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その手を離さないで
その手を離さないで・・・その15
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動揺を誘うはずの愛奈が、まさかの玉砕から3日後の土曜の午後。
ここにも、愛奈の言葉がツボにはまってしまって脱げ出せなくなっている女性が一人。
「ちょっと、裕子さん!笑い事じゃないですってば!」
「そんな事を言ったって、笑いが出ちゃうわよ」
「私なんて、生まれて初めてだったんですよ!あんなに驚いたのって!」
「そんなに?」
「だって、あれだけ鉄壁の要塞みたいなお母さんが、まさか、ビンタの一言にあんなに反応するなんて、今でも信じられないですよ。まるで、お月様が太陽を追い越しちゃった!くらいに驚いたんですよ!」
「ふふっ、きっと、雪子も、普通の人間だったって事よ」
「でも、どうして、ビンタが、お母さんのツボなんでしょう?」
「さあ。ツボは、人、それぞれだから」
「もしかして、ビンタの他にもツボがあったりして」
「あら、どうして?」
「う~ん、どうしてって訊かれても」
「でも、愛奈ちゃん?そんな雪子を見て、急に、雪子が身近に感じちゃったんじゃない?」
「分かります?」
「何となく、分かるわ」
「でも、お母さんって、私が何を言っても、全然、怒らないんですよ」
「愛奈ちゃん、何か言ったの?」
「ええ。お母さん、お父さんと離婚するつもりなんでしょ?って」
「あら、まあ。ずいぶんと過激な、それで、雪子はなんて?」
「そんな事はないわよって・・・。でもね」
「でも・・・?」
「その後に、私が、やっぱり、そうなんだって言ったの。何となく分かったけどって・・・」
「あら・・・。」
「私は何となく分かってたのよって言ったのに、軽くかわしちゃうし」
「雪子らしいわね。でも、愛奈ちゃん、変な事を言うのね?それじゃ、まるで、夫婦関係が上手くいってないみたいじゃない?」
「そんな感じではないんですけど・・・」
「ないんですけど・・・な~に?まだ、続きがあるみたいね?」
「はい。実は、前から気になってる事があるんです」
「気になってる事って、雪子の事で?」
「はい・・・」
「もしかして、雪子に、誰か、好きな人でもいるんじゃないかって?」
「いるんですか?やっぱり・・・」
「ううん、そうじゃないけど。愛奈ちゃん、前に言ってたじゃない?」
「はい。それもあるんですけど・・・」
「他にも、何か、気になる事があるみたいね?」
「はい。前々から、ちょっと気になってたんですけど。お母さんの物って、家の中にほとんど無いんです」
「ないって・・・洋服とかあるじゃない?それにパソコンも」
「それは、そうなんですけど・・・」
「な~に・・・?愛奈ちゃんらしくないわね?」
「実は・・・家の中に、お母さんがいないんです」
「えっ・・・?いないって、どういう事?」
「あっ、いないって、別に、お母さんが家出をしたとかという事ではなくて」
「あ~ビックリした・・・」
「どうして、裕子さんがビックリするんですか?」
「ふふっ、急に、雪子がいないなんて言われたら、普通はビックリするわよ」
「ホントに?・・・それだけですか?」
「どうして、そう思うの?」
「何となく、裕子さんは、いつか、お母さんが家を出て行くってことを知ってるみたいで」
やっぱり、愛奈ちゃんには、夏樹さんの遺伝子が入ってるんだわ。
思っているみたいで?とか、分かってるみたいですね?とかっていう言葉は使わないで、
あえて「知ってるみたいで?」という言葉で訊いてくるところなんて、夏樹さんそのもの。
もしかして、愛奈ちゃんって、本当は夏樹さんの子供だったりして。
「愛奈ちゃんって、いったい、誰に似たのかしらね」
「えっ・・・?」
あっ・・・まずった。
「でも、私も、時々、そう思う事があるんです。私って、いったい、誰に似たのかなって?」
あ~助かった・・・。ってか、その一言って、もしかして助け舟?・・・まさかね。
いくらなんでも、そこまでは、まだ、成長していない・・・と、思いたい。
「でも、どうして、愛奈ちゃんは、雪子が出て行くんじゃないかって思うの?」
「私の家の中には、お母さんが暮らしていた痕跡がないみたいで・・・」
夏樹さんは別として、やっぱり、愛奈ちゃんは雪子の子供なのね。
雪子?いつまでも、愛奈ちゃんを誤魔化せないかもしれないわよ。
「ねえ、愛奈ちゃん?愛奈ちゃんは、お母さんに、何を望むの?」
ここにも、愛奈の言葉がツボにはまってしまって脱げ出せなくなっている女性が一人。
「ちょっと、裕子さん!笑い事じゃないですってば!」
「そんな事を言ったって、笑いが出ちゃうわよ」
「私なんて、生まれて初めてだったんですよ!あんなに驚いたのって!」
「そんなに?」
「だって、あれだけ鉄壁の要塞みたいなお母さんが、まさか、ビンタの一言にあんなに反応するなんて、今でも信じられないですよ。まるで、お月様が太陽を追い越しちゃった!くらいに驚いたんですよ!」
「ふふっ、きっと、雪子も、普通の人間だったって事よ」
「でも、どうして、ビンタが、お母さんのツボなんでしょう?」
「さあ。ツボは、人、それぞれだから」
「もしかして、ビンタの他にもツボがあったりして」
「あら、どうして?」
「う~ん、どうしてって訊かれても」
「でも、愛奈ちゃん?そんな雪子を見て、急に、雪子が身近に感じちゃったんじゃない?」
「分かります?」
「何となく、分かるわ」
「でも、お母さんって、私が何を言っても、全然、怒らないんですよ」
「愛奈ちゃん、何か言ったの?」
「ええ。お母さん、お父さんと離婚するつもりなんでしょ?って」
「あら、まあ。ずいぶんと過激な、それで、雪子はなんて?」
「そんな事はないわよって・・・。でもね」
「でも・・・?」
「その後に、私が、やっぱり、そうなんだって言ったの。何となく分かったけどって・・・」
「あら・・・。」
「私は何となく分かってたのよって言ったのに、軽くかわしちゃうし」
「雪子らしいわね。でも、愛奈ちゃん、変な事を言うのね?それじゃ、まるで、夫婦関係が上手くいってないみたいじゃない?」
「そんな感じではないんですけど・・・」
「ないんですけど・・・な~に?まだ、続きがあるみたいね?」
「はい。実は、前から気になってる事があるんです」
「気になってる事って、雪子の事で?」
「はい・・・」
「もしかして、雪子に、誰か、好きな人でもいるんじゃないかって?」
「いるんですか?やっぱり・・・」
「ううん、そうじゃないけど。愛奈ちゃん、前に言ってたじゃない?」
「はい。それもあるんですけど・・・」
「他にも、何か、気になる事があるみたいね?」
「はい。前々から、ちょっと気になってたんですけど。お母さんの物って、家の中にほとんど無いんです」
「ないって・・・洋服とかあるじゃない?それにパソコンも」
「それは、そうなんですけど・・・」
「な~に・・・?愛奈ちゃんらしくないわね?」
「実は・・・家の中に、お母さんがいないんです」
「えっ・・・?いないって、どういう事?」
「あっ、いないって、別に、お母さんが家出をしたとかという事ではなくて」
「あ~ビックリした・・・」
「どうして、裕子さんがビックリするんですか?」
「ふふっ、急に、雪子がいないなんて言われたら、普通はビックリするわよ」
「ホントに?・・・それだけですか?」
「どうして、そう思うの?」
「何となく、裕子さんは、いつか、お母さんが家を出て行くってことを知ってるみたいで」
やっぱり、愛奈ちゃんには、夏樹さんの遺伝子が入ってるんだわ。
思っているみたいで?とか、分かってるみたいですね?とかっていう言葉は使わないで、
あえて「知ってるみたいで?」という言葉で訊いてくるところなんて、夏樹さんそのもの。
もしかして、愛奈ちゃんって、本当は夏樹さんの子供だったりして。
「愛奈ちゃんって、いったい、誰に似たのかしらね」
「えっ・・・?」
あっ・・・まずった。
「でも、私も、時々、そう思う事があるんです。私って、いったい、誰に似たのかなって?」
あ~助かった・・・。ってか、その一言って、もしかして助け舟?・・・まさかね。
いくらなんでも、そこまでは、まだ、成長していない・・・と、思いたい。
「でも、どうして、愛奈ちゃんは、雪子が出て行くんじゃないかって思うの?」
「私の家の中には、お母さんが暮らしていた痕跡がないみたいで・・・」
夏樹さんは別として、やっぱり、愛奈ちゃんは雪子の子供なのね。
雪子?いつまでも、愛奈ちゃんを誤魔化せないかもしれないわよ。
「ねえ、愛奈ちゃん?愛奈ちゃんは、お母さんに、何を望むの?」
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