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対価の罪
対価の罪・・・その2
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でも・・・愛奈ちゃん、ショック!って感じとは、少し違うような気がするのよね。
さっき喫茶店で電話を受けた時も、ちょっと変だわ?って思っていたんだけど、今も、そうよね?
普通なら、どうしよう?どうしよう?って、
会話も支離滅裂な感じになると思うんだけど、なんか違うのよね。
とりあえず、玄関の前での立ち話もなんなので、愛奈の案内で室内へと入っていく。
玄関を上がってすぐの廊下を、少し進むと右側がリビングになっている。
一般的な建売住宅というのは、どこか殺風景な感じがするものなのだが、
妙に整理整頓がなされていると、余計に味気なさが温かみのない空気を漂わせているようである。
相変わらず、何もないというか、余計なものがないというか・・・。
まあ、言い方を変えれば、整理整頓されている綺麗な空間という事になるのかしら?
リビングへ入ると、少し長いテーブルが真ん中あたりに置いてある。
そして、そのテーブルを挟んで大きめのテレビ、その反対側には長いソファがある。
「それで、雪子が置いていったっていう離婚届は?」
「あっ、ここにあります。私が来た時は、そこのテーブルの上に置かれていたんですけど。もし、誰か帰ってきたら大変かと思って、私が持っていました」
「その方がいいわね!・・・。そういえば、愛奈ちゃん?雪子の部屋のパソコンとか確認してみたの?」
「あの・・・裕子さんは見ないんですか?」
「見ないって、何を・・・?」
「お母さんが置いていった離婚届?」
「見ても何も変わらないから。それよりも、パソコンの方は?」
「それが・・・」
「どうかしたの?」
「ないんです・・・」
「ない・・・?あっ、そっか、それもそうよね、確かノートパソコンだったわよね?」
「う~ん・・・この場合はどちらでしょう?」
「えっ・・・?なに?」
「裕子さんが、本当に何も知らなかったから慌ててるのか?それとも、お母さんが、何か行き先が分かるような、手がかりになるような物でも残していないか心配だったのか?な~んて」
「ちょっと、愛奈ちゃん?」
「へへっ・・・。裕子さんはコーヒーがいいですか?それともミルクティーの方がいいですか?」
「まったく、もう~・・・。愛奈ちゃんと同じのでいいわよ」
しかし、まあ・・・愛奈ちゃんって本当は夏樹さんの?だったりして?
時々、グサッとくるような事を言っても、
なぜか憎めないところなんて夏樹さんにそっくりなんだけど。
「ねえ、愛奈ちゃん?愛奈ちゃんは、お母さんがいなくなってショックじゃないの?」
「どうしてですか・・・?」
う~ん・・・その訊き返し方・・・普通は違うと思うんだけど・・・。
「どうしてって・・・だって、お母さんがいなくなったのよ?」
「そなのでありますか?」
「えっ・・・?」
「はい、今日はミルクティーにしてみましたので」
愛奈は、少しの笑みを浮かべながら、ミルクティーの入ったカップを裕子の前に置いた。
「ちょっと愛奈ちゃん?今の・・・?」
「なんでありますか?・・・な~んて。これって、いつも、お母さんがぬいぐるみさんとお話をする時に使う言葉なんですよね」
「そうなの・・・?」
さっきとは少し違う笑みを浮かべながら、
ミルクティーにお砂糖を入れる愛奈が、ぽつりと言葉を声にする。
「本当は・・・私ね、嬉しいんです」
「嬉しい・・・?」
「嬉しいっていうか、ほっとしたっていうか・・・」
「それって、雪子がいなくなったからって事に?」
「いえ、そうじゃなくて・・・。う~ん、なんて言ったらいいかな?」
「雪子が、雪子らしい生き方を選んだから?」
「ぬいぐるみさんとお話をしている時のお母さんって、とっても嬉しそうにお話をしているんですよ」
「雪子が、ぬいぐるみとお話をしているのを愛奈ちゃん見てたの?」
「いえ、見てはいないですけど、時々、話し声が聞こえたりしてたから」
「そうだったの・・・」
「でも、今の裕子さんの言葉で安心しました」
「私の言葉に?どうして・・・?」
「だって、さっき、お母さんがお母さんらしい生き方を選んだからって言ったから」
「ええ、確かにそう言ったけど。でも、それでどうして愛奈ちゃんが安心するの?」
「だって、その言葉って、少なくてもお母さんが悲観して家を出たわけじゃないって事ですよね?」
あっ・・・愛奈ちゃんの、この思考回路って、やっぱり夏樹さんだわ・・・。
さっき喫茶店で電話を受けた時も、ちょっと変だわ?って思っていたんだけど、今も、そうよね?
普通なら、どうしよう?どうしよう?って、
会話も支離滅裂な感じになると思うんだけど、なんか違うのよね。
とりあえず、玄関の前での立ち話もなんなので、愛奈の案内で室内へと入っていく。
玄関を上がってすぐの廊下を、少し進むと右側がリビングになっている。
一般的な建売住宅というのは、どこか殺風景な感じがするものなのだが、
妙に整理整頓がなされていると、余計に味気なさが温かみのない空気を漂わせているようである。
相変わらず、何もないというか、余計なものがないというか・・・。
まあ、言い方を変えれば、整理整頓されている綺麗な空間という事になるのかしら?
リビングへ入ると、少し長いテーブルが真ん中あたりに置いてある。
そして、そのテーブルを挟んで大きめのテレビ、その反対側には長いソファがある。
「それで、雪子が置いていったっていう離婚届は?」
「あっ、ここにあります。私が来た時は、そこのテーブルの上に置かれていたんですけど。もし、誰か帰ってきたら大変かと思って、私が持っていました」
「その方がいいわね!・・・。そういえば、愛奈ちゃん?雪子の部屋のパソコンとか確認してみたの?」
「あの・・・裕子さんは見ないんですか?」
「見ないって、何を・・・?」
「お母さんが置いていった離婚届?」
「見ても何も変わらないから。それよりも、パソコンの方は?」
「それが・・・」
「どうかしたの?」
「ないんです・・・」
「ない・・・?あっ、そっか、それもそうよね、確かノートパソコンだったわよね?」
「う~ん・・・この場合はどちらでしょう?」
「えっ・・・?なに?」
「裕子さんが、本当に何も知らなかったから慌ててるのか?それとも、お母さんが、何か行き先が分かるような、手がかりになるような物でも残していないか心配だったのか?な~んて」
「ちょっと、愛奈ちゃん?」
「へへっ・・・。裕子さんはコーヒーがいいですか?それともミルクティーの方がいいですか?」
「まったく、もう~・・・。愛奈ちゃんと同じのでいいわよ」
しかし、まあ・・・愛奈ちゃんって本当は夏樹さんの?だったりして?
時々、グサッとくるような事を言っても、
なぜか憎めないところなんて夏樹さんにそっくりなんだけど。
「ねえ、愛奈ちゃん?愛奈ちゃんは、お母さんがいなくなってショックじゃないの?」
「どうしてですか・・・?」
う~ん・・・その訊き返し方・・・普通は違うと思うんだけど・・・。
「どうしてって・・・だって、お母さんがいなくなったのよ?」
「そなのでありますか?」
「えっ・・・?」
「はい、今日はミルクティーにしてみましたので」
愛奈は、少しの笑みを浮かべながら、ミルクティーの入ったカップを裕子の前に置いた。
「ちょっと愛奈ちゃん?今の・・・?」
「なんでありますか?・・・な~んて。これって、いつも、お母さんがぬいぐるみさんとお話をする時に使う言葉なんですよね」
「そうなの・・・?」
さっきとは少し違う笑みを浮かべながら、
ミルクティーにお砂糖を入れる愛奈が、ぽつりと言葉を声にする。
「本当は・・・私ね、嬉しいんです」
「嬉しい・・・?」
「嬉しいっていうか、ほっとしたっていうか・・・」
「それって、雪子がいなくなったからって事に?」
「いえ、そうじゃなくて・・・。う~ん、なんて言ったらいいかな?」
「雪子が、雪子らしい生き方を選んだから?」
「ぬいぐるみさんとお話をしている時のお母さんって、とっても嬉しそうにお話をしているんですよ」
「雪子が、ぬいぐるみとお話をしているのを愛奈ちゃん見てたの?」
「いえ、見てはいないですけど、時々、話し声が聞こえたりしてたから」
「そうだったの・・・」
「でも、今の裕子さんの言葉で安心しました」
「私の言葉に?どうして・・・?」
「だって、さっき、お母さんがお母さんらしい生き方を選んだからって言ったから」
「ええ、確かにそう言ったけど。でも、それでどうして愛奈ちゃんが安心するの?」
「だって、その言葉って、少なくてもお母さんが悲観して家を出たわけじゃないって事ですよね?」
あっ・・・愛奈ちゃんの、この思考回路って、やっぱり夏樹さんだわ・・・。
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