193 / 386
その手を離さないで
その手を離さないで・・・その13
しおりを挟む
愛奈は、この先の会話をどう繋げていけばいいのか、分からなくなってしまった。
愛奈が生まれてから今日まで、同じ屋根の下で家族として、
そして、親子として一緒に暮らしてきたのだから、
母親である雪子の性格は重々承知してはいたし、
そう簡単にはボロは出さないであろう事は分かってはいたのだが。
かといって、愛奈にとって雪子は話しにくい相手というわけではなく、どちらかといえば、
何を言っても嫌がる事はなく何でも聞いてくれるので、とても話しやすいのである。
なので、学生の頃の愛奈は、よく学校での出来事などを話たりしていた。
ただ、それは会話というよりも、愛奈の話の聞き役という感じである。
それと、今日みたいに改めてみたいな、少し構えた感じの会話も、今日が初めてでもない。
愛奈は小さい頃から「あたしの話をちゃんと聞きなさい」みたいなところがあって、
何か大切な事を話したい時は、今のように一対一での会話をする事が、
年に何度かの割合であったので、今日のような会話が別に珍しいというわけでもないのである。
ただ、今までは自分の出来事や考え方、それと思った事柄などを話して聞かせるという感じで、
今みたいに、母親である雪子側の会話をするのは、今日が初めてである。
とはいえ、今まで、一度も、そういった話をしなかったかといえば、そうではないのだが、
今までは、ちょっと訊いてみたみたいな感じで、今日のように会話の中心にという感じではなかった。
愛奈としては、それなりに、言い逃れが出来ない材料を手に入れて望んだ親子会談である。
今までのように、何となくはぐらかされたみたいな感じにはならないはず・・・
そう思って挑んだ巨頭会談だったはずなのだが・・・。
ところが、ふたを開けてみれば、今までと同じである。
愛奈が何を言っても動じる事もなく、いつものようの優しい笑みを浮かべながら聞いている。
愛奈としては、ある程度は予測はしていたので、愛奈が何を訊いても、
雪子が、あからさまな動揺を見せるかも?というような期待は、初めからしてはいなかった。
ただ、もしかしたら、愛奈の言葉に、ほんの少しでも動揺するかもしれない。
そう思って、雪子のちょっとした仕草の変化も見逃さないつもりで、
注意深く観察していた愛奈なのだが、そんな愛奈の微かな願いもむなしく、
いつもと同じように、ただ時間だけが過ぎていくのである。
そこで、愛奈は、違う角度から切り込んでみようを思った。
愛奈としては、母親の昔の恋人や恋愛を聞きたいのは確かなのだが、
それと同時に、自分の知らない、若い頃の母親の事も知りたいのである。
特に、あの病院での出来事を見てしまった愛奈にとっては、尚更なのかもしれない。
「ねえ~、お母さん?」
「な~に・・・?」
むふふ・・・。そんな悠長なお母さんでいられるのも、これが最後だじょ!
私のとっておきの秘奥義で、間違いなく、お母さんに引導を渡すんだから!
「この間、お母さんと一緒に病院に来た人は誰なの?」
「この間・・・?」
「そう、この間、おじいちゃんが入院している病院にお見舞いに行った時」
どうだ!これで、もう!言い逃れは出来ないじょ!
「あら、そんな事があったかしら?」
おおお===い!少しは動じなさいってば!もう!
「ほら、病院の駐車場で・・・」
「駐車場・・・?」
「うん。私が病院の玄関にいた時に、ちょうど、お母さんを乗せた車が入ってきたのよ」
「あら、そうだったの?」
「うん。それで、お母さんが車から降りてきて・・・」
「もしかして、愛奈さんって・・・」
「そう。あの時の、一部始終を見てしまったの」
「ううん、そっちの事じゃなくて」
「はい・・・?」
そっちの事じゃなくて・・・って・・・どっちの事?
「別に、いいのよ。誰を好きになっても、お母さんは愛奈さんの見方だから・・・ね!」
ね!・・・って・・・。あの・・・お母さん?何を、言ってるの?
「お母さんね、ちょっと不思議だったの」
「不思議って・・・何が?」
「愛奈さんは、とっても可愛い女の子なのに、どうして、彼氏を作ろうとしないのかなって?」
えっ?いや・・・あの・・・え===っ?・・・どぼちてそうなるの?
愛奈が生まれてから今日まで、同じ屋根の下で家族として、
そして、親子として一緒に暮らしてきたのだから、
母親である雪子の性格は重々承知してはいたし、
そう簡単にはボロは出さないであろう事は分かってはいたのだが。
かといって、愛奈にとって雪子は話しにくい相手というわけではなく、どちらかといえば、
何を言っても嫌がる事はなく何でも聞いてくれるので、とても話しやすいのである。
なので、学生の頃の愛奈は、よく学校での出来事などを話たりしていた。
ただ、それは会話というよりも、愛奈の話の聞き役という感じである。
それと、今日みたいに改めてみたいな、少し構えた感じの会話も、今日が初めてでもない。
愛奈は小さい頃から「あたしの話をちゃんと聞きなさい」みたいなところがあって、
何か大切な事を話したい時は、今のように一対一での会話をする事が、
年に何度かの割合であったので、今日のような会話が別に珍しいというわけでもないのである。
ただ、今までは自分の出来事や考え方、それと思った事柄などを話して聞かせるという感じで、
今みたいに、母親である雪子側の会話をするのは、今日が初めてである。
とはいえ、今まで、一度も、そういった話をしなかったかといえば、そうではないのだが、
今までは、ちょっと訊いてみたみたいな感じで、今日のように会話の中心にという感じではなかった。
愛奈としては、それなりに、言い逃れが出来ない材料を手に入れて望んだ親子会談である。
今までのように、何となくはぐらかされたみたいな感じにはならないはず・・・
そう思って挑んだ巨頭会談だったはずなのだが・・・。
ところが、ふたを開けてみれば、今までと同じである。
愛奈が何を言っても動じる事もなく、いつものようの優しい笑みを浮かべながら聞いている。
愛奈としては、ある程度は予測はしていたので、愛奈が何を訊いても、
雪子が、あからさまな動揺を見せるかも?というような期待は、初めからしてはいなかった。
ただ、もしかしたら、愛奈の言葉に、ほんの少しでも動揺するかもしれない。
そう思って、雪子のちょっとした仕草の変化も見逃さないつもりで、
注意深く観察していた愛奈なのだが、そんな愛奈の微かな願いもむなしく、
いつもと同じように、ただ時間だけが過ぎていくのである。
そこで、愛奈は、違う角度から切り込んでみようを思った。
愛奈としては、母親の昔の恋人や恋愛を聞きたいのは確かなのだが、
それと同時に、自分の知らない、若い頃の母親の事も知りたいのである。
特に、あの病院での出来事を見てしまった愛奈にとっては、尚更なのかもしれない。
「ねえ~、お母さん?」
「な~に・・・?」
むふふ・・・。そんな悠長なお母さんでいられるのも、これが最後だじょ!
私のとっておきの秘奥義で、間違いなく、お母さんに引導を渡すんだから!
「この間、お母さんと一緒に病院に来た人は誰なの?」
「この間・・・?」
「そう、この間、おじいちゃんが入院している病院にお見舞いに行った時」
どうだ!これで、もう!言い逃れは出来ないじょ!
「あら、そんな事があったかしら?」
おおお===い!少しは動じなさいってば!もう!
「ほら、病院の駐車場で・・・」
「駐車場・・・?」
「うん。私が病院の玄関にいた時に、ちょうど、お母さんを乗せた車が入ってきたのよ」
「あら、そうだったの?」
「うん。それで、お母さんが車から降りてきて・・・」
「もしかして、愛奈さんって・・・」
「そう。あの時の、一部始終を見てしまったの」
「ううん、そっちの事じゃなくて」
「はい・・・?」
そっちの事じゃなくて・・・って・・・どっちの事?
「別に、いいのよ。誰を好きになっても、お母さんは愛奈さんの見方だから・・・ね!」
ね!・・・って・・・。あの・・・お母さん?何を、言ってるの?
「お母さんね、ちょっと不思議だったの」
「不思議って・・・何が?」
「愛奈さんは、とっても可愛い女の子なのに、どうして、彼氏を作ろうとしないのかなって?」
えっ?いや・・・あの・・・え===っ?・・・どぼちてそうなるの?
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる