愛して欲しいと言えたなら

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声が聞こえない

声が聞こえない・・・その19

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夏樹の車は、直美を連れて、街の少し外れにある古風なレストランに向かっていた。

「どう?あたしと、こうやって、二人でドライブするのって?」

「どうって、訊かれても・・・」

「すれ違う車から見たら、あたしたちって、恋人同士に見えるんじゃないかしら?」

「えっ・・・?」

夏樹の言葉に、少なからずドキッとしてしまう直美である。
いや、少なからずではなく、相当だったかもしれない。
なにせ、夏樹が女装しているのをすっかり忘れてしまっていたくらいなのだから。

「あはは、んなわけないでしょ?あたしのこの恰好じゃ、いいとこ女友達ってとこかしらね!」

「あっ・・・そうでした!」

「あら?、なんか、まんざらでもなかったみたいね?」

「いえ・・・そういうわけでは」

「あんた、どことなく、裕子に似てるわね」

「えっ・・・?」

「京子も、あんたみたいな女性だったら、離婚になんてならなかったかもしれないわね!」

「えっ、そんな事は・・・はい?」

「あはは!あんたって、ホント!面白いわね!」

「んもう~・・・」

「でも、好きよ、あんたみたいな子」

好きよって・・・あの・・・じゃなくて。
あんたみたいな子って・・・あの、子っていうのは・・・。
これでも一応、50過ぎのおばさんなんですけど。
などと、たわいのない会話の中、車はレストランの駐車場へと入っていく。

店内は平日という事もあって、この時間帯だと、それほど混んでいないらしく、
何組かのお客が、まばらに見れる感じである。
夏樹は、国道が見える窓際の席に座ると、直美も後を追うように窓際の席に座った。

「やっぱり、違うのよね」

「違うって、何がですか?」

「雪子よ。あの子ってさ、滅多に、あたしの後ろを歩かないのよ」

「そうなんですか?」

「そうなの、後ろでもなく前でもなく、いつも、あたしの隣なの」

「はあ・・・」

「な~に?雪子の事を訊きたいんじゃなかったの?それとも、もしかして焼きもち?」

「いえ、焼きもちだなんて・・・。でも、夏樹さんは隠さないんですね」

「な~に?雪子?」

「ええ・・・」

「そうね。普通なら、あんたに遠慮して話さないようにするんだろうけど、あたしは隠したくないの」

「隠したくない・・・ですか?」

「そうよ、隠したくないのよ」

隠したくないと言う夏樹、隠そうが、隠すまいが、わざわざ、それを言葉にするだろうか?
別に話さなければ、それはそれで何の問題もないような気がするんだけど。

「違うのよ、そうじゃないの」

「はい・・・?」

「隠しちゃいけないのよ・・・。もう二度と隠しちゃいけないの!」

いえ・・・あの・・・その前にですね?
どうして私が思った事が分かってしまうんですか・・・と、言いたい私は正しいと思う。
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