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対価の罪
対価の罪・・・その19
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数か月ぶりに聞く夏樹の声に、嬉しさを隠せない直美は、
やはり、どこか、素直な性格なのかもしれない。
「あんた、明るくなったわね」
「えっ・・・?」
「長い時間望む事は出来なくても、短い時間の中だけに存在する、あんたの望んでいた幸せ」
「いや・・・あの・・・」
「まあ、いいわ。それで、雪子がどうかしたの?」
えっ・・・?あい・・・?
あの・・・?そこで、話を変えちゃうんですか?
「ええ、実は、今さっき、雪子さんを見かけたんです」
「雪子を・・・?」
「ええ、確認のため、2度、見たので間違いないと思われます!」
「ふふっ。あんた、いつから、あたしの下僕になったのよ?」
「えっ・・・?いや~あの~・・・」
「あやつの事だから、あたしが住んでいた家でも見てたんでしょ?」
「え===っ?どうして、分かっちゃったんですか?」
「あはは、んなの、今さら驚くような事でもないでしょ?」
「まあ・・・確かに・・・。でも、やっぱり不思議ですよ?」
「どっちが・・・?」
「う~ん・・・この場合はどっちも・・・かな?」
「そんな事よりも、京子の方はどうなの?」
「あれ?・・・ちょっと、びっくりかも?」
「何が、ちょっとびっくりなのよ?」
「だって、夏樹さんが、京子の事を訊くなんて、ちょっとびっくりですよ!」
「んなの、あんただから訊いたんじゃないのよ」
「えへっ・・・なんか、少し嬉しいかも」
「ってか、あんた、ちょっとキャラ変わってない?」
「いえいえ。もともと、こんな感じのキャラだったんですよ」
「あら、それじゃ、ますます、あたし好みだわ!」
「ダメですよ、そんな事を言っては!雪子さんに怒られちゃいますよ!」
「大丈夫よ。あやつは、正直なあたしが好きなんだから」
「雪子さんは、焼きもちとかって焼かないんですか?」
「焼くわよ。しかも、思いっきりね。でも、あやつは、そんな自分も好きなのよね」
「なんか、京子とは正反対みたいですね」
「そうね。あやつは、噓をついて欲しいって思いながら、正直なあたしを求めてるし。京子は、逆に、正直でいて欲しいと望みながら、嘘をつくあたしを求めていたからね」
「でも、夏樹さんは、どっちを求めていたんですか?」
「あら?あんた、変わった事を訊くのね」
「えっ、どうしてですか?」
「求めている・・・じゃなくて、求めていたって訊いたでしょ?」
やっぱり、夏樹さんだ。私としては、気がつかないだろうなって、
細心の注意を払って、言葉を選んだつもりだったんだけど・・・う~ん。
「あはは、そんなに悩む事はないわよ」
「だって、絶対に気づかないだろうなって思ってたのに」
「って事は、あんたにも分かってるってわけね。なぜ、あたしが、あの場所を離れたのかって」
「何となくですけど・・・」
「それが、さっきの言葉なの。望む望まずにかかわらず、振り払えない何かってあるのよね」
「夏樹さんが生きた年月・・・ですね」
「まあね・・・」
「そんな夏樹さんを、雪子さんはどう思っているんですか?」
「んなの説明しなくても、今のあんたになら分かるでしょ?」
「京子を否定する夏樹さんを、雪子さんは望まない・・・ですか?」
「そうよ・・・。あやつはね、殺意の中の愛を求めるの。普通は逆なんだけどね」
「その逆は、愛ゆえに殺意が芽生える・・・ですね」
「そう。でも、あやつは、初めから、あたしにナイフを突きつけて愛を探すのよ。まるで、バラの枝を持つタンポポみたいでしょ?」
「バラの枝を持つタンポポ・・・」
「不幸せの切符を手に入れて列車に乗る雪子と、幸せの切符を失くしてしまったために途中下車出来なくなってなってしまった京子・・・。ってか、あんた、あたしと長話なんてしてていいの?どこか行くとこあったんじゃないの?」
「ええ、ほんとは、省吾君に会いに行こうと思っていたんですけど、その途中で雪子さんを見かけたものですから」
「それで、あやつの事が心配になって、あたしに?」
「ええ・・・まあ・・・なんていうか・・・。いや~、ま~、えへへっ」
「ふふっ、また、最初のあんたに戻っちゃた!」
やはり、どこか、素直な性格なのかもしれない。
「あんた、明るくなったわね」
「えっ・・・?」
「長い時間望む事は出来なくても、短い時間の中だけに存在する、あんたの望んでいた幸せ」
「いや・・・あの・・・」
「まあ、いいわ。それで、雪子がどうかしたの?」
えっ・・・?あい・・・?
あの・・・?そこで、話を変えちゃうんですか?
「ええ、実は、今さっき、雪子さんを見かけたんです」
「雪子を・・・?」
「ええ、確認のため、2度、見たので間違いないと思われます!」
「ふふっ。あんた、いつから、あたしの下僕になったのよ?」
「えっ・・・?いや~あの~・・・」
「あやつの事だから、あたしが住んでいた家でも見てたんでしょ?」
「え===っ?どうして、分かっちゃったんですか?」
「あはは、んなの、今さら驚くような事でもないでしょ?」
「まあ・・・確かに・・・。でも、やっぱり不思議ですよ?」
「どっちが・・・?」
「う~ん・・・この場合はどっちも・・・かな?」
「そんな事よりも、京子の方はどうなの?」
「あれ?・・・ちょっと、びっくりかも?」
「何が、ちょっとびっくりなのよ?」
「だって、夏樹さんが、京子の事を訊くなんて、ちょっとびっくりですよ!」
「んなの、あんただから訊いたんじゃないのよ」
「えへっ・・・なんか、少し嬉しいかも」
「ってか、あんた、ちょっとキャラ変わってない?」
「いえいえ。もともと、こんな感じのキャラだったんですよ」
「あら、それじゃ、ますます、あたし好みだわ!」
「ダメですよ、そんな事を言っては!雪子さんに怒られちゃいますよ!」
「大丈夫よ。あやつは、正直なあたしが好きなんだから」
「雪子さんは、焼きもちとかって焼かないんですか?」
「焼くわよ。しかも、思いっきりね。でも、あやつは、そんな自分も好きなのよね」
「なんか、京子とは正反対みたいですね」
「そうね。あやつは、噓をついて欲しいって思いながら、正直なあたしを求めてるし。京子は、逆に、正直でいて欲しいと望みながら、嘘をつくあたしを求めていたからね」
「でも、夏樹さんは、どっちを求めていたんですか?」
「あら?あんた、変わった事を訊くのね」
「えっ、どうしてですか?」
「求めている・・・じゃなくて、求めていたって訊いたでしょ?」
やっぱり、夏樹さんだ。私としては、気がつかないだろうなって、
細心の注意を払って、言葉を選んだつもりだったんだけど・・・う~ん。
「あはは、そんなに悩む事はないわよ」
「だって、絶対に気づかないだろうなって思ってたのに」
「って事は、あんたにも分かってるってわけね。なぜ、あたしが、あの場所を離れたのかって」
「何となくですけど・・・」
「それが、さっきの言葉なの。望む望まずにかかわらず、振り払えない何かってあるのよね」
「夏樹さんが生きた年月・・・ですね」
「まあね・・・」
「そんな夏樹さんを、雪子さんはどう思っているんですか?」
「んなの説明しなくても、今のあんたになら分かるでしょ?」
「京子を否定する夏樹さんを、雪子さんは望まない・・・ですか?」
「そうよ・・・。あやつはね、殺意の中の愛を求めるの。普通は逆なんだけどね」
「その逆は、愛ゆえに殺意が芽生える・・・ですね」
「そう。でも、あやつは、初めから、あたしにナイフを突きつけて愛を探すのよ。まるで、バラの枝を持つタンポポみたいでしょ?」
「バラの枝を持つタンポポ・・・」
「不幸せの切符を手に入れて列車に乗る雪子と、幸せの切符を失くしてしまったために途中下車出来なくなってなってしまった京子・・・。ってか、あんた、あたしと長話なんてしてていいの?どこか行くとこあったんじゃないの?」
「ええ、ほんとは、省吾君に会いに行こうと思っていたんですけど、その途中で雪子さんを見かけたものですから」
「それで、あやつの事が心配になって、あたしに?」
「ええ・・・まあ・・・なんていうか・・・。いや~、ま~、えへへっ」
「ふふっ、また、最初のあんたに戻っちゃた!」
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