愛して欲しいと言えたなら

zonbitan

文字の大きさ
上 下
212 / 386
求めない願い

求めない願い・・・その12

しおりを挟む
雪子、少し変わった?
何となくだけど、最近の雪子って、時々、攻撃的になるっていうか言葉の語尾が上がるっていうか。
どこか、急いでいるような、言葉を変えれば、何かに追われているみたいな感じかしら?
でも、このクルクルキラキラお目目は、猫のお目目そっくりに見えてくるし。

猫のお目目・・・?そうか、そうだわ、きっとそうなんだわ!
猫が獲物を見つけた時の、あの、お目目。そして、猫が獲物を捕まえようとする時の、
お尻をちょっと上げてシッポをふりふりする時の感じだわ、きっと。

「聞きたい?」って、訊いてきた今の雪子の言葉使いも、そう。
まるで、狙う獲物をはっきりと捕らえているみたいに、射程距離に捕捉しているみたいな。

まあ、確かに、夏樹さんと再会した時からの雪子には、時々、驚かされてきたけど。
それが、雪子の本当の姿なのか?それとも、今は、あの頃のように、
私に夏樹さんの事を隠さなくてもよくなったからなのか?よく分からなかったけど・・・。

なるほどね・・・。
今の雪子が、夏樹さんの好きな雪子・・・なのね・・・きっと。

そういえば、夏樹さんが言ってたわ。
雪子って、夏樹さんといる時も、やっぱり物静かで大人しいの?って訊いたら(どこが?)って。
それで・・・雪子の、その瞳の中に捉えている獲物は誰なのかしらね?

「裕子、やっぱ変だよ?」

「えっ・・・?」

「な~んか、意味深な笑みなんか浮かべちゃってるし」

「ちょっと、考えちゃってね」

「考えちゃってるって・・・何を考えちゃってたの?」

「今みたいに、言葉を生き物のように変えちゃうところとかって」

「・・・?」

「(る)・・・が、(た)・・・に・・・ふふっ」

「ん・・・?」

「きっと、そんなところも好きなんだろうな~って・・・。ふふっ」

「いや・・・今日の裕子、やっぱり変だって!」

「変じゃなくて、これでも、少しは焼きもちを焼いてるのよ」

「焼きもち?誰に?」

「あえて、そういう訊き方をするところなんて、何とも言えないかも!」

「裕子?何か、悪い物でも食べた?」

「あはは・・・ちょっと雪子!少し待って、お願い!」

「ま、ま、裕子。とりあえず、コーヒーでも飲んで落ち着こうよ!」

「うふふ・・・」

微笑みとも、笑いとも、分からないような嬉しそうな顔でコーヒーカップを手に持ちながら、
不思議そうな顔をしている雪子を見ていると、コーヒーを吹き出しそうなので、
視線を左に流しながらコーヒーカップの中のコーヒーを飲む裕子・・・だったのだが・・・。

「あれ・・・?」

「きゃははっ・・・!」

裕子が飲むはずだったコーヒーカップの中のコーヒーは、どこにも見当たらなかった。

「ちょっと!雪子!」

「ちょんまげ?」

「あはは・・・だめ、雪子、お願い!ちょっと待って!」

まだ何か言いたげな雪子に、両手でガードをするようにする裕子の口元が、
開いた指と指の間から見える雪子の仕草に、笑いから笑みへと移り変わっていく。
これが、夏樹さんが愛していた雪子・・・いえ、それは、今でも変わらないのね、きっと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

М女と三人の少年

浅野浩二
恋愛
SМ的恋愛小説。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...