愛して欲しいと言えたなら

zonbitan

文字の大きさ
上 下
264 / 386
繋がる刹那

繋がる刹那・・・その4

しおりを挟む
しかし・・・いつもながら、否定はしないのね。雪子さんを、可愛いって言われても。
でも、まあ~、否定したら否定したで、なんか嫌味っぽいっていうかなんていうか。

「あやつって、可愛いでしょ?」

おおお===い!
否定ではなくて、肯定しちゃうんですか===?

「でも、どうして、あんなにも可愛いんですか?」

「ん?それを、あたしに訊く?」

「ははは・・・もしかして恋をしてるから?なんちって!」

「あんたも恋をすれば、とっても綺麗になれるわよ!」

「そうでしょうか?私の場合は原型が原型なだけに・・・ははは」

「京子にも、今のあんたの想いを、少しでも理解しようという気持ちがあればいいんだろうけど」

「えっ・・・?」

「京子はね、薄っぺらなのよ」

「それは・・・」

「あの子はね、自分が汚れたくなくて、いつも逃げてたの。だから薄っぺらなの」

「でも、それは・・・」

「みんなそうだから別に気にするような事でもないんだけど。時として、それではダメな人もいるのよ、あたしみたいにね」

「何となく、分かるような・・・」

「どうしたらいいのか分からないのなら、あんたに訊けばいいだけの話。それさえ出来ないから一人で苦しむような毎日になっちゃうの。あんたってノー天気だから、京子にとっては最高のパートナーなのよね」

「ノー天気って・・・あのですね?」

「あはは、ノー天気の心情は、あんたが一番分かってるでしょ?」

「・・・」

「あら?また、あたしに魅かれちゃうような事を言っちゃったかしら?」

「もう~、夏樹さんってば!」

「あはは・・・」

「そうそう、あのですね、さっき、雪子さんとお話をしていた時に変な声が聞こえたんですよ?」

「変な声・・・?」

「ええ、そうなんです。何とも、この世のものとは思えないような、地の底から聞こえてくるようなみたいな感じの低い低音だったんですよ?」

「もしかして、あんた、何か連れてきたんじゃないの?」

「えっ?・・・そんな・・・まさか?」

「で、その低い声って、何て言ってたの?」

「それがですね、あの、たわけが・・・って・・・。とっても低い声で聞こえてきたんです」

「ふ~ん・・・それで、その声が聞こえる前に、あんた何か言ってたの?」

「ええ、夏樹さんは、いつも雪子さんのお話をする時は、とっても嬉しそうに話すんですよ!って言ったら聞こえてきたんです・・・。あの、たわけがって。私、びっくりしちゃって!」

「あははっ!それって、雪子の照れ隠しよ。照・れ・隠・し!」

「えええ===っ?」

「あははっ。でも、あんただからそれくらいで済んだのよ、あたしがそんな事を言った日にゃ、すかさず飛んでくるわよ!ビンタが!しかも、ケラケラ笑いながら!」

「う~ん・・・ちょっと信じられない、っていうか。だって、それまで雪子さんとっても物静かに話していたんですよ」

「あやつって、面白いでしょ?」

夏樹さん、嬉しそう・・・。
スマホから聞こえてくる夏樹さんの声からでも伝わってきちゃう。
雪子さんと、京子・・・いったい、どこで、こんなにも違ってしまったんだろう?

夏樹さんと夫婦だった頃の京子と、今の京子・・・。
あまりに違い過ぎるから、どうして?って、思わずにはいられないんだけど・・・。

「京子が可哀そう・・・今、そう思ったわね?」

「ええ・・・でも、どうして、それを?」

「感情の反比例ってやつよ。誰かの幸せは誰かの不幸、誰かの嬉しさは誰かの悲しみ、今のあんたなら分かるでしょ?」

「何となくですけど・・・」

「そして、あんたは、あたしに魅かれちゃうのよね?」

「だから・・・それを言っちゃダメですってば!夏樹さんって、せっかくのシリアスをいつもすぐに台無しにしちゃうんだから、もう~」

「あはは・・・そんな事より、二番目が待ってるじゃなかったの?」

「あっ、そうだった!」

「それじゃ、気を付けて行くのよ」

「あっ、はい。あっ、おそらく雪子さんは夏樹さんの元へ向かったかと思われますです。はい!」

「了解よ・・・。それじゃ、またね!」

しかし、まあ、この子ったら、ますます、あたしの下僕みたいになってきてるわね?
通話を終えた夏樹は、微笑みながら、つぶやく言葉を冬の香りの中で遊ばせていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...