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その手を離さないで
その手を離さないで・・・その6
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雪子さんに続いて、今度は、裕子さんの名前まで出て来ちゃった。
しかも、裕子さんは、雪子さんの親友だというし。
しかも、しかもで、夏樹さんが、その雪子さんと親友である裕子さんと付き合っていたとも。
「あの子は、あたしにふられたんで、ヤケを起こしちゃったみたいでね!」
「うそ・・・?」
「本当よ!それで、あの子の友達の、これまた筋金入りの不良の子だったけどね。その子に頼まれた事があったのよ。あの子、ああ、あの子って裕子の事だけど。その荒れちゃった裕子を何とかして欲しいって」
「夏樹さんがですか・・・?」
「そうよ。何でも、その当時の裕子は、誰の忠告も聞かなくなっていたらしくてね」
「それ、何となく、分かるような気がします」
「んで、きっと、あたしの言う事なら聞くはずだからって!」
「それで、夏樹さんは会ったんですか?」
「だいぶ過ぎてからね。あたしって、その頃はノリノリだったから。いちいちさ、んなもんになんか、かまってられないわよ」
「んなもんって・・・?裕子さんが・・・ですか?」
「裕子ってね、面白いのよ」
面白いって・・・。あの頃の、裕子さんを知っている私としては・・・。
裕子さんの事をそんな風に言えるのは、この世で唯一人、夏樹さんだけのような気がするけど。
「裕子ってね、昔から、あたしの前では、まるで、借りてきた猫みたいになっちゃうのよ」
「昔から・・・って、言うのは?」
「今でも、変わってなかったみたい。裕子って、面白いでしょ?」
「あの、それって、っていうか、今でもって・・・あの?」
「もう、去年になるわね。去年の夏頃にね、偶然、メル友で知り合ったのよ」
「メル友って、あの・・・裕子さんとですか?」
「そうよ。んでも、お互いがお互いを知ったのは、確か、去年の秋頃だったかしら?」
「うそ?そんな偶然ってあるんですか?」
「あんたに嘘を言ってどうすんのよ。まあ、確かに、あたしも驚いたけど、裕子の方はもっと驚いたみたいよ。なにせ、何回もメールが止まったくらいだからね」
「それじゃ、本当にメル友で、偶然に?だったわけですか?」
「驚いたでしょ?」
「ええ・・・。でも、それじゃ、雪子さんとは、いつ頃から、また、会うようになったんですか?」
「雪子と最初に再会したのは、去年の最後の日よ」
「去年の最後の日って、12月31日って事ですか?」
「ええ、そうよ。雪子の方から、あたしに会いに来たの!」
「あの雪子さんが・・・ですか?」
「信じられないでしょ?」
「ええ・・・。裕子さんなら、何となく分かるような気がしますけど」
「どっちかっていうと、裕子の方が、積極的なタイプに見えるのもね」
「ええ・・・。それとは対照的に、雪子さんの方は受け身っていうか、そんな感じだと思ってました」
「ところが、実際は、その逆なのよ」
「う~ん・・・俄かには、信じられないような」
「あはは・・・そう思うあんたの気持ち分かるわ」
「でも、それじゃ、雪子さんとは、どうやって再会したんですか?」
「あんたは、どう思う?」
「どうって?まさか、雪子さんともメル友でって言うのは、ちょっと有り得ないような」
「裕子がね、雪子に教えたの」
「裕子さんが・・・」
「裕子って、優しい子でしょ?雪子に黙っていれば、自分だけがあたしと再会出来たっていうのにね」
「う~ん・・・」
「あんたが信じられないもの無理ないわね。でもね、裕子って、そういう子なの。自分の幸せよりも、自分が好きな人の幸せを一番に考えちゃうような、困った優しい子なのよ」
気がつくと、直美は、京子と裕子を比べてしまっていた。
不良とは無縁だった裕子さんを、あそこまで手が付けられない程に荒れさせた夏樹さんなのに、
裕子さんは、その夏樹さんの幸せを一番に考えるのだという。
それに引き換え、京子は、どうだろう?
夏樹さんの幸せを一番に考えるのではなく、
まるで、夏樹さんの不幸を一番に考えているようにさえ思えてしまう。
夏樹さんにふられてあんなにも荒れてた頃も・・・
そして、30年以上も経って、また、夏樹さんと再会した、今も・・・。
裕子さんは、夏樹さんの幸せだけを一番に考えているのだという・・・なのに。
それなのに京子ったら、あんたは、いったい、何がしたいっていうの?
しかも、裕子さんは、雪子さんの親友だというし。
しかも、しかもで、夏樹さんが、その雪子さんと親友である裕子さんと付き合っていたとも。
「あの子は、あたしにふられたんで、ヤケを起こしちゃったみたいでね!」
「うそ・・・?」
「本当よ!それで、あの子の友達の、これまた筋金入りの不良の子だったけどね。その子に頼まれた事があったのよ。あの子、ああ、あの子って裕子の事だけど。その荒れちゃった裕子を何とかして欲しいって」
「夏樹さんがですか・・・?」
「そうよ。何でも、その当時の裕子は、誰の忠告も聞かなくなっていたらしくてね」
「それ、何となく、分かるような気がします」
「んで、きっと、あたしの言う事なら聞くはずだからって!」
「それで、夏樹さんは会ったんですか?」
「だいぶ過ぎてからね。あたしって、その頃はノリノリだったから。いちいちさ、んなもんになんか、かまってられないわよ」
「んなもんって・・・?裕子さんが・・・ですか?」
「裕子ってね、面白いのよ」
面白いって・・・。あの頃の、裕子さんを知っている私としては・・・。
裕子さんの事をそんな風に言えるのは、この世で唯一人、夏樹さんだけのような気がするけど。
「裕子ってね、昔から、あたしの前では、まるで、借りてきた猫みたいになっちゃうのよ」
「昔から・・・って、言うのは?」
「今でも、変わってなかったみたい。裕子って、面白いでしょ?」
「あの、それって、っていうか、今でもって・・・あの?」
「もう、去年になるわね。去年の夏頃にね、偶然、メル友で知り合ったのよ」
「メル友って、あの・・・裕子さんとですか?」
「そうよ。んでも、お互いがお互いを知ったのは、確か、去年の秋頃だったかしら?」
「うそ?そんな偶然ってあるんですか?」
「あんたに嘘を言ってどうすんのよ。まあ、確かに、あたしも驚いたけど、裕子の方はもっと驚いたみたいよ。なにせ、何回もメールが止まったくらいだからね」
「それじゃ、本当にメル友で、偶然に?だったわけですか?」
「驚いたでしょ?」
「ええ・・・。でも、それじゃ、雪子さんとは、いつ頃から、また、会うようになったんですか?」
「雪子と最初に再会したのは、去年の最後の日よ」
「去年の最後の日って、12月31日って事ですか?」
「ええ、そうよ。雪子の方から、あたしに会いに来たの!」
「あの雪子さんが・・・ですか?」
「信じられないでしょ?」
「ええ・・・。裕子さんなら、何となく分かるような気がしますけど」
「どっちかっていうと、裕子の方が、積極的なタイプに見えるのもね」
「ええ・・・。それとは対照的に、雪子さんの方は受け身っていうか、そんな感じだと思ってました」
「ところが、実際は、その逆なのよ」
「う~ん・・・俄かには、信じられないような」
「あはは・・・そう思うあんたの気持ち分かるわ」
「でも、それじゃ、雪子さんとは、どうやって再会したんですか?」
「あんたは、どう思う?」
「どうって?まさか、雪子さんともメル友でって言うのは、ちょっと有り得ないような」
「裕子がね、雪子に教えたの」
「裕子さんが・・・」
「裕子って、優しい子でしょ?雪子に黙っていれば、自分だけがあたしと再会出来たっていうのにね」
「う~ん・・・」
「あんたが信じられないもの無理ないわね。でもね、裕子って、そういう子なの。自分の幸せよりも、自分が好きな人の幸せを一番に考えちゃうような、困った優しい子なのよ」
気がつくと、直美は、京子と裕子を比べてしまっていた。
不良とは無縁だった裕子さんを、あそこまで手が付けられない程に荒れさせた夏樹さんなのに、
裕子さんは、その夏樹さんの幸せを一番に考えるのだという。
それに引き換え、京子は、どうだろう?
夏樹さんの幸せを一番に考えるのではなく、
まるで、夏樹さんの不幸を一番に考えているようにさえ思えてしまう。
夏樹さんにふられてあんなにも荒れてた頃も・・・
そして、30年以上も経って、また、夏樹さんと再会した、今も・・・。
裕子さんは、夏樹さんの幸せだけを一番に考えているのだという・・・なのに。
それなのに京子ったら、あんたは、いったい、何がしたいっていうの?
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