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生きている矛盾
生きている矛盾・・・その6
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「頑張ったね!って?」
「うん。ふーちゃん、頑張って生きたねって!伝えたかったんだ!」
頑張って生きたね!・・・。きっと、雪子だけなのかもしれないわね。
夏樹さんに、そんな言葉を伝えることが出来る人なんて、きっと、雪子だけ。
でも、その一言を伝えるために、あの日、夏樹さんに会いに行ったなんて。
ちょっと私には理解出来ないというか、そういう考えさえも思いつかないというか。
私なんて、もしかして(焼け木杭に・・・)みたいな事しか考えていなかったなんて、
あまりに浅はか過ぎて、ちょっと恥ずかしいわね。
世の中には、色々な愛のカタチや愛し方、そして、愛の想い出や愛の悲しみがあると思うし、
私も、この歳になるまで色々見てきたつもりだったけど・・・。
こんな愛し方をする人がいたなんて、しかも、それが私の身近に、しかも、それが雪子だったなんて。
でも、その相手が夏樹さんなだけに嬉しいような、それでいてどこか悲しいような気がするのは、
きっと、私が、雪子のように夏樹さんを愛せなかったから・・・なのかな?
「それで、雪子は、いつ、夏樹さんに会いに行くの?」
「うん。会いに行く日は決まってるんだ!」
「決まってる?決めているじゃなくて?決まってるの?」
「うん、そうだよ!」
「で、夏樹さんに会いに行く日とかって、もう伝えてあるの?」
「ないよ!」
「ないよって・・・だって、もう決まってるんでしょ?」
「うん、決まってる」
「そうは言っても、夏樹さんは、雪子がいつ会いに来るのかって知らないんでしょ?」
「知ってるんじゃないかな?」
「知ってる?雪子が教えてもいないのに?夏樹さんは、雪子がいつ会いに来るのかって知ってるの?」
「うん。それに、もしかしたら、怯えていたりして?ふふっ」
「怯えてるって、夏樹さんが?」
「うん。ふーちゃんの心の部屋の中にある、誰にも開けて欲しくない扉を開けちゃうから!」
夏樹さんの心の部屋の中にある、誰にも開けられたくない扉?
まあ、確かに、人には、それぞれ誰にも知られたくない事ってあるのは分かるし、
夏樹さんにも、そういう部分っていうか、秘密っていうか、そういうのがあるとは思うけど、
私が驚くのは、その扉を、雪子が知ってるって事だわ!
でも、確か、雪子って、夏樹さんとは35年も会ってなかったはずよね?
「雪子は、知ってるの?」
「うん、知ってる・・・っていうか、分かっちゃったかもしれないんだ!」
「でも、まだ、ハッキリとは、それが見えていないわけね」
「うん。ただ・・・」
「ただ・・・?」
「ふーちゃんなら、きっと、誰の生活も壊さないで終わりにする方法を選ぶと思うんだよね」
「誰の生活も壊さないで・・・?」
「うん・・・それで・・・」
「それで、夏樹さんに、それを確かめに会いに行かなきゃいけないわけね」
「確かめの方は、ちょっと違うけど、でも、その先だから同じかな!」
「その先?」
「うん。でも、その先は、私にも、まだ分からないんだけどね!」
「そうなの・・・」
「でも、それも、もうすぐ分かると思うし」
「う~ん・・・。それで、いつ、夏樹さんに会いに行く予定なの?」
「まだ、分かんない・・・」
「まだ、分かんないって。それじゃ、私も、手助けが出来ないじゃない?」
「手助け・・・?」
「そうよ、そんなの急に、今日、明日、なんて言われても一応は準備だってあるでしょ?」
「違うよ・・・」
「えっ?違うって・・・。雪子が、私に頼みたいっていうのは、夏樹さんに会いに行く時の手助けとか、アリバイ作りとかじゃないの?」
「違うよ。裕子に迷惑が掛かるような事なんて、お願いしないですよ」
「迷惑だなんて、何、言ってるのよ、水臭いわね」
「ありがと。でも、裕子にお願いしたいのはそっちじゃないんだ」
「それじゃ、私に、お願いっていうのは?」
「うんとね、私を探さないで欲しいんだ」
「探さないで欲しい・・・?」
「ふーちゃんに会いに行った後の、私を、探さないで放っておいて欲しいんだ」
「放っておいてって・・・雪子?」
「それが、私が、裕子にする最初で最後のお願いなの」
探さないで放っておいて欲しいなんて、悲しい言葉を、嬉しそうに話す雪子。
そんな雪子を見ていると、あの時のマスターの言葉が、頭の中をよぎっていくのを感じた裕子は、
この先の、雪子の未来が、不安と現実が絡み合いながら歪んでいくような気がしてならなかった。
「うん。ふーちゃん、頑張って生きたねって!伝えたかったんだ!」
頑張って生きたね!・・・。きっと、雪子だけなのかもしれないわね。
夏樹さんに、そんな言葉を伝えることが出来る人なんて、きっと、雪子だけ。
でも、その一言を伝えるために、あの日、夏樹さんに会いに行ったなんて。
ちょっと私には理解出来ないというか、そういう考えさえも思いつかないというか。
私なんて、もしかして(焼け木杭に・・・)みたいな事しか考えていなかったなんて、
あまりに浅はか過ぎて、ちょっと恥ずかしいわね。
世の中には、色々な愛のカタチや愛し方、そして、愛の想い出や愛の悲しみがあると思うし、
私も、この歳になるまで色々見てきたつもりだったけど・・・。
こんな愛し方をする人がいたなんて、しかも、それが私の身近に、しかも、それが雪子だったなんて。
でも、その相手が夏樹さんなだけに嬉しいような、それでいてどこか悲しいような気がするのは、
きっと、私が、雪子のように夏樹さんを愛せなかったから・・・なのかな?
「それで、雪子は、いつ、夏樹さんに会いに行くの?」
「うん。会いに行く日は決まってるんだ!」
「決まってる?決めているじゃなくて?決まってるの?」
「うん、そうだよ!」
「で、夏樹さんに会いに行く日とかって、もう伝えてあるの?」
「ないよ!」
「ないよって・・・だって、もう決まってるんでしょ?」
「うん、決まってる」
「そうは言っても、夏樹さんは、雪子がいつ会いに来るのかって知らないんでしょ?」
「知ってるんじゃないかな?」
「知ってる?雪子が教えてもいないのに?夏樹さんは、雪子がいつ会いに来るのかって知ってるの?」
「うん。それに、もしかしたら、怯えていたりして?ふふっ」
「怯えてるって、夏樹さんが?」
「うん。ふーちゃんの心の部屋の中にある、誰にも開けて欲しくない扉を開けちゃうから!」
夏樹さんの心の部屋の中にある、誰にも開けられたくない扉?
まあ、確かに、人には、それぞれ誰にも知られたくない事ってあるのは分かるし、
夏樹さんにも、そういう部分っていうか、秘密っていうか、そういうのがあるとは思うけど、
私が驚くのは、その扉を、雪子が知ってるって事だわ!
でも、確か、雪子って、夏樹さんとは35年も会ってなかったはずよね?
「雪子は、知ってるの?」
「うん、知ってる・・・っていうか、分かっちゃったかもしれないんだ!」
「でも、まだ、ハッキリとは、それが見えていないわけね」
「うん。ただ・・・」
「ただ・・・?」
「ふーちゃんなら、きっと、誰の生活も壊さないで終わりにする方法を選ぶと思うんだよね」
「誰の生活も壊さないで・・・?」
「うん・・・それで・・・」
「それで、夏樹さんに、それを確かめに会いに行かなきゃいけないわけね」
「確かめの方は、ちょっと違うけど、でも、その先だから同じかな!」
「その先?」
「うん。でも、その先は、私にも、まだ分からないんだけどね!」
「そうなの・・・」
「でも、それも、もうすぐ分かると思うし」
「う~ん・・・。それで、いつ、夏樹さんに会いに行く予定なの?」
「まだ、分かんない・・・」
「まだ、分かんないって。それじゃ、私も、手助けが出来ないじゃない?」
「手助け・・・?」
「そうよ、そんなの急に、今日、明日、なんて言われても一応は準備だってあるでしょ?」
「違うよ・・・」
「えっ?違うって・・・。雪子が、私に頼みたいっていうのは、夏樹さんに会いに行く時の手助けとか、アリバイ作りとかじゃないの?」
「違うよ。裕子に迷惑が掛かるような事なんて、お願いしないですよ」
「迷惑だなんて、何、言ってるのよ、水臭いわね」
「ありがと。でも、裕子にお願いしたいのはそっちじゃないんだ」
「それじゃ、私に、お願いっていうのは?」
「うんとね、私を探さないで欲しいんだ」
「探さないで欲しい・・・?」
「ふーちゃんに会いに行った後の、私を、探さないで放っておいて欲しいんだ」
「放っておいてって・・・雪子?」
「それが、私が、裕子にする最初で最後のお願いなの」
探さないで放っておいて欲しいなんて、悲しい言葉を、嬉しそうに話す雪子。
そんな雪子を見ていると、あの時のマスターの言葉が、頭の中をよぎっていくのを感じた裕子は、
この先の、雪子の未来が、不安と現実が絡み合いながら歪んでいくような気がしてならなかった。
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