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繋がる刹那
繋がる刹那・・・その6
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「あら?ちょっと意外だったかしら?でもね?亜晃君から連絡があったのなら、私が省吾君に何を訊いても、同じような答えしか返してこないでしょ?」
直美は、少し素っ気ない声でそう言いながら、
注文を取りに来たウエイトレスにミルクティーを注文した。
「それにね、まあ、確かに京子の事が心配だったから亜晃君とお話をしてみたんだけど。でもね、考えてみたら、私のやってるのって、世間一般でいう余計なお世話って事になるのよね」
「はあ・・・」
「それに、私が、省吾君や亜晃君に何を訊いたとしても、どんな話をしたとしても、それで何が変わるってわけでもないしね。ただね、今はまだいいけど、あと10年もしたら、京子だって60過ぎのおばあちゃんになっちゃうでしょ?まあ、人の家の事だから余計なお世話だって言われればそれまでなんだけどさ。でも、京子の友達としてはやっぱり心配になるからさ。それで、省吾君たちは、そんな10年後20年後の事をどう考えているのかな?って思ったの。でもさ、そんなのって、私が心配したって、別に、私の問題じゃないし・・・」
「兄さんだけじゃなくて、母さんからも連絡がきたよ」
「京子からも・・・?」
「うん・・・・」
「そうなんだ・・・」
「訊かないんですね?母さんからの電話の内容」
「訊いたところで、何が変わるわけでもないでしょ?」
「直美さん、何かあったんですか?」
「どうして・・・?」
「だって、兄さんから聞かされてた直美さんと違うっていうか何ていうか」
「素っ気ない?それとも、愛想がない?」
「まあ~そんな感じに見えますけど」
「そうじゃないのよ。私が、おバカなだけ。ちょっと考えてみれば分かるような事なのに、私って、そういうとこがちょっと鈍いっていうか鈍感っていうか、あっ、同じ意味だったわ・・・ははは」
「そういうとこっていうのは?」
「ただの野次馬ってやつかな?人の不幸は蜜の味ってやつ。私がやってる事ってさ、結局は、省吾君たちの家庭の問題を、京子の友達って変な特権で、根掘り葉掘り訊いてみようとしているだけなんだって気が付いたの。確かに、京子の事は心配よ。でもさ、私が、どんなに京子の事を心配しても、省吾君たちから京子の事をどう思っているのかって訊いてみても、それで、何が変わるわけでもないでしょ?これから京子の未来が幸せになるっていうのならいくらでも訊くけどさ。そうじゃないなら、私のやってる事なんて、ただの野次馬と一緒じゃない?そう思ったら、省吾君に訊くべき言葉が違うんじゃないかなって?思ったの」
「違うっていうのは・・・?」
直美の口から出てくる言葉は、省吾にとっては意外な言葉というより、
予想もしていなかった言葉といった方が正解なのかもしれない。
亜晃からかかってきた電話では、母親との暮らしの事や、仕事の事、
それから、この先、どうするつもりなのか?と、いったような事を訊かれるかもしれないと。
そして、母親の京子からは、
それとは逆に、直美に何を訊かれたのか、後で教えるようにというふうに言われていたのだが。
ところが、実際、そう思って身構えていた省吾が、今、直美に訊かれているのは、
父親に伝えて欲しいって思ってる事があるなら教えて欲しいという言葉だったのだから、
少しは構えていた省吾が、肩透かしされてしまったと思うのも無理もないのである。
「うん、違うっていうのはね。たぶん・・・いいえ、間違いなく!だと思うけど、省吾君はというより省吾君たちは、この先、もう二度と、お父さんと会う事はないと思うの・・・違うかしら?」
「・・・」
「違うわね?会う事じゃなくて、会う意味が無いって言った方が正解よね・・・。省吾君なら、この意味が分かるわよね?」
「それは・・・」
ちょっとまって?
私ってば、もしかしたら勘違いしていたんじゃないかしら?
あの時、亜晃君が、
それとなく、自分は、今でも父親を許していないってニュアンスを、私に伝えていたのは、
父親である夏樹の事を、許していないんじゃなくて、
亜晃君は、自分も母親である京子と同じなんだと、京子と同じように、
自分も父親を許していないんだと、それとなく、京子に対して言っていた言葉なんだわ。
もちろん、亜晃君との会話の内容を、私が、京子に話すだろうという前提なんだろうけど。
京子の機嫌を伺いながら、遠まわしに京子を脅していた?
いえ、違うわね・・・。
京子を脅していたんじゃなくて、媚っていたのかも?
何のかんのいっても、万が一にでも、京子に横を向かれたら、
困るのは、独立出来ないでいる、亜晃君の方なんだし。
もしかして、亜晃君や省吾君、そして、京子を許していないのは、夏樹さんの方なんじゃない?
直美は、少し素っ気ない声でそう言いながら、
注文を取りに来たウエイトレスにミルクティーを注文した。
「それにね、まあ、確かに京子の事が心配だったから亜晃君とお話をしてみたんだけど。でもね、考えてみたら、私のやってるのって、世間一般でいう余計なお世話って事になるのよね」
「はあ・・・」
「それに、私が、省吾君や亜晃君に何を訊いたとしても、どんな話をしたとしても、それで何が変わるってわけでもないしね。ただね、今はまだいいけど、あと10年もしたら、京子だって60過ぎのおばあちゃんになっちゃうでしょ?まあ、人の家の事だから余計なお世話だって言われればそれまでなんだけどさ。でも、京子の友達としてはやっぱり心配になるからさ。それで、省吾君たちは、そんな10年後20年後の事をどう考えているのかな?って思ったの。でもさ、そんなのって、私が心配したって、別に、私の問題じゃないし・・・」
「兄さんだけじゃなくて、母さんからも連絡がきたよ」
「京子からも・・・?」
「うん・・・・」
「そうなんだ・・・」
「訊かないんですね?母さんからの電話の内容」
「訊いたところで、何が変わるわけでもないでしょ?」
「直美さん、何かあったんですか?」
「どうして・・・?」
「だって、兄さんから聞かされてた直美さんと違うっていうか何ていうか」
「素っ気ない?それとも、愛想がない?」
「まあ~そんな感じに見えますけど」
「そうじゃないのよ。私が、おバカなだけ。ちょっと考えてみれば分かるような事なのに、私って、そういうとこがちょっと鈍いっていうか鈍感っていうか、あっ、同じ意味だったわ・・・ははは」
「そういうとこっていうのは?」
「ただの野次馬ってやつかな?人の不幸は蜜の味ってやつ。私がやってる事ってさ、結局は、省吾君たちの家庭の問題を、京子の友達って変な特権で、根掘り葉掘り訊いてみようとしているだけなんだって気が付いたの。確かに、京子の事は心配よ。でもさ、私が、どんなに京子の事を心配しても、省吾君たちから京子の事をどう思っているのかって訊いてみても、それで、何が変わるわけでもないでしょ?これから京子の未来が幸せになるっていうのならいくらでも訊くけどさ。そうじゃないなら、私のやってる事なんて、ただの野次馬と一緒じゃない?そう思ったら、省吾君に訊くべき言葉が違うんじゃないかなって?思ったの」
「違うっていうのは・・・?」
直美の口から出てくる言葉は、省吾にとっては意外な言葉というより、
予想もしていなかった言葉といった方が正解なのかもしれない。
亜晃からかかってきた電話では、母親との暮らしの事や、仕事の事、
それから、この先、どうするつもりなのか?と、いったような事を訊かれるかもしれないと。
そして、母親の京子からは、
それとは逆に、直美に何を訊かれたのか、後で教えるようにというふうに言われていたのだが。
ところが、実際、そう思って身構えていた省吾が、今、直美に訊かれているのは、
父親に伝えて欲しいって思ってる事があるなら教えて欲しいという言葉だったのだから、
少しは構えていた省吾が、肩透かしされてしまったと思うのも無理もないのである。
「うん、違うっていうのはね。たぶん・・・いいえ、間違いなく!だと思うけど、省吾君はというより省吾君たちは、この先、もう二度と、お父さんと会う事はないと思うの・・・違うかしら?」
「・・・」
「違うわね?会う事じゃなくて、会う意味が無いって言った方が正解よね・・・。省吾君なら、この意味が分かるわよね?」
「それは・・・」
ちょっとまって?
私ってば、もしかしたら勘違いしていたんじゃないかしら?
あの時、亜晃君が、
それとなく、自分は、今でも父親を許していないってニュアンスを、私に伝えていたのは、
父親である夏樹の事を、許していないんじゃなくて、
亜晃君は、自分も母親である京子と同じなんだと、京子と同じように、
自分も父親を許していないんだと、それとなく、京子に対して言っていた言葉なんだわ。
もちろん、亜晃君との会話の内容を、私が、京子に話すだろうという前提なんだろうけど。
京子の機嫌を伺いながら、遠まわしに京子を脅していた?
いえ、違うわね・・・。
京子を脅していたんじゃなくて、媚っていたのかも?
何のかんのいっても、万が一にでも、京子に横を向かれたら、
困るのは、独立出来ないでいる、亜晃君の方なんだし。
もしかして、亜晃君や省吾君、そして、京子を許していないのは、夏樹さんの方なんじゃない?
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