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求めない願い
求めない願い・・・その19
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直美は、夏樹の予想の的中率に驚くよりも、
その通りになっていく京子の方が不思議だった。
夏樹には、京子の考え方や行動が手に取るように分かっている。
それとは逆に、京子は夏樹の考え方や行動がまるで分かっていない。
そんな二人に、直美は、これが夏樹と京子の愛し方の違いなのだろうか?そんな風に思った。
京子は、あんなにも長い年月の中で、いったい夏樹さんの何を見ていたの?
それじゃ夏樹さんが可哀そうだよ?・・・って、言いたいけど、
言うと、きっと、また、振り出しに戻っちゃうんだろうし・・・。
「夏樹さんは、引っ越し先の場所は何も言ってなかったわよ」
「本当に・・・?」・・・おいおい、京子さん?
「京子に、嘘は言わないわよ」
「そう・・・」
「でね、近くなの?って、訊いたんだけど」
「それで?」・・・おいおい?
「気軽にこの街に戻って来れるような引っ越し先じゃ、京子も落ち着かないでしょ?って!」
「そう・・・」
「でも、引っ越し先を探すのに、随分、苦労してたみたい」
「どうして?」
「沢山のぬいぐるみさんたちと一緒に引っ越すからって」
「ぬいぐるみ?そんなにあるの?」
あるの・・・?
いるの?・・・ではなくて・・・あるの?
「すごい数のぬいぐるみさんたちがいたわよ」
「ふ~ん、それで探すのに苦労ね・・・。それじゃ、大きな貸家じゃないと引っ越せないわね?」
「それが、貸家じゃなくて買ったみたいよ」
「それは、また、随分と景気がいいようで」
「どうして?」
「どうしてって、そんなお金があるんだったら、少しはこっちに回して欲しいもんだわ!」
「どうして、そうなるの?」
「そんなの当たり前でしょ?こっちは、あの人と離婚してから、どれだけ苦労したと思ってるのよ。そうじゃなくても、息子を二人もこっちに押し付けて、あの人は一人、気ままに自由を満喫出来て良い気なもんだわ。そんなお金があるんだったら、少しくらいこっちに回すのが普通でしょ?一応は、父親なんだから」
まただ・・・。
離婚してから、夏樹さんがどうやって生きてきたのかなんて、全然考えていないんだ京子は・・。
自分は、こんなに頑張ったのに・・・自分は、こんなにも苦労したのに・・・。
そして、自分はあんなにも尽くしてきたのに・・・自分は自分は自分は・・・それが京子なの?
確かに、自分の物差しで物事を考えるというのは大切な事だとは思うけど。
でも、何でもかんでも自分の物差しだけで考えちゃうと、もしも、それが間違っていたら・・・。
夏樹さんの言ってた通りだ・・・。
自分の物差しで考える事と、自分の物差しだけで考える事は違うのよって。
それじゃ京子は、夏樹さんがお金を沢山運んで来てくれたら、それで満足なの?
結局、夏樹さん=お金なわけ?って、訊けば、訊いたで、
そういう事を言ってるわけじゃないでしょ!って、言うんだろうけど。
確かに、夏樹さんと離婚した後に、京子が苦労したのは分かるわよ。
でも、それって、京子が、自分で選んだ事なんじゃないの?
夏樹さんと付き合ったのだって、夏樹さんと結婚したのだって、子供を産んで育てたのだって、
夏樹さんが勝手に一人で決めて、それを、無理やり京子に押し付けてきたわけじゃないでしょ?
「どうしたの直美?私、何か間違ってる?」
「私には分からないわ。だって、それって夏樹さんと京子の問題だし」
「いいわよ無理しなくても。私が間違ってるって言いたいんでしょ?」
「そんな事はないと思うけど・・・」
「いいのよ・・・私だって、こんな自分なんか好きじゃないし・・・」
「京子・・・?」
カップの残っていたコーヒーを飲み干すと、流す視線の中で笑みを浮かべながら・・・。
飲み物のお替りをしようか?・・・そう言った京子は、どこか寂しそうな顔でため息をついた。
その通りになっていく京子の方が不思議だった。
夏樹には、京子の考え方や行動が手に取るように分かっている。
それとは逆に、京子は夏樹の考え方や行動がまるで分かっていない。
そんな二人に、直美は、これが夏樹と京子の愛し方の違いなのだろうか?そんな風に思った。
京子は、あんなにも長い年月の中で、いったい夏樹さんの何を見ていたの?
それじゃ夏樹さんが可哀そうだよ?・・・って、言いたいけど、
言うと、きっと、また、振り出しに戻っちゃうんだろうし・・・。
「夏樹さんは、引っ越し先の場所は何も言ってなかったわよ」
「本当に・・・?」・・・おいおい、京子さん?
「京子に、嘘は言わないわよ」
「そう・・・」
「でね、近くなの?って、訊いたんだけど」
「それで?」・・・おいおい?
「気軽にこの街に戻って来れるような引っ越し先じゃ、京子も落ち着かないでしょ?って!」
「そう・・・」
「でも、引っ越し先を探すのに、随分、苦労してたみたい」
「どうして?」
「沢山のぬいぐるみさんたちと一緒に引っ越すからって」
「ぬいぐるみ?そんなにあるの?」
あるの・・・?
いるの?・・・ではなくて・・・あるの?
「すごい数のぬいぐるみさんたちがいたわよ」
「ふ~ん、それで探すのに苦労ね・・・。それじゃ、大きな貸家じゃないと引っ越せないわね?」
「それが、貸家じゃなくて買ったみたいよ」
「それは、また、随分と景気がいいようで」
「どうして?」
「どうしてって、そんなお金があるんだったら、少しはこっちに回して欲しいもんだわ!」
「どうして、そうなるの?」
「そんなの当たり前でしょ?こっちは、あの人と離婚してから、どれだけ苦労したと思ってるのよ。そうじゃなくても、息子を二人もこっちに押し付けて、あの人は一人、気ままに自由を満喫出来て良い気なもんだわ。そんなお金があるんだったら、少しくらいこっちに回すのが普通でしょ?一応は、父親なんだから」
まただ・・・。
離婚してから、夏樹さんがどうやって生きてきたのかなんて、全然考えていないんだ京子は・・。
自分は、こんなに頑張ったのに・・・自分は、こんなにも苦労したのに・・・。
そして、自分はあんなにも尽くしてきたのに・・・自分は自分は自分は・・・それが京子なの?
確かに、自分の物差しで物事を考えるというのは大切な事だとは思うけど。
でも、何でもかんでも自分の物差しだけで考えちゃうと、もしも、それが間違っていたら・・・。
夏樹さんの言ってた通りだ・・・。
自分の物差しで考える事と、自分の物差しだけで考える事は違うのよって。
それじゃ京子は、夏樹さんがお金を沢山運んで来てくれたら、それで満足なの?
結局、夏樹さん=お金なわけ?って、訊けば、訊いたで、
そういう事を言ってるわけじゃないでしょ!って、言うんだろうけど。
確かに、夏樹さんと離婚した後に、京子が苦労したのは分かるわよ。
でも、それって、京子が、自分で選んだ事なんじゃないの?
夏樹さんと付き合ったのだって、夏樹さんと結婚したのだって、子供を産んで育てたのだって、
夏樹さんが勝手に一人で決めて、それを、無理やり京子に押し付けてきたわけじゃないでしょ?
「どうしたの直美?私、何か間違ってる?」
「私には分からないわ。だって、それって夏樹さんと京子の問題だし」
「いいわよ無理しなくても。私が間違ってるって言いたいんでしょ?」
「そんな事はないと思うけど・・・」
「いいのよ・・・私だって、こんな自分なんか好きじゃないし・・・」
「京子・・・?」
カップの残っていたコーヒーを飲み干すと、流す視線の中で笑みを浮かべながら・・・。
飲み物のお替りをしようか?・・・そう言った京子は、どこか寂しそうな顔でため息をついた。
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