愛して欲しいと言えたなら

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対価の罪

対価の罪・・・その20

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「でも、雪子さんの事は、心配にならないんですか?」

「あやつなら、心配いらないわ。それよりも、あたしの言った通りだったみたいね?」

「えっ・・・?」

「だから、もう一人の方にも会いに行くんでしょ?」

「しょ?って、どうして、亜晃君に会ったって分かったんですか?」

「だから、もう一人にも会って確かめたいんでしょ?」

「あっ・・・あっ、確かに・・・えへへっ」

「でもね、あの子たちに、何かを期待しちゃだめよ!」

「ええ・・・まあ・・・」

「あら、少し落ち込んでな~い?」

「ええ・・・ちょっと・・・」

「なら、尚更ね。あの子たちに何かを期待しちゃだめ!分かった?」

「でも・・・」

「大人の期待は、子供たちを苦しめるだけなの。するのは、期待じゃなくて希望の方なのよ!」

「希望・・・ですか?」

「期待は歪んだ評価に繋がるけど、希望は、まだ見ぬ明日へと繋がっているの」

「なるほど!はい!了解です!」

「あい?あんた、ほんとに分かったの?」

「省吾君たちの今の言葉に、真実を求めてはいけないって事ですよね?」

「そうね・・・まあ、あながち的外れではないわね」

「よかった。夏樹さんとお話が出来て、少しは気持ちが楽になりました」

そう言うと、直美は早々に会話を終わらせて、省吾に会いに行くために車のドアを開ける。

う~ん・・・少しは気持ちが楽になりました、というより、
ますます、あたしの下僕になりました、の間違いじゃないのかしら?

でもまあ・・・反則的な可愛さ・・・ねぇ・・・。
雪子は、どうしても、あたしを逃がさないつもりらしいわね・・・ほんと困った子。

あっ・・・。直美は、ドアを閉めて歩き出そうとした時にふと思い出した。
そういえば、どうして、雪子さんがあの場所にいたのか訊くのを忘れちゃった。
でもまあ、夏樹さんが心配はいらないって言ってたから・・・まっ、いっか。
と、思ってはみても、やっぱり気になるんだわ。どうして、雪子さんがあの場所にいたのかって。

そんな、声にならないひとり言を言いながら、
コンビニの中に入って行くと省吾の姿を探してみる。

レジのカウンターにはいないようなので、陳列棚の方を眺めながら歩いていくと、
一番奥の缶ジュースなどが置かれている冷蔵庫のところで、商品を入れている省吾を見つけた。

「こんにちは、省吾君!」

直美の声に振り向いた省吾は、別に驚く様子もなく挨拶を返してきた。
ふふ~ん・・・なるへそ。直美も、すぐに省吾の態度を理解したらしく笑みを浮かべる

「省吾君は、今日のバイトは何時頃終わるの?」

「あと1時間くらいで終わりますけど・・・なにか?」

なにか・・・?にゃるへそ、そうくるのね!

「うん、ちょっと、お話したい事があってね」

「話ですか?いいですけど・・・」

「それじゃ、バイトが終わったら連絡くれる?」

「いいですよ」

「ありがと。それまで、私は、向かいのレストランにいるから」

「それじゃ、バイトが終わったらレストランの方に行きますよ」

ってか、携帯の番号は教えんのかい?
京子の言ってた通り用心深いわね!

「うん、分かった。それじゃ待ってるね!」

そう言って、コンビニを出た直美は車に乗り込むと、
さっき、雪子を見かけたあの場所に向かう事にした。

雪子さん、まだ、いるかしら?
別に、会って何か話をしたいってわけじゃないんだけど、何となく、気になっちゃっうし。

コンビニの大きなサッシから、直美の車が出て行くのを見ていた省吾は、

「そっちは、レストランとは反対方向だと思うんだけど・・・。やっぱ、母さんが言ってた通り、相当な方向音痴みたい」

そんな省吾の言葉など届くこともない直美の車は、勢いよく国道を南へと走り去っていく。

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