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対価の罪
対価の罪・・・その15
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夏樹さんの言ってた通りだわ。
それに、京子が、なぜ夏樹さんを憎み続けなければ生きていけないのか・・・
夏樹さんに言われた時はぼんやりとしか分からなかったけど、今、やっと分かったような気がする。
最初は分からなかったのよね。
どうして、京子が夏樹さんを憎み続けなければ生きていけないのかって。
だって、そんなのって、京子の気持ちひとつでどうにでもなるわけだし。
それが、夏樹さんの言い方だと、まるで京子が何かの呪縛にでも縛られているみたいに。
そして、京子が、夏樹さんを憎む事をやめようとしても、やめられないように聞こえてきたのよね。
まるで、京子の意志ではどうにもならないところまできてしまっているかのように・・・。
でも、これが、夏樹さんが言ってた言葉(もう手遅れなのよ)の、意味だったんだわ。
(子供たちは、あたしじゃないのよ)夏樹さんの言葉・・・すごく寂しい言葉に思えてくる。
「亜晃君は家にお金を入れてるの?」
「どうして?」
「どうしてって、普通は生活費とて入れるんじゃないの?」
「それは貸家とか家のローンとかがある場合でしょ?うちはそんなのないから別に入れなくてもいいんだよ」
いいんだよ・・・って?
「でも、食費と電気料とかってあるじゃない?それはどうしているの?」
「別に入れてないよ。最初の頃は、家にお金を入れろとかってうるさかったけど今は何も言わないよ」
「そうなの・・・」
「それに、バイト代じゃそんな余裕もないし」
「そう・・・それでお母さんも何も言わないのね」
「まあ、そういう事になるかな。それでも、前は、お金を入れろってうるさかったけどね」
「普通はそうだと思うわよ」
「普通はでしょ?うちは普通じゃないから」
「でも、よくお母さんが何も言わなくなったわね?」
「あんまりうるさいから言ってやったんだ、誰のせいでこんな人生になったんだって!両親がしっかりしていれば、僕だって普通の会社に勤めて普通の生活が送れて、それなりの人生だったかもしれないんだぞ!って」
「そんな事を言ったの?」
「だって間違ってないでしょ?」
「私としては何とも言えないけど・・・」
「そしたら、それっきり何も言わなくなったけどね。でも、その代わりにおやじの悪口が増えたけど」
「そんなに・・・」
「そうだよ。何かにつけては、おやじのせいで自分の人生が台無しになったとか、こんな人生になるなら、やっぱり違う人と一緒になってればよかったとかって、毎日、言ってるよ」
「違う人って、お母さんにそんな人がいたのかしら・・・」
「いたらしいよ」
「うそ・・・ほんとに?」
「相手は公務員だったらしいよ。おやじと結婚する前に付き合ってたんだって」
「うそ・・・?」
「ほんとみたいだよ。でも、その話を聞いた時には、ちょっとカチンときたけどね」
「カチンとって、頭にきたって事?」
「うん。そんなとこ」
「そうなの。でも、それでどうして亜晃君が頭にくるの?」
「だって、それって、僕や省吾も生まれて来なければよかったんだって事でしょ?」
「どうして、そうなるの?」
「だって、母さんがおやじと結婚していなかったら、僕や省吾は生まれて来ないって事なんだよ」
う~ん・・・そういう事に関しては頭が良く回るのね。
でも、これも、夏樹さんが言ってた通りだわ・・・
結婚した事を否定してはいけない、否定するなら結婚した事ではなく別れる時期の方だって。
京子は、知らず知らずのうちに亜晃君や省吾君を傷つけているんだわ。
「でも、それは少し考え過ぎだと思うわよ」
「そう思ってるのは母さんの方でしょ?言われた側は言われた側で、受け取り方が違うんだよ」
「まあ、それはそうかもしれないけど。でも、お母さんはそんなつもりで言ったんじゃないと思うけどな」
「まあ、どっちでもいいけど・・・」
「でも、お母さんも、いつまでも父親の悪口を言ってても仕方がないわよね。もう、10年も前に離婚してるんだから」
「別に何とも思ってないし。それで、母さんが満足ならいいんじゃないかな?」
「それはそうかもしれないけど・・・」
「それに、母さんにはおやじの事を憎んでいてもらないと困るしね」
京子に、夏樹さんを憎んでいてもらわないと困る・・・?
それに、京子が、なぜ夏樹さんを憎み続けなければ生きていけないのか・・・
夏樹さんに言われた時はぼんやりとしか分からなかったけど、今、やっと分かったような気がする。
最初は分からなかったのよね。
どうして、京子が夏樹さんを憎み続けなければ生きていけないのかって。
だって、そんなのって、京子の気持ちひとつでどうにでもなるわけだし。
それが、夏樹さんの言い方だと、まるで京子が何かの呪縛にでも縛られているみたいに。
そして、京子が、夏樹さんを憎む事をやめようとしても、やめられないように聞こえてきたのよね。
まるで、京子の意志ではどうにもならないところまできてしまっているかのように・・・。
でも、これが、夏樹さんが言ってた言葉(もう手遅れなのよ)の、意味だったんだわ。
(子供たちは、あたしじゃないのよ)夏樹さんの言葉・・・すごく寂しい言葉に思えてくる。
「亜晃君は家にお金を入れてるの?」
「どうして?」
「どうしてって、普通は生活費とて入れるんじゃないの?」
「それは貸家とか家のローンとかがある場合でしょ?うちはそんなのないから別に入れなくてもいいんだよ」
いいんだよ・・・って?
「でも、食費と電気料とかってあるじゃない?それはどうしているの?」
「別に入れてないよ。最初の頃は、家にお金を入れろとかってうるさかったけど今は何も言わないよ」
「そうなの・・・」
「それに、バイト代じゃそんな余裕もないし」
「そう・・・それでお母さんも何も言わないのね」
「まあ、そういう事になるかな。それでも、前は、お金を入れろってうるさかったけどね」
「普通はそうだと思うわよ」
「普通はでしょ?うちは普通じゃないから」
「でも、よくお母さんが何も言わなくなったわね?」
「あんまりうるさいから言ってやったんだ、誰のせいでこんな人生になったんだって!両親がしっかりしていれば、僕だって普通の会社に勤めて普通の生活が送れて、それなりの人生だったかもしれないんだぞ!って」
「そんな事を言ったの?」
「だって間違ってないでしょ?」
「私としては何とも言えないけど・・・」
「そしたら、それっきり何も言わなくなったけどね。でも、その代わりにおやじの悪口が増えたけど」
「そんなに・・・」
「そうだよ。何かにつけては、おやじのせいで自分の人生が台無しになったとか、こんな人生になるなら、やっぱり違う人と一緒になってればよかったとかって、毎日、言ってるよ」
「違う人って、お母さんにそんな人がいたのかしら・・・」
「いたらしいよ」
「うそ・・・ほんとに?」
「相手は公務員だったらしいよ。おやじと結婚する前に付き合ってたんだって」
「うそ・・・?」
「ほんとみたいだよ。でも、その話を聞いた時には、ちょっとカチンときたけどね」
「カチンとって、頭にきたって事?」
「うん。そんなとこ」
「そうなの。でも、それでどうして亜晃君が頭にくるの?」
「だって、それって、僕や省吾も生まれて来なければよかったんだって事でしょ?」
「どうして、そうなるの?」
「だって、母さんがおやじと結婚していなかったら、僕や省吾は生まれて来ないって事なんだよ」
う~ん・・・そういう事に関しては頭が良く回るのね。
でも、これも、夏樹さんが言ってた通りだわ・・・
結婚した事を否定してはいけない、否定するなら結婚した事ではなく別れる時期の方だって。
京子は、知らず知らずのうちに亜晃君や省吾君を傷つけているんだわ。
「でも、それは少し考え過ぎだと思うわよ」
「そう思ってるのは母さんの方でしょ?言われた側は言われた側で、受け取り方が違うんだよ」
「まあ、それはそうかもしれないけど。でも、お母さんはそんなつもりで言ったんじゃないと思うけどな」
「まあ、どっちでもいいけど・・・」
「でも、お母さんも、いつまでも父親の悪口を言ってても仕方がないわよね。もう、10年も前に離婚してるんだから」
「別に何とも思ってないし。それで、母さんが満足ならいいんじゃないかな?」
「それはそうかもしれないけど・・・」
「それに、母さんにはおやじの事を憎んでいてもらないと困るしね」
京子に、夏樹さんを憎んでいてもらわないと困る・・・?
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