愛して欲しいと言えたなら

zonbitan

文字の大きさ
上 下
207 / 386
求めない願い

求めない願い・・・その7

しおりを挟む
直美は、京子と話をしているといつも思う事がある。
それは、夏樹が、京子に対して何か言ってるのではないか?そんな風に京子は思っているらしい。
言い方を変えれば、京子の事で、夏樹が何か言っていなかったのか?となるのだが。

まあ、どちらにしても、京子は自分に対しての夏樹の言葉を聞きたがっているように思えるし、
夏樹が、絶対に何か言っているはずだと確信しているようにも思えてくるのである。

「もしかして、京子は何か知ってるの?」

「何かって・・・?」

「だって、京子の話からすると、まるで夏樹さんが京子に対して何か言っているはず!みたいに聞こえてくるから。もしかして、夏樹さんが言う言葉を京子が知ってるのかな?って思っちゃう時があるの」

「どうせ、私の悪口かなんかでしょ?だから、どんな悪口を言ってたのかな?って、思っただけよ」

「えっ・・・そっち?」

「そっちって?それじゃ、どっちだと思ってたのよ?」

「いや・・・京子の悪口の方じゃなくて、京子を心配している方かと・・・」
直美は慌てながらも、京子に気づかれないように話を合わせて答えた。

もしかして、京子は知らないのかしら?
さっきまでの話し方だと、まるで夏樹さんが言おうとしている何かを、
京子も知ってるみたいに聞こえてきたけど、私の気のせいだったのかしら?

「ふん、私の心配なんて、余計なお世話よ!」

う~ん・・・やっぱり、京子は知らないみたい。
ここはひとつ、夏樹さんに直接会って訊くしかなさそうかも・・・。
それに、夏樹さんが、京子の気持ちを逆なでするような事ばかりっていうのも気になるし。

「ねえ、京子?今度、一緒に温泉にでも行ってみない?」

「温泉に・・・?」

「うん、たまには羽を伸ばしてみるのもいいと思うしさ」

「やっぱり、あの人に何か言われてたんじゃないの?」

んもう~・・・どうして、そこにいくかな?
これで、夏樹さんがこう言ってたよって、言えば、言ったで、
文句のひとつも、ふたつも、みっつも!言うくせに・・・たぶん、もっと。
かといって、何も言ってないよって言えば、今度は何も言ってないのが悪いみたいになってしまうし。

う~ん・・・どうしたものか・・・。
私には手に余ってしまう京子の今日この頃・・・とかって。

秋雨だろうか?夜になって雨が降り出してきた。
時計を見ると夜の10時を少し過ぎた頃、
いつものように、部屋に行こうとする雪子に愛奈が声をかけた。

声をかけたといっても、母である雪子がキッチンの後片付けが済んだ頃にであるが。
もちろん、リビングでテレビを見ている父には気づかれないようにである。

「ねえ、お母さん?」

「な~に、愛奈さん?」

「う~ん、お母さんはどうしていつも(さん)をつけるの?」

「ふふっ、愛奈さんは、もう大人ですよ」

「いや、小さい頃から・・・は、まあいいけど。ねえ、お母さん?私も、お母さんのメル友とお話をしてみたいな?」

むふふっ・・・。こう見えても、私は、けっこうしつこい猫だのだ!
獲物が油断するまで、じっとじっと尻尾と遊びながら待ってる猫なのだじょ!
きっと、これには、鉄壁の要塞みたいなお母さんでも動揺するでしょう!

「いいわよ。愛奈さんがお話をしてみたいなら」

えっ?
えええ===っ!・・・ってか・・・うっそ?

「いいの?って、普通は逆でしょ?」

「どうして?」

「だって、お母さんがメールをしてる相手はお母さんの大切な人でしょ?」

「ええ、そうよ」

「ええ、そうよって。ちょっとお母さん?お母さんが良くても相手の人に訊いてみないとダメでしょ?」

「変な愛奈さんね?」

違うわよ・・・。変なのは、私じゃなくてお母さんの方だと思うわよ?
そうじゃなくても、そんな事をいきなり言われたら断るのが普通でしょ?

相手の人に訊いてみてからね?とか、何とかって理由を付けてさ。
それが、いきなり「いいわよ」って・・・あのね?

愛奈は、とりあえず、母親である雪子をなんとか動揺させたくて言ってみただけなのだったが。
愛奈の言葉にまったく動揺を見せないどころか、まるで冷蔵所の中にある飲み物の話のように、
優しく言葉を返されてしまうと「じゃあ」とは、言えなくなってしまう愛奈なのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...