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求めない願い
求めない願い・・・その1
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京子が夏樹と付き合うようになったのは、京子が20歳過ぎの頃であり、
その頃は、京子も直美もすでに社会人として日々を過ごしていた時期でもある。
お互い、どちらも地元から出て京子は隣の県、直美は2つ離れた県の会社に就職していた。
まだ、京子が自分の将来などぼんやりとしか思い描いていなかった高校生の頃に、
まさか自分が将来、夏樹と付き合うようになるとは、夢にも思っていなかったのだし、
もちろん、その先に結婚が待っているなど、想像すらしていなかったし、するはずもなかった。
確かに、京子が夏樹の事を知っていたのは、京子がまだ中学生の頃からだったのだが・・・。
それは、たまたま近所に住んでいた面白いお兄さんが夏樹だっただけで、
別に、それを直美に話すという事もなく、どこにでもある学生時代が過ぎていき、
そして、高校卒業後は、お互い別々の会社へと就職していくのである。
京子にとって、雪子や裕子を意識するようになったのは、
京子自身が、夏樹と付き合うようになってからなのだが、
かといって、京子が、夏樹の付き合っていた女性の事などを直美に話すかといえばそれはなかった。
京子が、夏樹の過去を気にしているような素振りを見せなかったり話題にしなかったのは、
自分が焼きもちを焼いているように思われるのが嫌だったからかもしれない。
それでも、社会人になっても、お互いが同じ地元にでも就職をしていたのなら、
何かにつけ、しょっちゅう会っているうちに話題の中にでも登場してきたかもしれないが、
どちらも別の県に就職しているのだから、年に何回かくらいしか会わない二人には、
夏樹の過去が話題に上るような接点はないのだし、京子が夏樹と付き合うようになってからも、
年に数回の二人の会話の中でも、あえて京子の方から夏樹の過去を話すような事はしなかったのである。
京子が、夏樹の事を直美に話すようになったのは、夏樹との結婚が決まった頃からである。
なので、直美からすれば、京子と夏樹の馴初めを知っているようで、実は、知らない事の方が多いのである。
そんな直美が驚いたのには、二つの理由からである。
ひとつが、裕子の、夏樹に対しての想いの強さなのだが。
それよりも驚いたのが、そんな裕子を観察していた京子に。である。
「きっと、今でも、その想いは変わってないはずよ」
「ちょっと、信じられないけど」
「それは、直美が裕子さんを知らないからよ。裕子さんのあの目、遠くからあの人を見るあの目つきは、きっと、今でも、変わってないんじゃないかしら?」
「あの人って、夏樹さんを見る裕子さんの・・・?」
「私でもゾッとするくらい怖いの。だから、あの人と付き合い始めてから結婚するまでの間、ずっと思ってたのよ。いつか、裕子さんに殺されるんじゃないかしらって」
「うそ・・・?」
「ホントよ。そうじゃなくても、高校の頃から裕子さんって怖いと思ってたし」
「うん。確かに、裕子さんは怖いと、私も思う」
「まあ、裕子さんだけは特別だけどね。それに、あの人がそばいる限り、自分は大丈夫だろうって安心もあったし」
「どうして・・・?」
「裕子さんってね、あの人が嫌がる事は絶対にしない人だと思ったの」
「えっ・・・?」
「一度ね、見かけた事があったのよ。まだ、私が、あの人と付き合う前だったけどね」
「まだ、夏樹さんが、裕子さんと付き合っていた頃に見たの?」
「ううん、違うわ。あの人が雪子さんと別れてから、しばらく過ぎた頃だったと思うけど。ちょうど小雨が降ってる日にね。どこだったか忘れたけど、どこかの大きな駐車場で見かけたのよ」
「夏樹さんと、裕子さんを?」
「ええ、そうよ。なんか見た事があるような車だなって思ってみてたら、あの人が車から降りてきたのよ。その後、すぐに助手席から裕子さんが降りてきてね。あっ、裕子さんだって思って見ていたのよ。でね、裕子さんが、すっと、あの人に近づいたと思ったら、パッと傘を開いてあの人の頭の上に。しかも、相合傘じゃなくて、あの人が濡れないようにって感じで。あれは、私でも出来ないと思ったわ!」
「それって、夏樹さんと、また、付き合ったって事なんじゃないの?」
「それが違うのよ。裕子さんは、その頃は、違う人と付き合っていたんだから」
「えっ・・・あの・・・それって、もしかして、二股?」
「そんなの、あの人が許すわけないでしょ?」
「えっ・・・?」
「あの人って、変なところが真面目だから」
変なところが真面目?う~ん、夏樹さんらしいかも・・・。
その頃は、京子も直美もすでに社会人として日々を過ごしていた時期でもある。
お互い、どちらも地元から出て京子は隣の県、直美は2つ離れた県の会社に就職していた。
まだ、京子が自分の将来などぼんやりとしか思い描いていなかった高校生の頃に、
まさか自分が将来、夏樹と付き合うようになるとは、夢にも思っていなかったのだし、
もちろん、その先に結婚が待っているなど、想像すらしていなかったし、するはずもなかった。
確かに、京子が夏樹の事を知っていたのは、京子がまだ中学生の頃からだったのだが・・・。
それは、たまたま近所に住んでいた面白いお兄さんが夏樹だっただけで、
別に、それを直美に話すという事もなく、どこにでもある学生時代が過ぎていき、
そして、高校卒業後は、お互い別々の会社へと就職していくのである。
京子にとって、雪子や裕子を意識するようになったのは、
京子自身が、夏樹と付き合うようになってからなのだが、
かといって、京子が、夏樹の付き合っていた女性の事などを直美に話すかといえばそれはなかった。
京子が、夏樹の過去を気にしているような素振りを見せなかったり話題にしなかったのは、
自分が焼きもちを焼いているように思われるのが嫌だったからかもしれない。
それでも、社会人になっても、お互いが同じ地元にでも就職をしていたのなら、
何かにつけ、しょっちゅう会っているうちに話題の中にでも登場してきたかもしれないが、
どちらも別の県に就職しているのだから、年に何回かくらいしか会わない二人には、
夏樹の過去が話題に上るような接点はないのだし、京子が夏樹と付き合うようになってからも、
年に数回の二人の会話の中でも、あえて京子の方から夏樹の過去を話すような事はしなかったのである。
京子が、夏樹の事を直美に話すようになったのは、夏樹との結婚が決まった頃からである。
なので、直美からすれば、京子と夏樹の馴初めを知っているようで、実は、知らない事の方が多いのである。
そんな直美が驚いたのには、二つの理由からである。
ひとつが、裕子の、夏樹に対しての想いの強さなのだが。
それよりも驚いたのが、そんな裕子を観察していた京子に。である。
「きっと、今でも、その想いは変わってないはずよ」
「ちょっと、信じられないけど」
「それは、直美が裕子さんを知らないからよ。裕子さんのあの目、遠くからあの人を見るあの目つきは、きっと、今でも、変わってないんじゃないかしら?」
「あの人って、夏樹さんを見る裕子さんの・・・?」
「私でもゾッとするくらい怖いの。だから、あの人と付き合い始めてから結婚するまでの間、ずっと思ってたのよ。いつか、裕子さんに殺されるんじゃないかしらって」
「うそ・・・?」
「ホントよ。そうじゃなくても、高校の頃から裕子さんって怖いと思ってたし」
「うん。確かに、裕子さんは怖いと、私も思う」
「まあ、裕子さんだけは特別だけどね。それに、あの人がそばいる限り、自分は大丈夫だろうって安心もあったし」
「どうして・・・?」
「裕子さんってね、あの人が嫌がる事は絶対にしない人だと思ったの」
「えっ・・・?」
「一度ね、見かけた事があったのよ。まだ、私が、あの人と付き合う前だったけどね」
「まだ、夏樹さんが、裕子さんと付き合っていた頃に見たの?」
「ううん、違うわ。あの人が雪子さんと別れてから、しばらく過ぎた頃だったと思うけど。ちょうど小雨が降ってる日にね。どこだったか忘れたけど、どこかの大きな駐車場で見かけたのよ」
「夏樹さんと、裕子さんを?」
「ええ、そうよ。なんか見た事があるような車だなって思ってみてたら、あの人が車から降りてきたのよ。その後、すぐに助手席から裕子さんが降りてきてね。あっ、裕子さんだって思って見ていたのよ。でね、裕子さんが、すっと、あの人に近づいたと思ったら、パッと傘を開いてあの人の頭の上に。しかも、相合傘じゃなくて、あの人が濡れないようにって感じで。あれは、私でも出来ないと思ったわ!」
「それって、夏樹さんと、また、付き合ったって事なんじゃないの?」
「それが違うのよ。裕子さんは、その頃は、違う人と付き合っていたんだから」
「えっ・・・あの・・・それって、もしかして、二股?」
「そんなの、あの人が許すわけないでしょ?」
「えっ・・・?」
「あの人って、変なところが真面目だから」
変なところが真面目?う~ん、夏樹さんらしいかも・・・。
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