愛して欲しいと言えたなら

zonbitan

文字の大きさ
上 下
243 / 386
対価の罪

対価の罪・・・その3

しおりを挟む
しかし、今のこの状況なんだけど、どうしたらいいのかしら?
今の愛奈ちゃんに、その場しのぎで誤魔化してみても、
たとへ、この先ずっと、今のまま、しらを切り通したとしても、
もうすでに、雪子は、この家にはいないわけだし・・・。

それに、雪子が、離婚届まで残して家を出たという事は、
きっと、もう二度と、愛奈ちゃんたちの住むこの家には戻ってこないつもりなのだろうし。

「裕子さん?どうかしたんですか?」

「う~ん・・・どうしたらいいのかしら?って」

「お母さんの事ですか?」

裕子は、今の愛奈に話す話さないを考えるよりも、この先の愛奈の事が気になっていた。
確かに、愛奈は彼女なりに、母親である雪子の心情を理解しようとしているように見えるのだが。
事は、そう単純ではないからである・・・。
それは、愛奈の父親であり雪子の旦那の立場である。

長男の翔太君も愛奈ちゃんと同じで、とりあえずはもう大人なんだし何よりも男なのだから、
それほど、母親に対しての執着心は持っていないだろうし、
たとへ、この先、両親が離婚する事になったとしても、女々しく騒ぐ事もないと思うのよね。

問題は旦那の方。
今まで、良い家庭、良い家族、そして優しく可愛い妻に物分かりの良い子供たち。
それが、雪子が家を出たというだけで、
今まで作り上げてきた良い家庭、良い家族が、壊れちゃうわけだし。

何よりも、世間体を気にする旦那なのだから、旦那の実家や親せき、
それと、務めている職場での立場などなど、
数え上げれば、きりがないほどの恥をかくかもしれないわけでしょ?

このまま雪子の気持ちを尊重して、置いていった離婚届にポンと判を押すとは到底思えないし。
特に、良い旦那、良い父親を演じている男に限って、往生際が悪い男が多いしね。

その点、私の旦那の場合は普段が私の下僕みたいなものだし、それに私の・・・まあ、いいわ。
それよりも、やっぱり、愛奈ちゃんには話した方がいいのかもしれないわね。
ただ、問題はどこまで話をしたらいいのか?・・・なんだけど。

「ねえ、愛奈ちゃん・・・?」

「なんでしょうか・・・?」

「聞きたい?雪子の事・・・」

「やっぱり、何か知ってるんですね?」

ふふっ、やっぱり、まだ子供ね。
夏樹さんなら、そうは切り返してこないんだろうけど。
というか、私ったら、どうしてこうも夏樹さんと愛奈ちゃんを比べちゃうのかしら?

「ええ、愛奈ちゃんに嘘をついても、愛奈ちゃんは勘が鋭いからすぐにバレちゃうと思うの。だから、嘘は言わないわ。ただ、正直に言って、私も、今回の雪子の行動の全部を知っていたわけじゃないのよ。それでもいい?」

「あっ、はい・・・。でも、私はそんなに勘が鋭くなんてないですよ」

「でも、愛奈ちゃんを見てると、本当、あの人によく似ているわって思っちゃうわ」

「あの人って・・・?」

「ほら?愛奈ちゃんが、いつか、おじいちゃんのお見舞いに行った時に雪子が会っていたっていう」

「おじいちゃんの?って、あの、もしかして病院の駐車場での・・・ですか?」

「ええ・・・。実はね・・・雪子は、その女性に会いに行ったの」

「あの時の女の人に・・・ですか?」

「ええ、そうよ。確かに。愛奈ちゃんの言うように、雪子が、あの人に会いに行くのは知ってたけど、でも、いつ、会いに行くのかは知らなかったの」

「でも、どうして、あの時の女の人に会いに行くのに離婚届を置いていくんですか?」

「だから、私もビックリしたのよ!雪子が、私に言ったのは、あの人に会いに行く前に、旦那さんが変に心配しないように、あの人の写真を旦那さんに見せてから会いに行ってくるって。だから、私も、どうして離婚届?って、思ったのよ」

「というよりも、裕子さん、あの時の女の人を知っていたんですね」

「女の人?・・・そうね、知ってたわ。こめんね、隠していて。でも、雪子にも、誰にも知られたくない秘密くらいあってもいいでしょ?」

「何となく分かります。でも、あのお母さんがって?ホントに今でも信じられないんです」

「う~ん・・・それを言われると、私も、なんて答えたらいいのか、ちょっと悩んじゃうけど」

「でも、人はそれぞれだと思うんです。たとへ、その相手が女性だったとしても、それが、お母さんが選んだ生き方なら、私は応援したいなって思います」

いや・・・あのね・・・愛奈ちゃん?
ちょっと、夏樹さん。助けて欲しいんですけど・・・
(ヘックション!。ちょっと、くま===っ!!)
(また、誰か、あたしの悪口を言ってるみたいよ!や~ね~もう!)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

М女と三人の少年

浅野浩二
恋愛
SМ的恋愛小説。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

処理中です...