愛して欲しいと言えたなら

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声が聞こえない

声が聞こえない・・・その18

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変な勘繰り・・・か。
確かに、夏樹さんの言う通りかもしれない。
そうよね、私ったら、すぐに男と女。そんな風に考えてしまっていたみたい。

「ほら、あんたの車を、あたしの家の広場に止めて来なさいな」

「えっ・・・?」

「な~に?あんた、わざわざ2台でお出かけするつもりなの?」

「いえ・・・あの・・・」

「それとも、もう、京子の話はいいわけ?」

「いえ・・・あの・・・」

「あんた、ホントは、いえ、あの、星人だったの?」

「いえ・・・あの・・・あっ、ふふっ」

「ほら、早くしなさいな!」

「あっ、はい。それじゃ、車を止めて来ますね」

直美は、そう言って、乗ってきた車を夏樹の家の前の広場へと走らせていく。
少しして、夏樹のいる所まで戻ってきた直美を乗せて街へと車を走らせる。

「こんなところを京子に見られたら、あんた、目も当てられないかもね?」

確かに・・・成り行きとはいえ、私って、今、夏樹さんの車に乗っているのよね。
しかも、夏樹さんと二人っきりで・・・。
辺りが、もう暗くなっているからいいようなもんで。
もしも、これが昼間だったらと思うと、背筋が凍りついてしまうかも。

「京子にも、困ったものね」

「えっ、どうしてですか?」

「だって、今、あんた、もし、今が昼間だったらって思ったでしょ?」

「なんで分かるんですか?」

「んなことよりさ。京子って、自分が信じたいと思う人に、余計な気を使わせてしまうのよね」

「余計な気を・・・ですか?」

「今のあんたがそうでしょ?別に、あたしとこうしていたって、何もやましい事なんてないのにさ」

「ええ、まあ。それはそうですけど。でも、こんなところを見たら、やっぱり」

「やっぱり、な~に?京子が、傷つくかもって?」

「だって、そう思いません?」

「あら?あんた、ずいぶんと生意気な口をきくようになったわね」

「えっ・・・あっ、すみません」

「あはは、冗談よ!冗談。でもさ、あんたさ、今、どんな気持ちであたしに言葉を返したの?」

「どうって・・・別に、何も考えてなかったと思うような・・・」

「でしょ?じゃあさ、京子だったら、どう?あんたは無意識に言葉を選ぶんじゃないの?」

「あっ・・・言われてみれば・・・」

「こうして、あたしの車に乗っただけで、京子の視線を気にする始末・・・でしょ?」

「ええ・・・まあ・・・」

「そんなんじゃ、京子の周りにいる人たちは、たまったもんじゃないわよね?」

「ええ・・・言われてみれば・・・」

「そうやって息苦しくなっていくのを、何回も、何回も、味わってたら、人はどうなると思う?」

「どうなるって・・・あっ・・・」

「分かったでしょ?京子に気を使うんじゃなくて、知らず知らずのうちに隠し事するようになっていくんじゃないかしら?」

「ええ・・・」

「そして、京子が、それを問い詰めようとしても、決して、京子の機嫌を損ねるような言葉は言わない」

「それじゃ、京子の子供たちも?」

「京子は、どうして?どうして?と、自分は悪くないのに、どうして?と・・・」

「ええ・・・夏樹さんの言う通りです」

「そうして、自分ばっかりが、どうして、こんな目に合わなければいけないの?・・・違う?」

馬鹿よ!京子は・・・。
こんなにも、京子の心を分かってくれている人が、こんなにも近くにいるのに。
どうして、夏樹さんの想いを分かろうとしないのか?私には、理解出来ないわ!
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