245 / 386
対価の罪
対価の罪・・・その5
しおりを挟む
「この人が、お母さんが愛した人・・・」
初めて見る夏樹の姿に、
愛奈は、自分の知らない、もう一人の母親に会えた気がして少し嬉しかった。
「でも、どうして、お母さんなのですか?」
「どうして・・・?」
「だって、こんなに綺麗な人なんだから、お相手ならいくらでも見つかると思うんですけど?」
「だから、雪子なんじゃないの?」
「いえ、だから、どうして、お母さんなのかなって?」
「どうして?雪子じゃダメなの?」
「だって、お母さんって、どちらかというと地味というか、目立たないというか・・・」
「そんな事はないと思うわよ。雪子ってけっこうおしゃれだし、洋服のセンスなんかもいいじゃない?」
「そうですか?私から見ると、どこにでもいる普通のお母さんだと思うんですけど・・・」
「そうお・・・?だって、雪子って、よく黒を着たりするでしょ?」
「えっ・・・?お母さん黒い洋服とかって持ってないですよ?」
「うそ・・・?じゃあ、あのペンギンスタイルとかは?」
「ペンギン・・・スタイル・・・ですか?」
「それじゃ、黒に花柄のスカートとか、長いカーディガンとかなら知ってるでしょ?」
「お母さん、そんな洋服は持ってないと思いますよ?」
「う・・・そ・・・?」
「あっ、そういえば、あの時・・・。私が、病院の駐車場でお母さんを見かけた時に、あれ?って、思った事はありました」
「病院の駐車場で?」
「はい。お母さんって、あーいう感じの洋服も着るんだって、ちょっとびっくりしましたから」
「あーいう感じの・・・?」
「はい、洋服というよりも、長いカーディガンで色が薄いピンク色だったんです。それで、どこかで買ったのかな?とは、思っていたんですけど。帰ってきた時には着ていなかったから、お相手の女性のカーディガンを着ていたんだと思ったので、別にお母さんには何も訊かなかったんですけど・・・。もしかして?」
「そ、もしかしなくても・・・。なるほどね!そうだったのね。」
「ん・・・?」
「それじゃ、もし、愛奈ちゃんが、雪子の、あのペンギンスタイルを見たら、きっと驚くわね!」
「あの・・・そのペンギンスタイルっていうのは、もしかしてペンギンの着ぐるみか何かですか?」
「ふふっ、違うわよ。黒のロングワンピに黒のカーディガンなんだけど、雪子って背が低いじゃない?それが全身黒でぴょこぴょこと歩くもんだから、まるでペンギンが歩いているみたいに見えちゃうのよ。これがまた可愛いのなんのって!すれ違う人たちが、みんな振り返っちゃうくらいなんだから!」
「うそみたい・・・あのお母さんがペンギン・・・」
それじゃ雪子、どこかで着替えていたのね・・・。
でも、どうして、そこまでして・・・?
そういえば、愛奈ちゃんが言ってたわよね。この家には、雪子が居た形跡がないって。
そこまでして自分を隠し続けていたなんて、ちょっと信じられないというかなんていうか。
それに、そういう生き方って見方を変えると、ちょっと、怖いような・・・。
「ねえ、裕子さん・・・?」
「あっ、えっ?なに?私、何か変な顔でもしてたかしら?」
「いえ、そうじゃなくて、電話・・・」
「電話・・・?」
「夏樹さんっていう人に・・・電話しないんですか?」
「えっ?そ、そ、そうね、それじゃ後で電話してみるわね!」
「後でじゃなくて、今、しないんですか?」
「今って・・・えっ?・・・今・・・?どうして・・・今?」
「ふふっ・・裕子さん慌ててる・・・やっぱり、夏樹さんという人と何かあったんですね?」
「何かって・・・別に、何もないんだけど・・・ちょっとね」
「ちょっと・・・ですか?」
「ええ、まあ。どちらかっていうと、ちょっと怖いのよね、夏樹さんって」
う~ん・・・まあ、怖いっていうのは嘘だけど・・・。
でも、愛奈ちゃんの前で夏樹さんに電話って、緊張するっていうか・・・。
そうじゃなくても、夏樹さんに電話する時って、毎回、緊張するし・・・。
「夏樹さんって人は、怖い人なんですか?」
「うん、まあ。怖いっていうか、何ていうか・・・まあ、そんな感じ」
「そんなに怖い人に、お母さんは会いに行ったんですか?」
いや、あの・・・あのね、愛奈ちゃん・・・。
初めて見る夏樹の姿に、
愛奈は、自分の知らない、もう一人の母親に会えた気がして少し嬉しかった。
「でも、どうして、お母さんなのですか?」
「どうして・・・?」
「だって、こんなに綺麗な人なんだから、お相手ならいくらでも見つかると思うんですけど?」
「だから、雪子なんじゃないの?」
「いえ、だから、どうして、お母さんなのかなって?」
「どうして?雪子じゃダメなの?」
「だって、お母さんって、どちらかというと地味というか、目立たないというか・・・」
「そんな事はないと思うわよ。雪子ってけっこうおしゃれだし、洋服のセンスなんかもいいじゃない?」
「そうですか?私から見ると、どこにでもいる普通のお母さんだと思うんですけど・・・」
「そうお・・・?だって、雪子って、よく黒を着たりするでしょ?」
「えっ・・・?お母さん黒い洋服とかって持ってないですよ?」
「うそ・・・?じゃあ、あのペンギンスタイルとかは?」
「ペンギン・・・スタイル・・・ですか?」
「それじゃ、黒に花柄のスカートとか、長いカーディガンとかなら知ってるでしょ?」
「お母さん、そんな洋服は持ってないと思いますよ?」
「う・・・そ・・・?」
「あっ、そういえば、あの時・・・。私が、病院の駐車場でお母さんを見かけた時に、あれ?って、思った事はありました」
「病院の駐車場で?」
「はい。お母さんって、あーいう感じの洋服も着るんだって、ちょっとびっくりしましたから」
「あーいう感じの・・・?」
「はい、洋服というよりも、長いカーディガンで色が薄いピンク色だったんです。それで、どこかで買ったのかな?とは、思っていたんですけど。帰ってきた時には着ていなかったから、お相手の女性のカーディガンを着ていたんだと思ったので、別にお母さんには何も訊かなかったんですけど・・・。もしかして?」
「そ、もしかしなくても・・・。なるほどね!そうだったのね。」
「ん・・・?」
「それじゃ、もし、愛奈ちゃんが、雪子の、あのペンギンスタイルを見たら、きっと驚くわね!」
「あの・・・そのペンギンスタイルっていうのは、もしかしてペンギンの着ぐるみか何かですか?」
「ふふっ、違うわよ。黒のロングワンピに黒のカーディガンなんだけど、雪子って背が低いじゃない?それが全身黒でぴょこぴょこと歩くもんだから、まるでペンギンが歩いているみたいに見えちゃうのよ。これがまた可愛いのなんのって!すれ違う人たちが、みんな振り返っちゃうくらいなんだから!」
「うそみたい・・・あのお母さんがペンギン・・・」
それじゃ雪子、どこかで着替えていたのね・・・。
でも、どうして、そこまでして・・・?
そういえば、愛奈ちゃんが言ってたわよね。この家には、雪子が居た形跡がないって。
そこまでして自分を隠し続けていたなんて、ちょっと信じられないというかなんていうか。
それに、そういう生き方って見方を変えると、ちょっと、怖いような・・・。
「ねえ、裕子さん・・・?」
「あっ、えっ?なに?私、何か変な顔でもしてたかしら?」
「いえ、そうじゃなくて、電話・・・」
「電話・・・?」
「夏樹さんっていう人に・・・電話しないんですか?」
「えっ?そ、そ、そうね、それじゃ後で電話してみるわね!」
「後でじゃなくて、今、しないんですか?」
「今って・・・えっ?・・・今・・・?どうして・・・今?」
「ふふっ・・裕子さん慌ててる・・・やっぱり、夏樹さんという人と何かあったんですね?」
「何かって・・・別に、何もないんだけど・・・ちょっとね」
「ちょっと・・・ですか?」
「ええ、まあ。どちらかっていうと、ちょっと怖いのよね、夏樹さんって」
う~ん・・・まあ、怖いっていうのは嘘だけど・・・。
でも、愛奈ちゃんの前で夏樹さんに電話って、緊張するっていうか・・・。
そうじゃなくても、夏樹さんに電話する時って、毎回、緊張するし・・・。
「夏樹さんって人は、怖い人なんですか?」
「うん、まあ。怖いっていうか、何ていうか・・・まあ、そんな感じ」
「そんなに怖い人に、お母さんは会いに行ったんですか?」
いや、あの・・・あのね、愛奈ちゃん・・・。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる