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対価の罪
対価の罪・・・その1
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裕子は、愛奈の元へ向かうタクシーの中で、先程の、マスターの言葉を思い出していた。
「いつからなのか、知らず知らずのうちに、雪子様の心の奥底で芽生えていた(生きている矛盾)。」
「そして、それは、35年を経て動き出す雪子様の想いが、対価の罪の中へ自ら手を染めていくのかもしれません。」
そう、マスターは言っていたけど、私って語学が弱いのよね~。
もう少し、勉強しておくんだったわ。
しかし、最後の最後に、雪子が、あの指輪を持っていったというのには、正直、驚いたけど。
でも、最後のキーワードが指輪って、いったい、どういう意味なのかしら?
まあ、私の頭の構造では、どのみち理解不能なのだから、
日を改めて、マスターとお話をする時に詳しく訊いてみるとして、今は、愛奈ちゃんの方よね。
しかし、雪子には参ったわ。
まさか、いきなりトップギアに入れるような行動を取るなんて。
愛奈ちゃんは、薄々は何か感づいていたみたいだったから、それほどではないとは思うけど、
翔太君と旦那さんにしてみたら、たまったもんじゃないわよね。
ある日、突然、母親であり妻である雪子が、姿を消してしまうんだから。
しかも、テーブルの上には離婚届が一枚・・・
まったく、もう、テレビドラマじゃないんだからさ。
などと、色々考えてはみても、答えが見つからないまま裕子を乗せたタクシーは、
愛奈が待つ住宅へと走り続ける。とはいえ、雪子の逃亡劇は、まだ始まったばかりなのである。
住宅の前まで来ると、愛奈が玄関の前で待っていた。
裕子は、タクシー代を支払うと、何とも言えない表情を隠したまま、愛奈の待つ玄関へと歩いて行った。
「すみません、裕子おばさん。急に、お電話を差し上げてしまって」
「う~ん・・・おばさんじゃなくて(さん)でいいわよ・・・。というより、お願い(さん)にして」
「あっ・・・はい」
「でも、雪子がいなくなったのは本当なの?」
「なのだと思います・・・」
「なのだとって、それじゃ、まだ、いなくなったのかどうか、分からないという事なの?」
「でも、きっと、いなくなったんだと思います。だって、まさかテーブルの上に離婚届を置いたまま、普通に帰って来るとは、ちょっと思えないような・・・」
「まあ、言われてみれば、確かにそうかもしれないわね。でも、突然なの?それとも、雪子がいなくなる前に、何か気になったような事とかはなかったの?」
「それが、全然なかったんです」
まあ、確かにそうよね。
雪子の事だから、その辺の手抜かりはないとは思ったけど。
「もう、雪子ったら?いったい、どうしちゃったのかしら?」
「裕子さんには、何か言ってなかったんですか?」
「それが全然。先週も、いつものように喫茶店で話したけど、別に変った様子なんてなかったし。何かあれば私に相談すると思うんだけど、そんな素振りもなかったのよね」
「そうなんですか・・・。裕子さんにも何も言わないでいなくなったんですね」
「愛奈ちゃん?そこはかとなく、私を疑っていない?」
「いえ、そんな事はありません、ただ・・・」
「ただ・・・な~に?」
「何となく、そういうところって、お母さんらしいかなって?」
「私としては、ちょっとショック!っていうか、雪子にとっての私の存在って、その程度だったのかしら?って、思ってしまうわ」
裕子としては、別に嘘をついているわけではないのだが、
裕子を見る愛奈の視線は、そうは言っていないようである。
「な~に?やっぱり、疑ってるんでしょ?」
「いえ、そういう意味じゃないんですけど・・・」
「まあね。私を疑わない方が無理があるのは分かるけど。でも、本当に知らなかったのよ!」
「いつ、いなくなるのか・・・。でしょ?」
「えっ・・・?」
「お母さんがいなくなる事は知ってたけど、いつ、いなくなるのかは知らなかったという事なのかな?って、ちょっと思っちゃっいました・・・。すみません、変な事を言っちゃって」
お~い、雪子・・・。
愛奈ちゃんには、夏樹さんの遺伝子が入っているとしか思えないんだけど・・・・違う?
「いつからなのか、知らず知らずのうちに、雪子様の心の奥底で芽生えていた(生きている矛盾)。」
「そして、それは、35年を経て動き出す雪子様の想いが、対価の罪の中へ自ら手を染めていくのかもしれません。」
そう、マスターは言っていたけど、私って語学が弱いのよね~。
もう少し、勉強しておくんだったわ。
しかし、最後の最後に、雪子が、あの指輪を持っていったというのには、正直、驚いたけど。
でも、最後のキーワードが指輪って、いったい、どういう意味なのかしら?
まあ、私の頭の構造では、どのみち理解不能なのだから、
日を改めて、マスターとお話をする時に詳しく訊いてみるとして、今は、愛奈ちゃんの方よね。
しかし、雪子には参ったわ。
まさか、いきなりトップギアに入れるような行動を取るなんて。
愛奈ちゃんは、薄々は何か感づいていたみたいだったから、それほどではないとは思うけど、
翔太君と旦那さんにしてみたら、たまったもんじゃないわよね。
ある日、突然、母親であり妻である雪子が、姿を消してしまうんだから。
しかも、テーブルの上には離婚届が一枚・・・
まったく、もう、テレビドラマじゃないんだからさ。
などと、色々考えてはみても、答えが見つからないまま裕子を乗せたタクシーは、
愛奈が待つ住宅へと走り続ける。とはいえ、雪子の逃亡劇は、まだ始まったばかりなのである。
住宅の前まで来ると、愛奈が玄関の前で待っていた。
裕子は、タクシー代を支払うと、何とも言えない表情を隠したまま、愛奈の待つ玄関へと歩いて行った。
「すみません、裕子おばさん。急に、お電話を差し上げてしまって」
「う~ん・・・おばさんじゃなくて(さん)でいいわよ・・・。というより、お願い(さん)にして」
「あっ・・・はい」
「でも、雪子がいなくなったのは本当なの?」
「なのだと思います・・・」
「なのだとって、それじゃ、まだ、いなくなったのかどうか、分からないという事なの?」
「でも、きっと、いなくなったんだと思います。だって、まさかテーブルの上に離婚届を置いたまま、普通に帰って来るとは、ちょっと思えないような・・・」
「まあ、言われてみれば、確かにそうかもしれないわね。でも、突然なの?それとも、雪子がいなくなる前に、何か気になったような事とかはなかったの?」
「それが、全然なかったんです」
まあ、確かにそうよね。
雪子の事だから、その辺の手抜かりはないとは思ったけど。
「もう、雪子ったら?いったい、どうしちゃったのかしら?」
「裕子さんには、何か言ってなかったんですか?」
「それが全然。先週も、いつものように喫茶店で話したけど、別に変った様子なんてなかったし。何かあれば私に相談すると思うんだけど、そんな素振りもなかったのよね」
「そうなんですか・・・。裕子さんにも何も言わないでいなくなったんですね」
「愛奈ちゃん?そこはかとなく、私を疑っていない?」
「いえ、そんな事はありません、ただ・・・」
「ただ・・・な~に?」
「何となく、そういうところって、お母さんらしいかなって?」
「私としては、ちょっとショック!っていうか、雪子にとっての私の存在って、その程度だったのかしら?って、思ってしまうわ」
裕子としては、別に嘘をついているわけではないのだが、
裕子を見る愛奈の視線は、そうは言っていないようである。
「な~に?やっぱり、疑ってるんでしょ?」
「いえ、そういう意味じゃないんですけど・・・」
「まあね。私を疑わない方が無理があるのは分かるけど。でも、本当に知らなかったのよ!」
「いつ、いなくなるのか・・・。でしょ?」
「えっ・・・?」
「お母さんがいなくなる事は知ってたけど、いつ、いなくなるのかは知らなかったという事なのかな?って、ちょっと思っちゃっいました・・・。すみません、変な事を言っちゃって」
お~い、雪子・・・。
愛奈ちゃんには、夏樹さんの遺伝子が入っているとしか思えないんだけど・・・・違う?
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