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求めない願い
求めない願い・・・その20
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そんな仕草を見せる京子に、直美は、少し後ろめたい気持ちだった。
夏樹が何処へ引っ越すのか、教えられていないと答えた直美だったが、
本当はその逆で、夏樹の引っ越し先の住所も連絡先も教えられていたからである。
(京子には・・・?)と、訊いたのだが、夏樹はそれを望まなかった。
直美は(どうして?)と、もう一度訊いてみたのだが、夏樹はその問いには答えず。
ただ一言・・・(求めない願いもあるのよ・・・)と、呟いただけで、
その後は、その話には触れようとはしなかった。
そう呟いた夏樹に、その言葉の意味を訊こうとした直美の視線の中に、
ふと差し込んできた夏樹の寂しげな表情に、直美は言葉を声には出来なかった。
「どうしたの、直美?急に考え込んじゃって?」
「う~ん・・・あのね、どうして、夏樹さんは京子に教えなかったのかなって?」
「教えなかったって?引っ越し先の?」
「うん、そう・・・」
「私が行くのを知ってるからでしょ!」
「行くって、夏樹さんに会いに?」
「会いには行かないわよ。ただ、どこ辺かな?って、一応は確かめておいた方がいいでしょ?」
「確かめるって、どうして?」
「だって、私とは他人かもしれないけど、子供たちとは一応は親子なんだから、何かあったりしたら大変でしょ?」
「何かって、子供たちに?」
「違うわよ、あの人によ。そんなの決まってるでしょ!」
「えっ・・・?」
「あっ・・・そっちの意味じゃないわよ。子供たちに何かあったりしたら一応は知らせないと、後から何を言われるか分からないからって意味よ!」
「ふ~ん・・・。でも、それだったら、どうして夏樹さんは教えなかったのかな?」
「子供たちにって事?」
「うん。京子の言う通り、もう、京子と夏樹さんは確かに他人になったかもしれないけど、子供たちは別でしょ?」
「さあね・・・そんなの私に分かるわけないでしょ?」
「もしさ、もし、夏樹さんが子供たちに引っ越し先を教えたら会いに行くのかな?」
「行くんじゃない?近くじゃないんだし、会いに行ったって、私が知る由もないしね」
「どうして、近くじゃなくて遠くだと会いに行く事になるの?」
「子供たちなりに、私に気でも使ってるじゃないかしら?」
「それって、子供たちが夏樹さんに会いに行くのを京子が嫌がってるって事?」
「かもしれないわね。私は、いつも、あの人の悪口を言ってたから」
「遠くだったら、子供たちが夏樹さんに会いに行っても京子に知られないからってわけね」
「まあね・・・そんなとこね」
「う~ん・・・」
「う~ん・・・って、何?なんか、まだ納得していないみたいだけど」
「う~ん、夏樹さんって、そういう事を許す人かな?って思って」
「許さないから、教えなかったんでしょ?」
「あっ・・・なるほど!」
「だから、あの人はバカだっていうのよ!」
「どうして?子供たちにも引っ越し先を教えなかったから?」
「違うわよ。あの人にとって子供たちなんて、おそらく眼中に入ってなんていないわ!」
「えっ・・・?うそ・・・?」
「本当よ!あの人は、そういう人なの」
「どうして・・・?」
「あの人も一人で生きてきたからじゃない?それに、子供たちだって、いつまでも子供ってわけじゃないでしょ?今じゃ、立派な大人になったんだし、自分の人生は自分で歩いていけって思うタイプなのよ、あの人って」
「それじゃ、どうして夏樹さんがバカなの?」
「そんなの決まってるでしょ?」
「はい・・・?」
「私に引っ越し先なんか教えたら、私が、その近くに来るかもしれないって思ってるのよ」
「それって、そんなにも京子に会いたくないっていう事なの?」
「何、言ってるのよ。その逆に決まってるじゃないのよ!」
「へっ・・・?あの・・・・」
「心の中では、それを求めているくせに、勝手に、私の気持ちを知ったつもりになって、勝手に、私を気遣ってるつもりになって、本当にバカな人」
「はい・・・?」
「いつも、言ってたくせに!世の中は劇画じゃない、自分の口で、自分から伝えようとしなければ、誰にも、何も伝わらないって・・・」
「はい?はい?はい・・・?」
夏樹が何処へ引っ越すのか、教えられていないと答えた直美だったが、
本当はその逆で、夏樹の引っ越し先の住所も連絡先も教えられていたからである。
(京子には・・・?)と、訊いたのだが、夏樹はそれを望まなかった。
直美は(どうして?)と、もう一度訊いてみたのだが、夏樹はその問いには答えず。
ただ一言・・・(求めない願いもあるのよ・・・)と、呟いただけで、
その後は、その話には触れようとはしなかった。
そう呟いた夏樹に、その言葉の意味を訊こうとした直美の視線の中に、
ふと差し込んできた夏樹の寂しげな表情に、直美は言葉を声には出来なかった。
「どうしたの、直美?急に考え込んじゃって?」
「う~ん・・・あのね、どうして、夏樹さんは京子に教えなかったのかなって?」
「教えなかったって?引っ越し先の?」
「うん、そう・・・」
「私が行くのを知ってるからでしょ!」
「行くって、夏樹さんに会いに?」
「会いには行かないわよ。ただ、どこ辺かな?って、一応は確かめておいた方がいいでしょ?」
「確かめるって、どうして?」
「だって、私とは他人かもしれないけど、子供たちとは一応は親子なんだから、何かあったりしたら大変でしょ?」
「何かって、子供たちに?」
「違うわよ、あの人によ。そんなの決まってるでしょ!」
「えっ・・・?」
「あっ・・・そっちの意味じゃないわよ。子供たちに何かあったりしたら一応は知らせないと、後から何を言われるか分からないからって意味よ!」
「ふ~ん・・・。でも、それだったら、どうして夏樹さんは教えなかったのかな?」
「子供たちにって事?」
「うん。京子の言う通り、もう、京子と夏樹さんは確かに他人になったかもしれないけど、子供たちは別でしょ?」
「さあね・・・そんなの私に分かるわけないでしょ?」
「もしさ、もし、夏樹さんが子供たちに引っ越し先を教えたら会いに行くのかな?」
「行くんじゃない?近くじゃないんだし、会いに行ったって、私が知る由もないしね」
「どうして、近くじゃなくて遠くだと会いに行く事になるの?」
「子供たちなりに、私に気でも使ってるじゃないかしら?」
「それって、子供たちが夏樹さんに会いに行くのを京子が嫌がってるって事?」
「かもしれないわね。私は、いつも、あの人の悪口を言ってたから」
「遠くだったら、子供たちが夏樹さんに会いに行っても京子に知られないからってわけね」
「まあね・・・そんなとこね」
「う~ん・・・」
「う~ん・・・って、何?なんか、まだ納得していないみたいだけど」
「う~ん、夏樹さんって、そういう事を許す人かな?って思って」
「許さないから、教えなかったんでしょ?」
「あっ・・・なるほど!」
「だから、あの人はバカだっていうのよ!」
「どうして?子供たちにも引っ越し先を教えなかったから?」
「違うわよ。あの人にとって子供たちなんて、おそらく眼中に入ってなんていないわ!」
「えっ・・・?うそ・・・?」
「本当よ!あの人は、そういう人なの」
「どうして・・・?」
「あの人も一人で生きてきたからじゃない?それに、子供たちだって、いつまでも子供ってわけじゃないでしょ?今じゃ、立派な大人になったんだし、自分の人生は自分で歩いていけって思うタイプなのよ、あの人って」
「それじゃ、どうして夏樹さんがバカなの?」
「そんなの決まってるでしょ?」
「はい・・・?」
「私に引っ越し先なんか教えたら、私が、その近くに来るかもしれないって思ってるのよ」
「それって、そんなにも京子に会いたくないっていう事なの?」
「何、言ってるのよ。その逆に決まってるじゃないのよ!」
「へっ・・・?あの・・・・」
「心の中では、それを求めているくせに、勝手に、私の気持ちを知ったつもりになって、勝手に、私を気遣ってるつもりになって、本当にバカな人」
「はい・・・?」
「いつも、言ってたくせに!世の中は劇画じゃない、自分の口で、自分から伝えようとしなければ、誰にも、何も伝わらないって・・・」
「はい?はい?はい・・・?」
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