愛して欲しいと言えたなら

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生きている矛盾

生きている矛盾・・・その4

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いくら、昔、恋人同士だった二人が偶然また再会したからとはいっても、
お互い、もう、そんなに若くもないわけだし、雪子の方は家庭もあるのだし。

たとえ雪子が・・・
だとしても、きっと、夏樹さんはそれを許すような人じゃないものね。

このまま想い出は想い出のまま、そして、これから先は普通の友達として何気ない日々を。
きっと、夏樹さんは、それを望んでいるのかもしれないわ。
それが、雪子にとっては、誰も傷つける事がない、一番、良い選択肢なのかしれないし。

だから、夏樹さんは、住み慣れた街を離れたのかもしれない。
誰も知り合いのいないところへ、一人引っ越したのは、きっと、そういう想いなのよね。

そうすれば、あの街でなければ、雪子は、夏樹さんに会いに来る口実をもう作れなくなるから。
これからは、雪子とはメル友の一人として・・・そうでしょ、夏樹さん?

「違うよ、裕子・・・」

「えっ・・・?」

「ふーちゃんが引っ越したのは違うよ」

「えっ・・・?あ・・・あの・・・雪子・・・?」

どうして、分かったの・・・?
私、まだ、何も言ってないのに?
どうして、私の考えていた事が、雪子に分かったの?

「ちょっと雪子?どうして分かったの?」

「何を・・・?」

「何をって、今、私が考えていた事よ。どうして分かったの?」

「ただの連想ゲームだよ」

「ただの連想ゲームって・・・」

連想ゲームって簡単に言うけど、う~ん、雪子の思考回路は相変わらず分からないわ。

「裕子じゃなくても、終わり方を考えてしまうと思っただけだよ」

「終わり方・・・?」

「うん、ふーちゃんと私の終わり方・・・」

終わり方?
雪子と、夏樹さんとの終わり方・・・?

「雪子も、やっぱり考えていたのね・・・」

「考えてないよ!」

「えっ・・・?考えていないって、雪子?それって、どういう意味なの?」

「終わり方を考えなきゃいけないようなら、ふーちゃんに会いに行ったりしないよ!」

「ちょっと雪子?それって、もしかして夏樹さんと・・・って事?」

「ふーちゃんは、そんなに弱くないよ!」

「弱くないって・・・。ちょっと、私にも分かるように説明してよ」

「簡単な事だよ。ふーちゃんは、誰かに、すがりつくような人じゃないよ」

「いえ、だから、それと雪子と、どう関係あるの?」

「ふーちゃんは、たとへ、私の心の中を知ったとしても、絶対に、私を求めたりはしない人だよ」

「まあ確かに、夏樹さんって昔からそういう感じの・・・えっ?ちょっとまって?雪子?それってもしかして?」

「そんな、どこにでもあるような、好きだ嫌いだみたいな感情だったらよかったんだけどな~」

「いや、だから、私にも分かるようにって言ってるでしょ?」

「ねえ、裕子・・・」

「何・・・?急に・・・」

「裕子に、お願いがあるんだけど。いいかな?」

いいかな?・・・
何となく、少し、雪子らしくない言葉遣いに感じたけど・・・気のせいかしら?

「私に・・・?」

「うん・・・。きっと、最初で最後のお願いになると思うんだ!」

「最初で最後って・・・それって、夏樹さんの事?」

「ううん・・・。ふーちゃんじゃなくて、私の方だけど・・・」

「やっと、離婚する気になったのね?それで、私は、何をすればいいの?」

「なんか、裕子って嬉しそうなんだ」

「ふふっ・・・だって、やっと、雪子が、その気になってくれたんだもの」

「いや、違うよ!」

「えっ・・・?」

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