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対価の罪
対価の罪・・・その5
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「この人が、お母さんが愛した人・・・」
初めて見る夏樹の姿に、
愛奈は、自分の知らない、もう一人の母親に会えた気がして少し嬉しかった。
「でも、どうして、お母さんなのですか?」
「どうして・・・?」
「だって、こんなに綺麗な人なんだから、お相手ならいくらでも見つかると思うんですけど?」
「だから、雪子なんじゃないの?」
「いえ、だから、どうして、お母さんなのかなって?」
「どうして?雪子じゃダメなの?」
「だって、お母さんって、どちらかというと地味というか、目立たないというか・・・」
「そんな事はないと思うわよ。雪子ってけっこうおしゃれだし、洋服のセンスなんかもいいじゃない?」
「そうですか?私から見ると、どこにでもいる普通のお母さんだと思うんですけど・・・」
「そうお・・・?だって、雪子って、よく黒を着たりするでしょ?」
「えっ・・・?お母さん黒い洋服とかって持ってないですよ?」
「うそ・・・?じゃあ、あのペンギンスタイルとかは?」
「ペンギン・・・スタイル・・・ですか?」
「それじゃ、黒に花柄のスカートとか、長いカーディガンとかなら知ってるでしょ?」
「お母さん、そんな洋服は持ってないと思いますよ?」
「う・・・そ・・・?」
「あっ、そういえば、あの時・・・。私が、病院の駐車場でお母さんを見かけた時に、あれ?って、思った事はありました」
「病院の駐車場で?」
「はい。お母さんって、あーいう感じの洋服も着るんだって、ちょっとびっくりしましたから」
「あーいう感じの・・・?」
「はい、洋服というよりも、長いカーディガンで色が薄いピンク色だったんです。それで、どこかで買ったのかな?とは、思っていたんですけど。帰ってきた時には着ていなかったから、お相手の女性のカーディガンを着ていたんだと思ったので、別にお母さんには何も訊かなかったんですけど・・・。もしかして?」
「そ、もしかしなくても・・・。なるほどね!そうだったのね。」
「ん・・・?」
「それじゃ、もし、愛奈ちゃんが、雪子の、あのペンギンスタイルを見たら、きっと驚くわね!」
「あの・・・そのペンギンスタイルっていうのは、もしかしてペンギンの着ぐるみか何かですか?」
「ふふっ、違うわよ。黒のロングワンピに黒のカーディガンなんだけど、雪子って背が低いじゃない?それが全身黒でぴょこぴょこと歩くもんだから、まるでペンギンが歩いているみたいに見えちゃうのよ。これがまた可愛いのなんのって!すれ違う人たちが、みんな振り返っちゃうくらいなんだから!」
「うそみたい・・・あのお母さんがペンギン・・・」
それじゃ雪子、どこかで着替えていたのね・・・。
でも、どうして、そこまでして・・・?
そういえば、愛奈ちゃんが言ってたわよね。この家には、雪子が居た形跡がないって。
そこまでして自分を隠し続けていたなんて、ちょっと信じられないというかなんていうか。
それに、そういう生き方って見方を変えると、ちょっと、怖いような・・・。
「ねえ、裕子さん・・・?」
「あっ、えっ?なに?私、何か変な顔でもしてたかしら?」
「いえ、そうじゃなくて、電話・・・」
「電話・・・?」
「夏樹さんっていう人に・・・電話しないんですか?」
「えっ?そ、そ、そうね、それじゃ後で電話してみるわね!」
「後でじゃなくて、今、しないんですか?」
「今って・・・えっ?・・・今・・・?どうして・・・今?」
「ふふっ・・裕子さん慌ててる・・・やっぱり、夏樹さんという人と何かあったんですね?」
「何かって・・・別に、何もないんだけど・・・ちょっとね」
「ちょっと・・・ですか?」
「ええ、まあ。どちらかっていうと、ちょっと怖いのよね、夏樹さんって」
う~ん・・・まあ、怖いっていうのは嘘だけど・・・。
でも、愛奈ちゃんの前で夏樹さんに電話って、緊張するっていうか・・・。
そうじゃなくても、夏樹さんに電話する時って、毎回、緊張するし・・・。
「夏樹さんって人は、怖い人なんですか?」
「うん、まあ。怖いっていうか、何ていうか・・・まあ、そんな感じ」
「そんなに怖い人に、お母さんは会いに行ったんですか?」
いや、あの・・・あのね、愛奈ちゃん・・・。
初めて見る夏樹の姿に、
愛奈は、自分の知らない、もう一人の母親に会えた気がして少し嬉しかった。
「でも、どうして、お母さんなのですか?」
「どうして・・・?」
「だって、こんなに綺麗な人なんだから、お相手ならいくらでも見つかると思うんですけど?」
「だから、雪子なんじゃないの?」
「いえ、だから、どうして、お母さんなのかなって?」
「どうして?雪子じゃダメなの?」
「だって、お母さんって、どちらかというと地味というか、目立たないというか・・・」
「そんな事はないと思うわよ。雪子ってけっこうおしゃれだし、洋服のセンスなんかもいいじゃない?」
「そうですか?私から見ると、どこにでもいる普通のお母さんだと思うんですけど・・・」
「そうお・・・?だって、雪子って、よく黒を着たりするでしょ?」
「えっ・・・?お母さん黒い洋服とかって持ってないですよ?」
「うそ・・・?じゃあ、あのペンギンスタイルとかは?」
「ペンギン・・・スタイル・・・ですか?」
「それじゃ、黒に花柄のスカートとか、長いカーディガンとかなら知ってるでしょ?」
「お母さん、そんな洋服は持ってないと思いますよ?」
「う・・・そ・・・?」
「あっ、そういえば、あの時・・・。私が、病院の駐車場でお母さんを見かけた時に、あれ?って、思った事はありました」
「病院の駐車場で?」
「はい。お母さんって、あーいう感じの洋服も着るんだって、ちょっとびっくりしましたから」
「あーいう感じの・・・?」
「はい、洋服というよりも、長いカーディガンで色が薄いピンク色だったんです。それで、どこかで買ったのかな?とは、思っていたんですけど。帰ってきた時には着ていなかったから、お相手の女性のカーディガンを着ていたんだと思ったので、別にお母さんには何も訊かなかったんですけど・・・。もしかして?」
「そ、もしかしなくても・・・。なるほどね!そうだったのね。」
「ん・・・?」
「それじゃ、もし、愛奈ちゃんが、雪子の、あのペンギンスタイルを見たら、きっと驚くわね!」
「あの・・・そのペンギンスタイルっていうのは、もしかしてペンギンの着ぐるみか何かですか?」
「ふふっ、違うわよ。黒のロングワンピに黒のカーディガンなんだけど、雪子って背が低いじゃない?それが全身黒でぴょこぴょこと歩くもんだから、まるでペンギンが歩いているみたいに見えちゃうのよ。これがまた可愛いのなんのって!すれ違う人たちが、みんな振り返っちゃうくらいなんだから!」
「うそみたい・・・あのお母さんがペンギン・・・」
それじゃ雪子、どこかで着替えていたのね・・・。
でも、どうして、そこまでして・・・?
そういえば、愛奈ちゃんが言ってたわよね。この家には、雪子が居た形跡がないって。
そこまでして自分を隠し続けていたなんて、ちょっと信じられないというかなんていうか。
それに、そういう生き方って見方を変えると、ちょっと、怖いような・・・。
「ねえ、裕子さん・・・?」
「あっ、えっ?なに?私、何か変な顔でもしてたかしら?」
「いえ、そうじゃなくて、電話・・・」
「電話・・・?」
「夏樹さんっていう人に・・・電話しないんですか?」
「えっ?そ、そ、そうね、それじゃ後で電話してみるわね!」
「後でじゃなくて、今、しないんですか?」
「今って・・・えっ?・・・今・・・?どうして・・・今?」
「ふふっ・・裕子さん慌ててる・・・やっぱり、夏樹さんという人と何かあったんですね?」
「何かって・・・別に、何もないんだけど・・・ちょっとね」
「ちょっと・・・ですか?」
「ええ、まあ。どちらかっていうと、ちょっと怖いのよね、夏樹さんって」
う~ん・・・まあ、怖いっていうのは嘘だけど・・・。
でも、愛奈ちゃんの前で夏樹さんに電話って、緊張するっていうか・・・。
そうじゃなくても、夏樹さんに電話する時って、毎回、緊張するし・・・。
「夏樹さんって人は、怖い人なんですか?」
「うん、まあ。怖いっていうか、何ていうか・・・まあ、そんな感じ」
「そんなに怖い人に、お母さんは会いに行ったんですか?」
いや、あの・・・あのね、愛奈ちゃん・・・。
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