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対価の罪
対価の罪・・・その11
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「省吾君が、もう、うんざりって・・・どういう事なの?」
「どうって?言葉の通りですけど」
「確か、省吾君って、何年か、お父さんと暮らしていた時に、お父さんに幻滅したんじゃなかったの?」
「幻滅・・・?」
「違うの・・・?」
「ついでに、貧乏くじとかってやつでしょ?」
「えっ・・・?どうして、それを・・・?」
「どうしてって、母さんがそう言ってたんでしょ?」
「ええ・・・まあ・・・」
「母さんからしたら、そういう事にしておきたいんじゃないかな?」
「それじゃ、ほんとは違うの?」
「うん。その逆で、省吾が幻滅したのは自分にだよ!」
「自分に・・・?」
「うん。それに貧乏くじを引いたのは自分じゃなくて、おやじの方だって思ってるんじゃないかな?」
「ないかなって?省吾君がそう言ってたの?」
「うん。前に一度そんな事を言ってた事があったから」
「そうだったんだ・・・でも、どうして省吾君がそんな風に思ってるの?」
「省吾って、二番目でしょ?」
「二番目・・・あっ、次男って事ね」
「うん、そう。長男って何もしなくても色々かまってもらえるでしょ?でも、二番目ってさ、長男と違って自分から何かをアピールとかしないと、かまってもらえないんだよね」
「そうなんだ・・・」
「それに、省吾の下に弟でもいればまた話は変わったのかもしれないけど、省吾って二番目だけど末っ子でもあるでしょ?」
「ええ、まあ・・・」
「だから、二番目が持ってる自立心っていうか冒険心っていうか、そういう性格と、末っ子が持ってる世渡り上手みたいな性格とを一緒に持ってるみたいで」
「そうなんだ・・・」
「でもまあ、最初の頃は、おやじに幻滅してたみたいだったけど。商売人だのなんだのって威張ってたくせに、な~んにも出来ないんじゃないかってね。だから、省吾は、おやじが母さんと離婚して家を出た時に一緒について行って損したみたいに思ってたみたいだったし」
「それで、お父さんと暮らすのをやめて戻ってきたのね?」
「うん、そうみたい。だから、戻ってきた時は母さんと一緒におやじの悪口を言ってたみたいだし」
「そうなの・・・」
「でも、僕も最初の頃は省吾と同じで、母さんと一緒になっておやじの悪口を言ってたから、省吾の事をとやかくは言えないんだけどね」
「でも、今は、違うんでしょ?」
「うん。結局は、おやじと一緒に出たのが二番目の性格だったのかなって?」
「それじゃ、末っ子の性格は?」
「それが、今の省吾を後悔させているっていうか、悔やんでいるっていうか」
「どういう事なの・・・?」
「省吾は、おやじの機嫌を取っていれば、自分は大事にされるって思っていたみたい」
「自分は大事にされる・・・?」
「うん。だから、おやじと一緒に家を出て一緒に暮らすようになったまではいいんだけど、問題はその後みたいなんだ」
「その後・・・?」
「うん。ようは、おやじと一緒に暮らすようになってからは、とりあえず、おやじの機嫌を取っていれば何とかなるだろうみたいな。だから、自分はおやじの言う通りにやっていれば、難しい事はおやじが全部やってくれるだろうみたいな・・・」
「それが末っ子の性格なのね?でも、どうして、それが後悔になるの?」
「いつだったか省吾が言ってた事があるんだ。自分はおやじを助ける事が出来なかったって、それどころか助けようともしなかったって」
「お父さんを助ける・・・?」
「うん。でも、それを母さんに言ったみたいで、そうしたら母さんが、あんな人なんか助ける必要なんかないって。それに、あんたにそんな事が出来るわけないでしょ、とかって、けっこう色々言われたみたい」
直美は、この間の京子と会話をしていた時に事を思い出した。だから、あの時・・・。
私が、どうして省吾君は父親を助けようとは思わなかったのかしら?って訊いた時に、
京子が急に黙り込んでしまったんだ・・・。でも、どうして省吾君が後悔するのかしら?
「どうって?言葉の通りですけど」
「確か、省吾君って、何年か、お父さんと暮らしていた時に、お父さんに幻滅したんじゃなかったの?」
「幻滅・・・?」
「違うの・・・?」
「ついでに、貧乏くじとかってやつでしょ?」
「えっ・・・?どうして、それを・・・?」
「どうしてって、母さんがそう言ってたんでしょ?」
「ええ・・・まあ・・・」
「母さんからしたら、そういう事にしておきたいんじゃないかな?」
「それじゃ、ほんとは違うの?」
「うん。その逆で、省吾が幻滅したのは自分にだよ!」
「自分に・・・?」
「うん。それに貧乏くじを引いたのは自分じゃなくて、おやじの方だって思ってるんじゃないかな?」
「ないかなって?省吾君がそう言ってたの?」
「うん。前に一度そんな事を言ってた事があったから」
「そうだったんだ・・・でも、どうして省吾君がそんな風に思ってるの?」
「省吾って、二番目でしょ?」
「二番目・・・あっ、次男って事ね」
「うん、そう。長男って何もしなくても色々かまってもらえるでしょ?でも、二番目ってさ、長男と違って自分から何かをアピールとかしないと、かまってもらえないんだよね」
「そうなんだ・・・」
「それに、省吾の下に弟でもいればまた話は変わったのかもしれないけど、省吾って二番目だけど末っ子でもあるでしょ?」
「ええ、まあ・・・」
「だから、二番目が持ってる自立心っていうか冒険心っていうか、そういう性格と、末っ子が持ってる世渡り上手みたいな性格とを一緒に持ってるみたいで」
「そうなんだ・・・」
「でもまあ、最初の頃は、おやじに幻滅してたみたいだったけど。商売人だのなんだのって威張ってたくせに、な~んにも出来ないんじゃないかってね。だから、省吾は、おやじが母さんと離婚して家を出た時に一緒について行って損したみたいに思ってたみたいだったし」
「それで、お父さんと暮らすのをやめて戻ってきたのね?」
「うん、そうみたい。だから、戻ってきた時は母さんと一緒におやじの悪口を言ってたみたいだし」
「そうなの・・・」
「でも、僕も最初の頃は省吾と同じで、母さんと一緒になっておやじの悪口を言ってたから、省吾の事をとやかくは言えないんだけどね」
「でも、今は、違うんでしょ?」
「うん。結局は、おやじと一緒に出たのが二番目の性格だったのかなって?」
「それじゃ、末っ子の性格は?」
「それが、今の省吾を後悔させているっていうか、悔やんでいるっていうか」
「どういう事なの・・・?」
「省吾は、おやじの機嫌を取っていれば、自分は大事にされるって思っていたみたい」
「自分は大事にされる・・・?」
「うん。だから、おやじと一緒に家を出て一緒に暮らすようになったまではいいんだけど、問題はその後みたいなんだ」
「その後・・・?」
「うん。ようは、おやじと一緒に暮らすようになってからは、とりあえず、おやじの機嫌を取っていれば何とかなるだろうみたいな。だから、自分はおやじの言う通りにやっていれば、難しい事はおやじが全部やってくれるだろうみたいな・・・」
「それが末っ子の性格なのね?でも、どうして、それが後悔になるの?」
「いつだったか省吾が言ってた事があるんだ。自分はおやじを助ける事が出来なかったって、それどころか助けようともしなかったって」
「お父さんを助ける・・・?」
「うん。でも、それを母さんに言ったみたいで、そうしたら母さんが、あんな人なんか助ける必要なんかないって。それに、あんたにそんな事が出来るわけないでしょ、とかって、けっこう色々言われたみたい」
直美は、この間の京子と会話をしていた時に事を思い出した。だから、あの時・・・。
私が、どうして省吾君は父親を助けようとは思わなかったのかしら?って訊いた時に、
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