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繋がる刹那
繋がる刹那・・・その9
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「まあ、別に隠すような事じゃないからだけど。確かに、省吾君が思ってるように、夏樹さんとは何度かお話をした事もあるし、それに、引っ越し先も連絡先も知ってるわ・・・。というより、教えられたって言った方が正解ね」
「やっぱり・・・」
「でもね、それは、私が、どうのこうのって事じゃないのよ」
「分かってます・・・母さんのためなんでしょ?」
「分かるの・・・?」
「何となく・・・父さんが言ってた事があるんです。・・・「だからって、母さんが苦労してもいいって事にはならないって」・・・」
「夏樹さんが・・・?」
「はい。母さんにどんな落ち度があったとしても、それで、母さんが苦労してもいいって事にはならないって意味だと思うんですけど」
「どんな落ち度が・・・それって、どんな別れ方をしたとしてもっていう意味ね」
「だと、思います・・・」
「そうなの・・・そういう考え方って、なんか、夏樹さんらしいわね」
「だから、父さんは、直美さんにだけは、自分の連絡先を教えたんだと思います。」
「京子に、何かあったら・・・。それが分かっているなら、どうして、省吾君はお父さんの居場所を知ろうとはしなかったの?」
「父さんが、どこに住んでいたのかは知っていました・・・。引っ越す前の場所ですけど。でも、父さんが住んでいた家の前の道路を、何回、通っても、一度も、父さんを見かけた事がないんです」
一度もない・・・?
まあ、それは確かにそうかもしれないわね。
なにせ、夏樹さんは女装して女性になっていたんだから・・・。
「でも、もう、夏樹さんは引っ越しちゃったから、どこにいるのか、分からなくなってしまったわね」
「まあ・・・そうなると思います」
「それで、どうするの?」
「どうするって、言われても・・・」
「やっぱり、京子が、お母さんが怖い?」
「いえ・・・母さんは怖くありません。怖いのは、父さんの方です」
「夏樹さんの方?どうして?」
「それは・・・」
「もしかして、許していないのは、被害者の京子の方じゃなくて、加害者の夏樹さんの方だと思ってるの?」
「いえ、被害者は、母さんじゃなくて、父さんの方だと思います」
「あら?それは意外だわ。私は、京子や省吾君たちの方が、被害者だとばかり思っていたんだけど」
「それは・・・上手く説明が出来ないんですけど・・・でも・・・」
「ふ~ん・・・なるほどね。何となく分かるわ、その気持ち。でも、それで、どうして夏樹さんが怖いって思うの?」
「それも、上手く説明が出来ないんですけど。ただ、何となく、父さんには、全部、見透かされているっていうか、全部、見られているっていうか・・・」
「省吾君たちのズルい考えや、自分たちをよく見せようと嘘をついていたとかって事?」
「ええ、まあ・・・。父さん一人を悪者にしてしまった事とかも・・・」
「ようするに、夏樹さんに対して後ろめたいってわけね?」
「まあ・・・そうなんだと思います」
「省吾君が、そんな風に思っているんなら、もう分かってるんでしょ?この先、自分が何をすべきなのかって?」
「だから、余計に自分が情けないっていうか・・・」
「何も出来ないから?」
「現実っていうか、世の中っていうか、やっぱり、そんなに甘くはないです」
「学歴がないから、まともな会社に就職出来ない。それなら、自分でって思っても、お金がないから事業も起こせない。かといって、お父さんに頼ろうにも、今さら、頼れない自分になってしまっていた。まあそんなとこでしょ?」
「そんなとこです・・・」
「ふ~ん・・・省吾君は、まだ、気取りが抜けてないみたいね?」
「そんな事はないです・・・。この歳になっても、未だに、バイトしか出来ないんですから、今さら、格好付けけようにもつけられないんですから」
「そうかしら?私から見たら、省吾君は、この期に及んでも、まだ、自分が損をしない言葉を選んでいるようにしか思えないんだけど」
「そんな事はないです」
「そうかしら?まあ、いいわ。どっちにしても、私の問題じゃないしね」
「でも、僕は、別に自分が損をしないようにとかって、そんな風には考えていないです」
「私には、ありありに思えて仕方がないわよ・・・なぜか、分かる?」
「やっぱり・・・」
「でもね、それは、私が、どうのこうのって事じゃないのよ」
「分かってます・・・母さんのためなんでしょ?」
「分かるの・・・?」
「何となく・・・父さんが言ってた事があるんです。・・・「だからって、母さんが苦労してもいいって事にはならないって」・・・」
「夏樹さんが・・・?」
「はい。母さんにどんな落ち度があったとしても、それで、母さんが苦労してもいいって事にはならないって意味だと思うんですけど」
「どんな落ち度が・・・それって、どんな別れ方をしたとしてもっていう意味ね」
「だと、思います・・・」
「そうなの・・・そういう考え方って、なんか、夏樹さんらしいわね」
「だから、父さんは、直美さんにだけは、自分の連絡先を教えたんだと思います。」
「京子に、何かあったら・・・。それが分かっているなら、どうして、省吾君はお父さんの居場所を知ろうとはしなかったの?」
「父さんが、どこに住んでいたのかは知っていました・・・。引っ越す前の場所ですけど。でも、父さんが住んでいた家の前の道路を、何回、通っても、一度も、父さんを見かけた事がないんです」
一度もない・・・?
まあ、それは確かにそうかもしれないわね。
なにせ、夏樹さんは女装して女性になっていたんだから・・・。
「でも、もう、夏樹さんは引っ越しちゃったから、どこにいるのか、分からなくなってしまったわね」
「まあ・・・そうなると思います」
「それで、どうするの?」
「どうするって、言われても・・・」
「やっぱり、京子が、お母さんが怖い?」
「いえ・・・母さんは怖くありません。怖いのは、父さんの方です」
「夏樹さんの方?どうして?」
「それは・・・」
「もしかして、許していないのは、被害者の京子の方じゃなくて、加害者の夏樹さんの方だと思ってるの?」
「いえ、被害者は、母さんじゃなくて、父さんの方だと思います」
「あら?それは意外だわ。私は、京子や省吾君たちの方が、被害者だとばかり思っていたんだけど」
「それは・・・上手く説明が出来ないんですけど・・・でも・・・」
「ふ~ん・・・なるほどね。何となく分かるわ、その気持ち。でも、それで、どうして夏樹さんが怖いって思うの?」
「それも、上手く説明が出来ないんですけど。ただ、何となく、父さんには、全部、見透かされているっていうか、全部、見られているっていうか・・・」
「省吾君たちのズルい考えや、自分たちをよく見せようと嘘をついていたとかって事?」
「ええ、まあ・・・。父さん一人を悪者にしてしまった事とかも・・・」
「ようするに、夏樹さんに対して後ろめたいってわけね?」
「まあ・・・そうなんだと思います」
「省吾君が、そんな風に思っているんなら、もう分かってるんでしょ?この先、自分が何をすべきなのかって?」
「だから、余計に自分が情けないっていうか・・・」
「何も出来ないから?」
「現実っていうか、世の中っていうか、やっぱり、そんなに甘くはないです」
「学歴がないから、まともな会社に就職出来ない。それなら、自分でって思っても、お金がないから事業も起こせない。かといって、お父さんに頼ろうにも、今さら、頼れない自分になってしまっていた。まあそんなとこでしょ?」
「そんなとこです・・・」
「ふ~ん・・・省吾君は、まだ、気取りが抜けてないみたいね?」
「そんな事はないです・・・。この歳になっても、未だに、バイトしか出来ないんですから、今さら、格好付けけようにもつけられないんですから」
「そうかしら?私から見たら、省吾君は、この期に及んでも、まだ、自分が損をしない言葉を選んでいるようにしか思えないんだけど」
「そんな事はないです」
「そうかしら?まあ、いいわ。どっちにしても、私の問題じゃないしね」
「でも、僕は、別に自分が損をしないようにとかって、そんな風には考えていないです」
「私には、ありありに思えて仕方がないわよ・・・なぜか、分かる?」
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