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繋がる刹那
繋がる刹那・・・その5
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直美は、雪子と話が出来た事が、嬉しくて仕方がないらしい。
しかも、今日は、雪子だけではなく、夏樹と二度も話が出来たものだから。
(盆と正月が一緒に来たみたい)って、きっとこういう事なのね!と、一人で感激していた。
ただ、そんな一人感激の時間も、これから省吾と会うための待ち合わせの場所に近づくにつれ、
感激とは真逆の感情も、その距離に比例するように、ゆっくりと、そして確実に大きくなっていくのを感じていた。
京子は知らない・・・。
雪子さんがこの街にいる事を、京子は知らない。
その雪子さんが、夏樹さんが住んでいたあの家の前にいた事を、京子は知らない。
そして、数分前まで、私が、雪子さんと会っていた事も・・・京子は知らない。
私は、雪子さんとお話が出来た事がとても嬉しかった。
そして、夏樹さんとお話が出来た事もとても嬉しかった・・そんな私の感情も、京子は知らない。
今の私が感じているこの感情って、夏樹さんと恋人だった頃の京子も、きっと感じていたはず。
ううん・・・京子が、夏樹さんと夫婦になって幸せだった頃にも、きっと・・・。
そんな京子が感じていた幸せの温もりが、まるで木漏れ日が移動していくみたいに、
その木漏れ日は、今は、雪子さんを暖かく包み始めているのかもしれない・・・。
雪子さんが、今・・・いえ、きっと、もっと昔からなのかもしれないけど、
そんな雪子さんが触れている愛と、京子が触れていた愛とは、どこか違うような気がする。
京子が触れていた愛っていうのは、私が触れた事がある愛と同じなのかもしれない。
本気で誰かを愛するとかってよく聞くけど、その本気って、いったい、どの本気なのだろう?
愛だの恋だのと騒いでいても、結局は、どちらかがどちらかに合わせていくだけで、
そのどちらかが、相手に合わせる事をやめた時に、言い訳が生まれるのかな?
私にも、本気で愛した人がいたとはいっても、そんな愛なんて、まるで麻疹みたいなもの。
京子も、きっと、私と同じ麻疹みたいな感情だったのだと思う。
ただ、私と京子の違いは、京子には、長い年月の間、
その相手が、ずっと、京子に合わせてくれていただけの事。
京子は、それを本気の愛だと信じていたのだろうし、きっと、疑いもしなかったのかもしれない。
でも・・・雪子さんの愛は、それとは違う・・・。
夏樹さんのための洋服選び、夏樹さんのための化粧、そして夏樹さんのためだけの愛を抱きしめている。
雪子さんが、夏樹さんと別れてから30年以上も過ぎているというのに、
その愛は、今でも、何ひとつ色あせていない。
ほんの数分の会話だったけど、雪子さんの雰囲気が、それを伝えているように感じられたわ。
夏樹さんは、感情の反比例って言ってたけど・・・。
いったい、この先の京子の人生って、どうなっていくのかな?
省吾との待ち合わせ場所であるレストランへと車を走らせながら、チラッと腕時計を見てみる。
まあ~、なんとか、遅刻しないで済みそうだわ。
でも、な~んかね~。今さら省吾君と話をしてみたって、何も変わらないような気がするし。
それに、さっきの省吾君の表情だと、すでに亜晃君から連絡が入っていたみたいだし。
どっちみち、京子が、この先も苦労するのが目に見えてるわけだしさ。
なんでかな?よく分からないけど、なんか、どうでもいいって感じ。
過去に何があったとしても、前を見て生きようとしている夏樹さんと雪子さん。
いつまでも、過去から抜け出せないで、
何かにつけ、誰が悪いの悪くのないのって、難癖をつけたがる京子。
大体にして、亜晃君も省吾君も、いい歳して、いつまでもウジウジしちゃっててさ。
ん・・・?
あれ、私って、性格が変わっちゃった?
直美がレストランの中に入ってみると、窓際の席に座っている省吾の姿を見つけた。
「もしかして、私の方が遅刻しちゃった?」そう言いながら、直美は席に着いた。
「いえ、僕も、今、来たところですから」
直美は、何げなく腕時計をチラッと見ると、待ち合わせの時間まではまだ20分近くもある。
それと、省吾の前にあるコーヒーカップに目をやるとカップはすでに空になっていた。
どうやら、省吾は、ずいぶん前からここの席に座っていたらしい。
少なくても、注文したコーヒーを飲み終えるくらい前から、直美を待っていたようである。
「ねえ、省吾君?すでに亜晃君の方から連絡があったんでしょ?」
「えっ・・・?」
「だから、私と何を話しても、きっと同じね?それでね、一つだけ聞かせて欲しいんだけどね。もし、省吾君が、お父さんに伝えて欲しいって思ってる事があるなら教えて欲しいの」
おそらく、予想していなかったのだろう。
直美の意外な言葉に、省吾は、少しの驚きと返す言葉を探そうとする戸惑いを隠せなかった。
しかも、今日は、雪子だけではなく、夏樹と二度も話が出来たものだから。
(盆と正月が一緒に来たみたい)って、きっとこういう事なのね!と、一人で感激していた。
ただ、そんな一人感激の時間も、これから省吾と会うための待ち合わせの場所に近づくにつれ、
感激とは真逆の感情も、その距離に比例するように、ゆっくりと、そして確実に大きくなっていくのを感じていた。
京子は知らない・・・。
雪子さんがこの街にいる事を、京子は知らない。
その雪子さんが、夏樹さんが住んでいたあの家の前にいた事を、京子は知らない。
そして、数分前まで、私が、雪子さんと会っていた事も・・・京子は知らない。
私は、雪子さんとお話が出来た事がとても嬉しかった。
そして、夏樹さんとお話が出来た事もとても嬉しかった・・そんな私の感情も、京子は知らない。
今の私が感じているこの感情って、夏樹さんと恋人だった頃の京子も、きっと感じていたはず。
ううん・・・京子が、夏樹さんと夫婦になって幸せだった頃にも、きっと・・・。
そんな京子が感じていた幸せの温もりが、まるで木漏れ日が移動していくみたいに、
その木漏れ日は、今は、雪子さんを暖かく包み始めているのかもしれない・・・。
雪子さんが、今・・・いえ、きっと、もっと昔からなのかもしれないけど、
そんな雪子さんが触れている愛と、京子が触れていた愛とは、どこか違うような気がする。
京子が触れていた愛っていうのは、私が触れた事がある愛と同じなのかもしれない。
本気で誰かを愛するとかってよく聞くけど、その本気って、いったい、どの本気なのだろう?
愛だの恋だのと騒いでいても、結局は、どちらかがどちらかに合わせていくだけで、
そのどちらかが、相手に合わせる事をやめた時に、言い訳が生まれるのかな?
私にも、本気で愛した人がいたとはいっても、そんな愛なんて、まるで麻疹みたいなもの。
京子も、きっと、私と同じ麻疹みたいな感情だったのだと思う。
ただ、私と京子の違いは、京子には、長い年月の間、
その相手が、ずっと、京子に合わせてくれていただけの事。
京子は、それを本気の愛だと信じていたのだろうし、きっと、疑いもしなかったのかもしれない。
でも・・・雪子さんの愛は、それとは違う・・・。
夏樹さんのための洋服選び、夏樹さんのための化粧、そして夏樹さんのためだけの愛を抱きしめている。
雪子さんが、夏樹さんと別れてから30年以上も過ぎているというのに、
その愛は、今でも、何ひとつ色あせていない。
ほんの数分の会話だったけど、雪子さんの雰囲気が、それを伝えているように感じられたわ。
夏樹さんは、感情の反比例って言ってたけど・・・。
いったい、この先の京子の人生って、どうなっていくのかな?
省吾との待ち合わせ場所であるレストランへと車を走らせながら、チラッと腕時計を見てみる。
まあ~、なんとか、遅刻しないで済みそうだわ。
でも、な~んかね~。今さら省吾君と話をしてみたって、何も変わらないような気がするし。
それに、さっきの省吾君の表情だと、すでに亜晃君から連絡が入っていたみたいだし。
どっちみち、京子が、この先も苦労するのが目に見えてるわけだしさ。
なんでかな?よく分からないけど、なんか、どうでもいいって感じ。
過去に何があったとしても、前を見て生きようとしている夏樹さんと雪子さん。
いつまでも、過去から抜け出せないで、
何かにつけ、誰が悪いの悪くのないのって、難癖をつけたがる京子。
大体にして、亜晃君も省吾君も、いい歳して、いつまでもウジウジしちゃっててさ。
ん・・・?
あれ、私って、性格が変わっちゃった?
直美がレストランの中に入ってみると、窓際の席に座っている省吾の姿を見つけた。
「もしかして、私の方が遅刻しちゃった?」そう言いながら、直美は席に着いた。
「いえ、僕も、今、来たところですから」
直美は、何げなく腕時計をチラッと見ると、待ち合わせの時間まではまだ20分近くもある。
それと、省吾の前にあるコーヒーカップに目をやるとカップはすでに空になっていた。
どうやら、省吾は、ずいぶん前からここの席に座っていたらしい。
少なくても、注文したコーヒーを飲み終えるくらい前から、直美を待っていたようである。
「ねえ、省吾君?すでに亜晃君の方から連絡があったんでしょ?」
「えっ・・・?」
「だから、私と何を話しても、きっと同じね?それでね、一つだけ聞かせて欲しいんだけどね。もし、省吾君が、お父さんに伝えて欲しいって思ってる事があるなら教えて欲しいの」
おそらく、予想していなかったのだろう。
直美の意外な言葉に、省吾は、少しの驚きと返す言葉を探そうとする戸惑いを隠せなかった。
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