276 / 386
繋がる刹那
繋がる刹那・・・その16
しおりを挟む
知らない、誰か・・・きっと、それは夏樹さんね。
でも、旦那さんは、夏樹さんの存在を知らないはずよね?
「ねえ?愛奈ちゃん。それって、どういう意味なの?」
「私も、その時のお父さんの言葉には、ちょっとびっくりしちゃって。それで、すぐに訊き返したんです、それって、どういう意味なの?って」
「そしたら、お父さんは?」
「ええ、それが、お父さんもすぐに我に返ったっていうか、それで、笑いながら(ごめんごめん、冗談だよ、冗談!)って、それっきりだったんです」
「そう・・・」
「私も、突然だったので、それ以上、訊いていいのかどうか分からなくて」
「そうよね・・・寝耳に水というか、ちょっと意外過ぎる一言だものね」
「それに、お母さんって普段から地味だから、そんな相手がいるなんて思ってもみなかったし」
「そんなに地味なの、雪子って?」
「まあ・・・浮いた話には縁がない人って感じくらい、地味に見えていたんですけど」
「それが、あの駐車場で・・・?」
「あの時は、ホントにびっくりしたんですよ。しかも、お母さん口紅してたんです!薄ピンクだけど。それにもびっくりしたし!」
薄ピンクの口紅・・・夏樹さんの、好みの色だわ。
「普段は、口紅はまずとして、お化粧くらいはしているでしょ?」
「それが、普段は気持ち程度って感じくらい。でも、あの時は全然違ってて・・・。でも、お母さんと一緒に遠くまでって、お出かけとかした事とか、あんまりなかったから、やっぱり、遠くまでお出かけする時は、ちゃんとお化粧をするんだな程度にしか思ってなかったんですけど・・・」
「どこで、お化粧をしたの?・・・でしょ?」
「はい、そうなんです・・・」
「雪子らしいわね、そういうところって」
「それで、お父さんの言葉を思い出したんです。それまでは、忘れていたんですけど」
「自分は、知らない誰かの身代わり・・・」
「はい。だから、あの時、駐車場で見たお母さんの姿に、正直、背筋が寒くなったんです」
「愛奈ちゃんたちの知らないお母さんがいるって感じたのね」
「ええ、そうなんです。だって、そういうのって、テレビドラマや映画の世界のお話じゃないですか?それが、うちのお母さんが?って。普段から、地味で物静かなお母さんなだけに尚更」
「確かに、そうよね」
「でも、あ~いう瞬間って、驚きよりも寒気がするもんなんですね。初めて知ったというか、体験しました」
「それが、さっき言った雪子の怖さでもあるのよ」
「そう言われると、何となく、分かるような気がします」
「それで愛奈ちゃんは、突然、家を出て行ったお母さんの事を、あまり心配していなかったのね」
「心配よりも、どこか、ワクワクというか、ドキドキというか」
「あんなに、地味で物静かな自分のお母さんが、突然、素敵な女性に見え始めちゃったみたいな感じなんでしょ?」
「あっ、はい!そうなんです」
「なるほどね。私も、愛奈ちゃんのそんな気持ち分かるわ。でも、そのために、雪子は愛奈ちゃんたちの家庭を壊す事になるかもしれないのよ?」
「私は、自分が、物分かりが良い娘だとは思っていないけど、でも、私も翔太も大人だし、それに、お父さんだって大人なわけだし・・・」
「でもね、ほとんどの家庭では、みんな、自分たちの家庭を守るために、何かしらの犠牲を強いられているものなの。なぜ、人は自分の何かを犠牲にしてまで、自分たちの家庭を守ろうとするのかってね?そして、それは、そこが帰る場所だからなの。自分たちの帰る場所があるから、安心してどこへでも行く事が出来るの・・・。だけど、雪子がした事は、愛奈ちゃんたちの帰る場所を壊してしまう行為なの」
「それは、分かりますけど・・・」
「ううん、分かってないわ・・・。もし、愛奈ちゃんが誰かと結婚して、子供が出来た時に、その子供に教えてあげれるはずの愛奈ちゃんの育ってきた場所も、生活してきた形跡も無くなるって事なの。あるのは、愛奈ちゃんの記憶の中にだけ、生きてきた証明が残されているだけになってしまうの」
「でも・・・それは」
「そうね。世の中には、離婚をする人たちも多くいるわよね。でもね、その大半は、何らかの事情があって、離婚という選択肢を選んでいるの。でも、雪子がした事は、そのどれでもないの。ただの、自分勝手なわがまま、雪子にだけ都合がいいだけの選択、そして、それは、雪子だけが幸せになろうとする身勝手な行動なのよ」
愛奈は、母親である雪子の行動を否定するような、裕子の言葉に少なからず驚いていた。
でも、旦那さんは、夏樹さんの存在を知らないはずよね?
「ねえ?愛奈ちゃん。それって、どういう意味なの?」
「私も、その時のお父さんの言葉には、ちょっとびっくりしちゃって。それで、すぐに訊き返したんです、それって、どういう意味なの?って」
「そしたら、お父さんは?」
「ええ、それが、お父さんもすぐに我に返ったっていうか、それで、笑いながら(ごめんごめん、冗談だよ、冗談!)って、それっきりだったんです」
「そう・・・」
「私も、突然だったので、それ以上、訊いていいのかどうか分からなくて」
「そうよね・・・寝耳に水というか、ちょっと意外過ぎる一言だものね」
「それに、お母さんって普段から地味だから、そんな相手がいるなんて思ってもみなかったし」
「そんなに地味なの、雪子って?」
「まあ・・・浮いた話には縁がない人って感じくらい、地味に見えていたんですけど」
「それが、あの駐車場で・・・?」
「あの時は、ホントにびっくりしたんですよ。しかも、お母さん口紅してたんです!薄ピンクだけど。それにもびっくりしたし!」
薄ピンクの口紅・・・夏樹さんの、好みの色だわ。
「普段は、口紅はまずとして、お化粧くらいはしているでしょ?」
「それが、普段は気持ち程度って感じくらい。でも、あの時は全然違ってて・・・。でも、お母さんと一緒に遠くまでって、お出かけとかした事とか、あんまりなかったから、やっぱり、遠くまでお出かけする時は、ちゃんとお化粧をするんだな程度にしか思ってなかったんですけど・・・」
「どこで、お化粧をしたの?・・・でしょ?」
「はい、そうなんです・・・」
「雪子らしいわね、そういうところって」
「それで、お父さんの言葉を思い出したんです。それまでは、忘れていたんですけど」
「自分は、知らない誰かの身代わり・・・」
「はい。だから、あの時、駐車場で見たお母さんの姿に、正直、背筋が寒くなったんです」
「愛奈ちゃんたちの知らないお母さんがいるって感じたのね」
「ええ、そうなんです。だって、そういうのって、テレビドラマや映画の世界のお話じゃないですか?それが、うちのお母さんが?って。普段から、地味で物静かなお母さんなだけに尚更」
「確かに、そうよね」
「でも、あ~いう瞬間って、驚きよりも寒気がするもんなんですね。初めて知ったというか、体験しました」
「それが、さっき言った雪子の怖さでもあるのよ」
「そう言われると、何となく、分かるような気がします」
「それで愛奈ちゃんは、突然、家を出て行ったお母さんの事を、あまり心配していなかったのね」
「心配よりも、どこか、ワクワクというか、ドキドキというか」
「あんなに、地味で物静かな自分のお母さんが、突然、素敵な女性に見え始めちゃったみたいな感じなんでしょ?」
「あっ、はい!そうなんです」
「なるほどね。私も、愛奈ちゃんのそんな気持ち分かるわ。でも、そのために、雪子は愛奈ちゃんたちの家庭を壊す事になるかもしれないのよ?」
「私は、自分が、物分かりが良い娘だとは思っていないけど、でも、私も翔太も大人だし、それに、お父さんだって大人なわけだし・・・」
「でもね、ほとんどの家庭では、みんな、自分たちの家庭を守るために、何かしらの犠牲を強いられているものなの。なぜ、人は自分の何かを犠牲にしてまで、自分たちの家庭を守ろうとするのかってね?そして、それは、そこが帰る場所だからなの。自分たちの帰る場所があるから、安心してどこへでも行く事が出来るの・・・。だけど、雪子がした事は、愛奈ちゃんたちの帰る場所を壊してしまう行為なの」
「それは、分かりますけど・・・」
「ううん、分かってないわ・・・。もし、愛奈ちゃんが誰かと結婚して、子供が出来た時に、その子供に教えてあげれるはずの愛奈ちゃんの育ってきた場所も、生活してきた形跡も無くなるって事なの。あるのは、愛奈ちゃんの記憶の中にだけ、生きてきた証明が残されているだけになってしまうの」
「でも・・・それは」
「そうね。世の中には、離婚をする人たちも多くいるわよね。でもね、その大半は、何らかの事情があって、離婚という選択肢を選んでいるの。でも、雪子がした事は、そのどれでもないの。ただの、自分勝手なわがまま、雪子にだけ都合がいいだけの選択、そして、それは、雪子だけが幸せになろうとする身勝手な行動なのよ」
愛奈は、母親である雪子の行動を否定するような、裕子の言葉に少なからず驚いていた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。



【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。
音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。
格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。
正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。
だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。
「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる