・・・。雪子って頭の良い子だから、全てを理解しての行動だと思うの。特に、雪子の場合は、小説とかが好きでよく読んでいたから、尚更だと思うし」

「私ね、実は昨日ね、嬉しかったんですよ」

「嬉しかったって・・・何か、あったの?」

「昨日、夏樹さんとお話をした時に、夏樹さんが、真っ先に私と翔太の事を心配して気遣って頂いたんです」

「昨日の電話ね・・・」

「はい。お母さんの一番大切は宝物は、私と翔太だって・・・」

「ふふっ、確かに、夏樹さんらしいわね」

「なのに、お父さんなんか全然だったから、ちょっとがっかりでした」

「それは、仕方がないわよ。朝、会社に出かけるまではいつも通りだったのに、帰ってきたら離婚届を残していなくなっていたんだから、相当ショックだっただろうし、起きた事態を把握出来なくても不思議じゃないわ」

「それは、夏樹さんだって同じだと思います。お母さんがいなくなった事を、昨日の電話で初めて知ったはずなのに。それでも、私や翔太を真っ先に心配してくれたし。しかも、私や翔太が、一番訊きたい、一番知りたいって思っている自分勝手な想いを、夏樹さんは、ちゃんと分かっていて、その言葉を言ってくれたから。たとへ、その言葉が、うそだとしても嬉しかったんです。もちろん、うそじゃないって分かってますけど」

「そういうところって、昔から変わっていないみたい。夏樹さんって、そういう人」

「あの・・・裕子さんって、夏樹さんに詳しいですよね?」

「えっ?そんな事はないわよ。ちょっとだけ、詳しいかな~ってくらいなのよ」

「そうかな~?」

そうかな~?って、疑問符のおまけ付きで言われても・・・。
まさか、夏樹さんとは、二度も付き合っていたから、な~んて言えるわけない・・・のよ。

「でも、そんなお父さんにとって、唯一の救いが、誰かの身代わりの、その誰かが夏樹さんだったから。もし、お父さんが、その誰かが、誰なのかを知ったとしても、少しは、ショックも和らぐんじゃないかなって?夏樹さんが、男性でなくて、ほんと、よかったですよね!」

「はは・・・そうね・・・」

なんか、おかしいわね・・・。
どうも、昨日から、夏樹さんが女性っていう言葉が、
まるでキーワードみたいに聞こえてくるんだけど・・・。
もしかして、愛奈ちゃん疑っているんじゃないかしら?

それとも、夏樹さんが男性だという確信がどこかにあって、
あえて、それを、私に言わせようとしている?

う~ん・・・何分にも、愛奈ちゃんは小さな夏樹さんなだけに気が抜けないわ。
とはいっても、この可愛くも不思議な秘密は、夏樹さんに会うまでなんだろうけど・・・。

夏樹さんが、どういう人なのかは、私からではなく、
夏樹さんから愛奈ちゃんにが、一番、良いと思うし。

「でも、裕子さん?」

「な・なに?」

「どうしたんですか?私、何か変な事でも言いました?」

まったく、もう~・・・本当、小さな夏樹さんだわ!

「はは・・・何でもないわよ。それより、どうしたの?」

「お母さんは、どうして、夏樹さんに連絡をしなかったのかなって?」

「それは、私も、ちょっと不思議だな?って、思ってたのよ」

「ですよね?もし、裕子さんが夏樹さんに連絡をしなかったら、夏樹さんは、お母さんが家を出た事を知らないまま、という事になるんですよね?」

「それについて、愛奈ちゃんは、どう思ってるの?」

「もしかしたら、夏樹さんは、お母さんが家を出る事を、前から知っていたのかな?っても思ったんですけど。でも、それだと、どうしても腑に落ちない問題が出てきちゃうんですよね?」

「腑に落ちない問題・・・?」

「はい。もし、夏樹さんが前から知っていたんだとしたら、はたして、今回のお母さんの行動に賛成したのかなって?」

「しないわね・・・」

「わぁ!即答ですね!」

「ふふっ・・・な~に、まだ、私を疑ってるの?夏樹さんを詳しく知ってるのに嘘をついているって」

「もちろんです・・・」

もう、愛奈ちゃんったら。そんなに、はっきり言わなくてもいいと思うんだけど・・・。

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